病院から徒歩3分、昔からある雰囲気のいい喫茶店にやってきた。しにがみくんたちは常連らしく、店に入るなり店主さんと話し込んでしまった。
俺と話しているときよりも声のトーンが高い気がする。リラックスしている気がする。当たり前だが、俺よりもかなり付き合いが長いのだろう。もし俺が居なくなっても、大丈夫そうだ。
俺は案内された席に座って、メニュー表を眺めていた。レトロな料理やドリンクが並んでいる。今まであまり食べていなかったので、しっかりとしたご飯を食べるのは良くないだろう。可愛いメロンソーダでも頼もうか。
でも、このエビフライランチもいいなぁ…
「ここ、青いメロンソーダで有名なんですよ! 」
いつの間にか隣にしにがみが座っていた。正面にはクロノアさん、その横にトラゾー。
「ちょっと高めだけど、装飾が凝っていて映えるよね」
「そんなぺいんとに、青いメロンソーダを奢っちゃいまーす」
トラゾーが財布を取り出し、そう言った。申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、お言葉に甘えることにした。
それにしても、青かぁ…
「なつかしいな…」
「?何がです?」
「あ、ごめんごめん、こっちの話」
「えー!?気になります!」
3人の視線が俺を捉えて離さなかったので、目の前に置かれたメロンソーダを眺めながら、思い出話をした。
青い彼のこと
親友だったこと
いつでもいっしょだったこと
彼の好きな食べ物のこと
頼りにならないこと
笑顔が眩しいこと
兵役のこと
戦争のこと
助けられたこと
助けられなかったこと
話終わるころには、時計の短針がひとまわりしていて、空っぽのグラスが4つ並んだ。しにがみの瞳からは、涙が溢れだしていた。
「俺も戦争に参加してたけど」
「後援として動いてたから、そんな危険ではなかったんだよな」
「クロノアさんは海外出身でしたよね?」
「うん、だから、戦争とは無縁なんだ」
「しにがみは兵役とか、そんな年齢じゃなかったから…」
「__ズビッ」
「ラジオで…いつも聞いてました」
「戦争の状況」
「まさか、そんなことが… 」
「あんまりです!こんなの…」
「彼は…俺を1人にしないって言ってくれた」
「だから__」
あれ?
なんだか…眠…い…?
「だから…俺は…今日…まで…待ち続け…た」
「ぺいんとさん…?」
「大丈夫?」
…そっか
限界が、来ちゃったんだね。
「いつか…彼が…お見舞いに来てくれる」
「そう、思って…た…」
「でも…」
「彼は、いつも心の中に」
「い…た…」
そう言い残し、ぺいんとさんは倒れた。
本当に焦った、すぐに救急車をよんだ。
お会計はトラゾーさんに任せて、僕とクロノアさんはぺいんとさんと一緒に病院へ戻った。
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ピギャ↑