3月31日 7:23 am
目が覚めるといつもより呼吸が楽で、リモコンを手に取るのがスムーズだった。今まで泥沼の中で暮らしてたのが、久々に酸素21%窒素78%二酸化炭素0.04%の大気中に放り出された気分だ。
一体、どうしたのだろう。とりあえず邪魔な呼吸器を外し、自力で起き上がる。体が軽い。意識がはっきりしている。立ち上がり歩いてみると、戦前のようにスムーズに進むことが出来た。
もしかして__
「ぺいんとさぁ〜ん…?」
申し訳なさそうな音をたてながらドアが開く。振り向くと、大きく目を見開いた3人と目が合った。驚くのも無理はない。なにせ、昨日まで衰弱しきっていた友人が、今誰の手助けもなく立っているのだから。
「えっ?!嘘…!」
「元気に…なったんですか…?」
返事として3人に微笑みかけると、しにがみくんの目から涙が溢れた。
俺は慌てて駆け寄った。泣かすつもりはなかったんだけどなぁ…
「__で、一体どうしちゃったんですか?」
しにがみくんが泣き止む前に看護師さんが来たため、4人でゆっくり話ができるようになるまで時間がかかった。
看護師さんは俺を見るなり、幽霊を見たような顔をしていたが、すぐに健康チェックを済ませすぐに担当医師を呼んだ。本当に事務的な人だ。そして、現在進行形で担当医師と何かを話し込んでいる。看護師さん、少し悲しそうだったような気がしたけど、気のせいかな…?
「よくわかんないんだけどさ」
「起きたら、めっちゃ元気だったんだよね!」
「…よくわかんないけどよかった!」
「ぺいんとさん、このまま死んじゃうのかと思いましたよ!」
しにがみくんは、俺の手を強く握って喋り続けている。対して、クロノアさんは静かだ。たまに相づちをうつ。そして、ずっと笑顔。それだけだ。
トラゾーは、険しい顔で医師と何かを話している。
「…トラゾー、何かあったのかな」
「さぁ?」
「…ぺいんと」
クロノアさんが、初めて口を開いた。
「今日は、ぺいんとのしたいことをしよう」
「せっかく動けるようになったんだし」
「ね?トラゾー」
「おう。医者に許可をもらったから、近場なら外出できるぞ」
「まじですか!?やったー!!」
手際の良さにびっくりしたが、久々の外出にわくわくしていた。(しにがみが1番喜んでいる)
「遠出は出来ないから、近くの喫茶店にでもお茶しに行こうか」
「ぺいんと以外でジャン負け奢りね」
「受けて立つ!」
これから、4人でたくさん思い出を作りたい。
遊園地へ行ったり、京都らへんに旅行行ったり、俺の実家にも招待したい。
体調という足枷がなくなった今、数年ぶりに、未来への期待に胸をふくらませていた。
__そんな願いは、無慈悲に散ってゆくとも知らずに
コメント
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なんか意味深だな終わり方