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「お大事にして下さい…」
帽子を目深に被った男が1人病院から出て来る
辺りを見まわし、周りにバレたく無いのか
人目を気にしながら車に乗り込み、発進させる…
ハンドルを握った男の手が微かに震え、何かショックな事でもあった様子が見てとれた
「はぁ…」
1人、ため息を吐いたその男は…そのまま病院を後にした
「脳に腫瘍があるらしい…」
恋人である渡辺に【大事な話がある】と呼び出された目黒は、開口一番そう聞かされた
「えっ…?腫瘍って…少し眩暈がするからって、今日は病院行ったんだよね?」
いきなりの事で寝耳に水な状態で、眉間に皺を寄せ問いかける
「眩暈は、この病気の前兆…。腫瘍が脳みそを圧迫し始めると起こるらしい…」
真剣に説明する渡辺に、真面目に話を聞こうと向き合った
「で、その腫瘍は手術で取れるんだよね?」
大切な恋人には、早く元気になってもらいたい
「それが、無理みたいで…」
「えっ…無理?」
「人間が生きていく上で大事な神経なんかが多く通っている場所で…手術で取り出そうとすると、他の場所を傷つけて酷い後遺症が出るからって止められた…」
どうして良いか分からないと言う様に、顔を覆って下を向く…
目黒は慌てて寄り添い、ソッとその肩を抱いた
「それで?その腫瘍は、これからどうなるの?」
本人にとっては辛い事だが、今分かる事は聞いておきたい
「今の所、進行は遅いから眩暈だけで済んでるけど…。これから腫瘍が大きくなっていくに連れて、記憶力や判断力に支障が出て来るって今日言われた…」
「記憶力と判断力…」
「薬も効かないって言われたし…。後は進行しない様に、ただ祈るしか無いって…」
「そんな…」
「俺、どうなっちゃうんだろう?」
自分が自分でなくなっていく様な気がして、不安で押し潰されそうになって来る
「大丈夫、俺がずっと一緒に居るから…。もう一度、他の病院でも見てもらおう」
目黒の提案に、唇を噛んで頷く渡辺
「ほら、そんな顔しないで…」
覗き込んで微笑むと、少しだけ笑って返してくれた
その後、2人はいくつかの病院を回るが結果は同じ
後は、運を天に任せるしか手立てが無くなり…
目黒は渡辺と少しでも一緒に居られる様に…同棲を申し込んだ