テラーノベル
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カイに、メッセージを送ろうとしていたヒロが、
「『助けて、カイ。シュウに捕まっちゃった!』とか、どうかな?」
と、シュウの顔を窺った。
「いいぜ…『助けに来て』とか入れて、もっと煽ってやれよ…」
面白そうにも頷いて、ヒロがメッセージを打ち込むと、折り返しの返信が即座にあったようだった。
「『すぐに行くから、場所を教えて』だってさ。……あいつ、僕たちには連絡先も教えないのに、あんたにはずいぶんとなついてるんだね?」
ヒロが私の方を横目にチラリと流し見る。
「場所教えて、『早く、来て』とでも、言ってやれ」
シュウがニヤニヤと笑いながら言い、ヒロとジンもニヤつきながら、メッセージを送り返すのを見て、どうかカイが来なければいいと願いつつ、彼の来る方向を探して、辺りに視線を走らせた。
潰れた倉庫らしい廃屋の中は、だだ広っくて、隙間から吹き込んでくる風に、爪先からじわじわと冷気が這い上がってくるようだった。
「……あんたさ、カイとどこまでヤったんだよ?」
シュウのくだらない問いかけを無視していると、
「答えろよ…おい!」
ナイフの先端が、鼻先ギリギリにまで近づけられた。
「……そんなこと、あなたに言う必要なんて、ないから……」
込み上げる嫌悪感に、低く声を絞り出す。
「ふん…そうかよ。どうせ手練手管とかで、あのキリトを手なづけたんだろ…?」
そう口にして、相変わらずニヤついた笑いを貼り付けるシュウには、もう何も話したいとも思わなかった……。
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