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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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リージョンシーカー、ニーニル支部。ミューゼとパフィが普段働いている組織である。

仕事の内容はリージョンをまたいでのトラブル解決、組織に必要な物資の調達、そして本命であるリージョンの調査。

ハウドラント出身の創始者がファナリアに組織を構えたのには理由がある。1つは魔法という応用の利きやすい能力。もう1つは確立した権力の存在。

組織を作るにはリーダーというものが必要となるが、ハウドラントではその考えが薄かった。そこで王家という考えが存在するファナリアのエインデルブルグに目を付けたのだ。

数百年経った今も、創始者の子孫が王族と手を取り合い、各リージョンをバランスを保ちながら交流を行っている。


「よく占領とか統治とかしようとしなかったですね? 権力者なら土地を欲しがりそうなものだけど」

「別の国ですら手に入れれば人が増え、管理が困難になります。それなのに他リージョンにまで手を伸ばして、権力という考え自体が無い人々を管理なんて、どうあがいても不可能ですよ」


仕事の報告に戻ってきていたミューゼが、本部からやってきていたピアーニャに捕まり、支部の一室でフェルトーレンの触手を指でツンツンしながら、ロンデルに飲み物を貰っていた。

人々を統治するには権力の他にも、まずは人脈や金銭が必要となる。そしていざという時の実力や対応力を始め、様々な能力がなければ多種多様な人種とは渡り合えない。しかも、世界が違うとなれば、考え方も力の種類も違ってくる。

たった1つのリージョンが他多数のリージョンを統べようとしても、まず最初に人員と意思疎通が困難となるのだ。


「それに、マホウはかなりベンリだが、トクベツにつよいワケじゃないからな」


魔法のリージョン『ファナリア』の人々が持つ魔法の力には、複数の属性が存在し、1人でも様々な力を使う事が出来る。

対して他のリージョン……雲のリージョン『ハウドラント』は雲を操る力、食べ物のリージョン『ラスィーテ』は料理をする力といった、1種類の能力が人々に備わっているだけ。しかし、能力の幅が狭い代わりに、その想像と常識の範疇であればどんな事でも出来てしまう程の強力さが備わっている。

つまり魔法は器用貧乏、単純な力押しならば確実に一点突破で負けてしまうのだ。それを分かっているからこそ、他のリージョンへと侵攻しようとする者はいない…という訳ではないが、歴史上でもかなり少なかった。


「うっ……あたし達ファナリア人が不遇に聞こえる……」

「そーゆーワケではないぞ。どんなチカラもつかいかたしだいってコトだ。わちはとべるが、リョウリしたり、ケガをなおしたりミズをだしたりなんて、できないからな」

「そうですよねー分かってるんだけどねー……」


様々なリージョンが集まるようになったファナリアでは、能力や人種による上下関係をつける事は無い。過去に色々あって、法律でも禁止されていたりする。

今ではその能力に見合った仕事に就いたり、見合わなくても新たな発見があるかもと、試験的に雇用する場合もある。パフィがシーカーになった時も、最初は何が出来るのか分からなかったが、野外で自由に料理が出来る能力のお陰で、今では時々調査に誘われたりもしているのだった。人は食べなければ力が出ないという事である。


「チカラといえば、アリエッタのチカラについてわかったコトはないか?」


続いてアリエッタの話題になった。ミューゼは今日の予定を思い出し、答える。


「ハウドラントから帰ってからは、ずっとあたしとパフィとクリムを描いてますよ。今頃『フラウリージェ』でノエラさんを倒してるんじゃないですかね?」

「たおし……?」


実際は店員全員を倒し、営業を一時停止にまで追い込んでいるが、仕事中のミューゼ達は知らない。


「アリエッタさんは、やはりお三方の事が大好きのようですね。そんなにも絵を描いて……」

「ふふっ、家の中でもトコトコついてくるあの子が可愛くて♡」

「ええい、クネクネするな、きもちわるい」

「しかし服屋を怖がっているのでしょう? 大丈夫なのですか?」


その問いに、数日間着せ替え無しで通って慣れさせた事と、今日の目的を話す。

ピアーニャ達は納得していたが、まさか服の専門家に対して服のデザインの売り込みを考える程とは…と、アリエッタの技術に驚いていた。


「そのエをみてみたかったな」

「じゃあ頻繁に家に来るといいですよ」

「い・や・だ!」


家に行けば、確実にアリエッタに可愛がられてしまう。それは子供扱いされるのを嫌うピアーニャにとっては拷問でしかない。

しかし大人としてアリエッタの事が気になるのもまた事実。それでニーニルにやってきては、ミューゼ達に現状を聞いたり、たまに家を訪問したりしているのである。


「でもごめんなさい……アリエッタの事はいつも日記に書いてますけど、まだ何も分かってなくて……」

「あ、ああ……」


アリエッタを拾ってからの本来の目的は、その出自や能力を調査しながら、普通の子供としての常識や幸せを教える事である。

言葉が分からなくて色々と難航してはいるが、その可愛さのお陰で苦痛とは思っていない。それどころかアリエッタと一緒にいられる時間が多い事を喜んでいたりする。


「まぁ、そこはムリしてチョウサできるコトではないからな。まずはアリエッタがアンシンできるように、ほんもののカゾクになってやれ」

「はい、もちろんです」


そう諭しているが、アリエッタの出自について調べる事がほぼ不可能だという事を、ピアーニャは知っている。


(アイツはメガミらしいからなぁ……リージョンとかカンケイないからなぁ……そんなことほかのヤツらにはいえないし、チョウサのシゴトをとりさげてフシンにおもわれるのはマズイ。ミューゼオラよ、いちぶムダなことさせてスマン……)


