夕ご飯を食べ終え、それぞれ早めのシャワーを浴びることになった。
「美月、先にシャワー良いよ?」
そう声をかけられたため、彼の言葉に甘える。
えっと……。
やっぱりこの|あと《夜》って、迅くんと《《あんなこと》》をする雰囲気になるのかな。
そんなことを考えながらのシャワーだから、時間がかかってしまった。
「ごめん。遅くなって」
パソコンを開いていた彼に声をかける。
「いや。大丈夫。じゃあ、シャワー浴びてくる。その後、美月と《《したい》》ことがあるから」
したいこと?
やっぱり……。
でもそんなこと事前に言う?
「わかった」
私が返事をすると彼は珍しくニコッと笑い、浴室へと向かった。
私、もう離婚したんだから、迅くんと……。
シテも良いんだよね?
自分自身に問いかけながら、彼が出てくるのを待った。
しばらくして――。
「ごめん!美月、バスタオル忘れた。持って来て」
そんな彼の言葉が聞こえ、バスタオルを持って浴室へ向かう。
あまり正面を見ないようにしていたが
「ありがとう」
浴室から出ようとして髪の毛をかきあげる彼の姿が綺麗すぎて、思わず見惚れてしまった。
一人ちょこんとベッドの上に座り、迅くんを待っていた。
すると
「これから美月としたいことがある」
彼がそう言ってベッドサイドへ座った。
「うん」
ドキドキするけど、罪悪感を抱かなくていいんだ。
「好きな人と一緒に映画を見るって、恥ずかしいけど、なんか憧れでさ」
「うん。映画ね……。映画……!?」
卑猥なことしか考えていなかった。
何、勘違いしているんだろう、私。
「美月は映画嫌いだった?」
「ううん!そんなことないよっ!」
あたふたと答えてしまったけど、迅くんにバレなかったかな。
「実は見たかったホラー系のがあって……」
「えっ?ホラーなの?」
唯一、苦手なジャンルだ。
幽霊とかゾンビがいきなり出てくるのとか、あまり好きではない。
「ダメ?」
迅くんがせっかく見たい映画なんだもんね。
「大丈夫だと思うけど、大きな声出しちゃうかも」
「わかった。ま、このパソコン画面小さいし、そんな迫力ないから大丈夫だと思うけど」
彼が映画を見る準備をしてくれ、音が流れ始めた。
迅くんが見たかった映画は、洋画だった。
画面を見ていると――。
「ちょっと!迅くん?」
いつの間にか、彼は私を後ろから抱きしめるような形で座っていた。
「こうやって見てれば、美月も怖くないだろ?」
そうだけど、違う意味でドキドキするよ。
シャンプーの良い匂いがするし。
でも幸せだ。
顔の表情が緩み、口角が上がる。
迅くんをチラッと見る。
彼も会社にいる時とは違い、別人のような優しい顔をしている。
気分転換になっていればいいな。
…・――――…・―――
「いやいやいや!!もう終わった!?」
私はいつ出てくるかわからない幽霊に怯え、迅くんにしがみついたままだった。
「まだ終わってないけど。美月、ほとんど映画見てないじゃん」
私の様子にアハハっと笑っている。
「見てないんじゃなくて、見れないの」
こんなの一人で見てたら、思い出して一人で眠れなさそう。
「ていうか、そんなにくっつかれるとそろそろ俺も映画どころじゃなくなるから」
それって……。
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