テラーノベル
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信愛は一度息を整え、ゆっくりと語り始めた。
「車に乗せられた後、すぐにアイマスク
のような物で目隠しをされたんです」
忍は腕を組み、小さく呟く。
「目隠しか・・・」
信愛は静かに頷いた。
「外された時には、もうどこかの建物の中でした
だから私がどこへ連れて来られたのかは分かりません」
「なるほどね・・・」
「それから私は、教団の人と話をしました」
その言葉を境に、信愛の表情はさらに硬くなった。
◇ ◇ ◇
薄暗い建物の中。
人気のない廊下には湿った空気が漂い、どこからともなく冷たい風が吹き抜ける。
連れて来られたばかりの信愛は、不安を押し殺しながら目の前の男を見つめた。
「私をこんな所に連れて来て
何がしたいんですか?」
男は感情を表に出さないまま、静かに口を開く。
「我々はあなたというよりは御船愛子様つまり、貴方の
お母様である、白縫銚子様に用があるのです」
信愛は目を見開いた。
「お、お母さんに!?」
胸の奥で、一つの疑念が確信へと変わる。
やはり御船愛子は母・銚子の事で間違いないと。
男は淡々と言葉を続ける。
「御船愛子様も、愛娘が我々の手中に
あると分かれば、協力して頂けるはずですので」
信愛は思わず身を乗り出した。
「お母さんに何をさせる気なんですか?」
男はわずかに口元を歪める。
「我々の目的は──
イザナミとイザナギの
『アラミタマ』を──」
だが、その言葉は最後まで続かなかった。
「それ以上言うな。喋りすぎだぞ」
別の男が鋭く制止する。
「も、申し訳ありません」
叱責された男はすぐに頭を下げた。
信愛は聞き慣れない言葉に戸惑う。
イザナギとイザナミ。
それは確か神様の名前だったはず。それは以前少しだけプレイしたソーシャルゲームで覚えた名前だから分かる。
しかし、アラミタマという言葉は聞き馴染みがなかった。
天縁教団は一体何をしようとしているのか。
疑問ばかりが胸に積み重なっていく。
制止した男は小さく息をついた。
「少々喋りすぎましたが、要は我々には
御船愛子様の力が必要なんですよ。本物の力がね」
「本物の・・・力」
信愛が呟いた、その時だった。
#普通
野々さくら
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ありあ
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男は突然、背後の気配を感じ、素早く振り返った。
「ん? 誰だ!?」
しかし、廊下には誰の姿もない。
「誰もいない・・・」
信愛も思わず男の背後へ視線を向ける。
今、ハッキリと顔を確認できた。あれは千歳だった。
男は小さく首を振る。
「まあ、いい・・とにかく──」
そこまで言いかけた瞬間だった。
男は突然、自分の首を両手で押さえた。
「うっ・・うがっ・・・!」
苦しげな声を漏らし、その場によろめく。
異変に気付いたもう一人の男が慌てて駆け寄る。
「なんだ!? どうした!?」
だが、苦しむ男は首を押さえたまま顔を歪めるばかりだった。
「わ、分かりません・・誰かに
首を絞められているような・・」
男は喉を押さえたまま、必死にもがいていた。
「うぅ・・・!!」
次の瞬間、その体がゆっくりと床から浮かび上がった。
重力を無視するように宙へ持ち上げられた男は、空中でもがきながら悲鳴を上げる。
「ぐわああああ!」
異様な光景に、その場にいた全員が息を呑んだ。
「な、なんだ!?何が起きてる!?」
もう一人の男は信愛を睨みながら叫ぶ。
「貴様・・何をした!?」
「わ、私は──」
答える間もなかった。
宙に浮かぶ男の体が、突然何者かに弾き飛ばされたように勢いよく吹き飛び、背中から壁へ激突する。
鈍い衝撃音が部屋中に響いた。
「な、なんだ・・・」
男は震える声で呟く。
