「元気だったか? 彩葉の結婚式の写真を持ってきたんだ」
「いつもありがとうございます。さあ、中に入って下さい」
妻の実家。
ずいぶん田舎だが、たまには都会の喧騒から離れ、こんな場所で心を落ち着けるのもいい。
あれからいろいろ考え、優秀で情に厚い弟に社長を譲ろうと思ってる。
私は、少し離れたところからアドバイスできればと。
孫の雪都と一緒にいられる時間もほしい。
「素敵な写真ばかりです。本当に……彩葉、幸せそう」
「ああ。だからな……今度は君が幸せになる番じゃないか? 麗華のことは話した通りだ。君には、あの家に戻ってきてほしい。2人手をたずさえて、残された人生を君と楽しく生きていきたい」
「あなた……」
「ずっと守ってやれなくて悪かった。でも、これからは必ず…君を守る。だから、ゆっくりでいい、数日間の行き来を重ねて……いつかはあの家に戻ってきてくれないか」
「ずいぶんあなたに迷惑をかけたのに、こんな私をそこまで想ってくれて、本当に……私は幸せですね」
「迷惑をかけたのはこっちの方だ。すまなかった」
「いいえ……私が弱かったから。でも、少しずつ、少しずつ、頑張ってみようかしら。私も、あなたと一緒にいたいですから」
私が愛した君の優しい笑顔。
その女性らしい仕草や言葉、いくつになっても変わらない。
「大丈夫。必ず戻れる。陶芸もまた始めないか? たくさんお皿も作って、雪都にプレゼントしたいんだ」
「それはいいですね。あの頃、1枚のお皿に誰かへの思いを込めて焼きましたね。今度は、雪都にプレゼント……私も作ってみたいです」
「2人でいろいろなことに挑戦して、これからはいつだって君と時間を共有したい」
「ありがとうございます。1歩1歩……歩んでみます」
「ああ、ゆっくりでいい。いつまでも待つよ」
私は、この歳になっても、当たり前のように君を愛している。
君と過ごす毎日が、明るい希望で満ち溢れた素晴らしい日々になることを……心から願う。
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