アリエッタが女神の娘であることを知っているのは4人だけ。そこにミューゼとパフィは含まれない。

ただでさえ調査と育児を任せているのに、そこに超機密事項まで加えてしまっては、心労をかけてしまう。しかも絶対に漏らさない為には、強制的に王城で暮らしてもらうくらいの処置が必要となるだろうとも考えている。

万が一漏れてしまった場合、何者にも染まっていない純粋な心を教育し、その神の力を悪用しようとする輩が現れる事は、容易に想像出来る。だからこそミューゼ達には話さないのだ。

一方ミューゼ達も、アリエッタが…というより、エルツァーレマイアが女神であるなどとは想像もしていない。ドルネフィラーで散々やらかしてしまった『今は亡きエルさん』が、もしかしたら神かもしれない……なんて、事前情報も無しに想像する事は、まず不可能だろう。


「アリエッタのあのエをかくチカラ。フレアもきにいってるし、しょうらいシゴトにつかえばセイカツにはこまらないかもな」

「今も全然困ってないですけどね……なんか給料良いし」

「イクジのカコクさは、みをもってしったからな……なんならもっとふやすぞ」

「えぇ……」


のんびりアリエッタを愛でるだけで給料アップするという言葉に、ミューゼはむしろ腰が引けていた。

なにしろ元大人のアリエッタは、ワガママをほとんど言わずに傍にいて、呼ばれたら反応し、食器の準備など分かる事があれば進んで手伝っているのである。育児としては手間がほとんどかからない。

アリエッタの子供らしさによる被害をほぼ全て受けているピアーニャからは、そんな気楽な現実は全く見えていないのだった。


「たっだいまー」


のんびりと話し込んでいる部屋に、ネフテリアとオスルェンシスがやってきた。

パフィ達とパーティを楽しんだ後、ピアーニャ達の帰還にあわせてリージョンシーカーに戻ってきたのだ。


「あ、ミューゼさーん! おつかれさまー!」


ミューゼの姿を見るなり、勢いよくダイブした。


「ってぅわぷっ!? テリアさまっ…ちょっと!?」


そのままソファに押し倒し、抱き着いた。


「やっ、待っ、ふくそうちょ…がっ……!」

「もう出て行ったからだいじょーぶ! わたくしね、散々可愛いの見せられて、もう我慢できないの! ここは原因の1人であるミューゼさんと一発──」

「すんなああああ!!」

ゴズッ

「あべしっ」


入ってくるなり暴走するネフテリアに向かって、ピアーニャが『雲塊シルキークレイ』を投げつけた。

一旦沈黙するも、その手はミューゼを離さない。


「え……えぇぇ……」

「なによー。わたくしとミューゼさんの仲を裂こうっての? いくらピアーニャ先生でもそれは横暴過ぎましてよ」


ハウドラントから帰ってからというもの、ちょくちょく遊びに行っては気兼ねなく世間話していた結果、すっかりミューゼの事を気に入っているのだった。

たまにこうして冗談で迫っては、周囲につっこまれて楽しんでいる。


「おまえフレアにたいして、ドウセイアイをヒテイしていただろ? いったいどうしたのだ?」

「ふっ、真実の愛に目覚──」

「却下ああぁぁ!!」


ネフテリアが無駄に格好つけて言い放とうとした浮気者定番のセリフを、ミューゼが全力で遮った。


(よし! キッパリいってやれミューゼオラ!)

「なんですか真実って! あたしにはアリエッタという心に決めた女性が!」

「おまえもかっ!」

「知っているわ。だからミューゼさん。貴女のハーレムにわたくしも加わ──」

「るなああああああ!! オマエらそろそろケッコンしてカゾクふやしてもいいトシだぞ! そこんとこどうするつもりだ!! とくにテリア!」

『愛と勇気と希望があればなんとでも』

「なるかあああああああああああ!!」


この時のピアーニャの絶叫は、離れたホールにまで響いていたという。

しばらくして、オスルェンシスに呼ばれたリリが加わって事態は収束……する事は無く、さらに激化。結局最後にはピアーニャが力ずくで、4人まとめて抑えつけたのだった。


「おまえら、いーかげんにせーよ」

『……はい』

「なんで自分まで……」

からふるシーカーズ

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