「一体・・・何が起きてる」
その時だった。
廊下に少女の怒りに満ちた声が響き渡る。
「許さない!」
そこには、怒りで肩を震わせる千歳の姿があった。
「信愛に手を出すヤツは一人残らず許さない!」
「千歳!!」
信愛が思わず叫ぶ。
男たちは突然現れた少女に目を見開いた。
「だ、誰だ!?」
「鍵は内側から閉めていたはず! どうやって──」
千歳に手をかざされ、男は言葉の途中で再び苦しそうにうめき声をあげる。
「うぐぅ・・・」
すると佳苗までもが姿を現し、信愛へ駆け寄る。
「信愛!? 大丈夫?」
「佳苗まで・・・」
信愛は驚きに目を丸くする。
怒りを露わにした千歳は男たちを睨みつけた。
「信愛は恩人なの!」
一歩、また一歩と前へ進む。
「そんな信愛にあんたら・・・許さない!」
信愛は慌てて声を張り上げた。
「ま、待って千歳!!私は無事だから!」
その言葉を聞いた瞬間、千歳はハッと我に返ったように動きを止める。
すると、それまで見えない力で締め上げられていた男の首から圧力が消え、男は床へ崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
荒い呼吸を繰り返しながら、自分の首を押さえる。
「ど、どうなってる・・貴様ら何者だ!」
呆然とする男たちの前へ、佳苗が信愛の手を取って駆け寄る。
「信愛!とりあえず私たちと一緒に来て!
この前みたいに、私たちの世界に」
信愛は小さく頷いた。
「うん・・ありがとう」
その様子を見た男が慌てて手を伸ばす。
「ま、待て!」
悔しそうに歯を食いしばりながら叫ぶ。
「まだ我々の目的を──」
男が全てを言い終えるよりも先に、部屋全体が眩い光に包まれた。
白く輝く光は視界のすべてを飲み込み、男たちは思わず腕で目を覆う。
数秒後、光は何事もなかったかのように静かに消え去った。
しかし、その場にいたはずの信愛の姿は、どこにもなかった。
「なっ・・・」
男は呆然と立ち尽くす。
「き、消えただと!?」
信じられない現実に声を震わせる。
「ど、どうなってる!?ヤツはどこに行った!?」
部屋中を見回しても、信愛の姿は影も形もない。
部下の一人が慌てて扉を確認する。
「鍵も閉まっています」
「何がどうなってるんだ!」
混乱が部屋を支配していた。
その時だった。
動揺する男たちの間を縫うように、一人の男が静かな足取りで部屋へと入ってくる。
騒ぎとは対照的に、その歩みには一切の焦りがなかった。
現れたのは、天縁教団教祖・坪野康仙だった。
部屋に入るなり、穏やかな声で問いかける。
「これは一体・・・どういう状況ですか?」
男たちは一斉に背筋を伸ばした。
「きょ、教祖様!?」
「白縫信愛はどうしたんです?」
坪野は静かに続ける。
「身柄を確保したんですよね?」
部下は青ざめた顔で頭を下げた。
「そ、それが・・・消えてしまったんです」
我々の目の前から忽然と・・跡形もなく・・」
「消えた?」
坪野の目がわずかに細められる。
「は、はい!」
「先程までは確実にこの部屋に居たんです」
しばしの沈黙。
坪野は静かに考え込むと、小さく頷いた。
「ほう・・・なるほど」
その口元には、どこか納得したような微笑みが浮かぶ。
「白縫信愛もまた、御船愛子同様に
特別な力を授かっているようだ」
その言葉に、部下たちは顔を見合わせた。
坪野はゆっくりと踵を返す。
「まあ、いいでしょう・・・」
落ち着き払った声音には、焦りの色は微塵もない。
「御船愛子に対してプレッシャーは与えられたはずです」
「まだ機会はあります、焦る必要はありません」
不敵な笑みを浮かべながら、坪野は静かに言い放つ。
コメント
1件
×××さん、250話お疲れ様です〜!😭💕 千歳の「信愛に手を出すヤツは許さない!」の怒りアツすぎた…!まさかそこに千歳と佳苗が現れるとは思わなくて、めっちゃ胸熱でした🔥 教祖の冷静な微笑みも不気味で続きが気になりすぎる…!