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リオが困惑している間に、ギデオンは素早く準備を終え、再びリオの傍に来る。
「では行ってくる。リオ、必ず避難するんだぞ」
「うん…」
ギデオンが頷き、離れていく。扉を開けて出ていこうとした瞬間、リオの身体が勝手に動き、ギデオンの手を掴んだ。
ギデオンがゆっくりと振り向き、「どうした?」と優しい声を出す。
リオは、掴んだ手を見つめて小さな声で言う。
「ギデオン…も、絶対に…無事で帰って…きて」
「約束する」
笑って見送りたい。だけど今、顔を上げると、泣いてしまう。それに気づいたのかどうか。ギデオンが微かに笑った気配がした。そして握られた手とは反対の手でリオの頭を抱き寄せ、つむじにキスをする。
手が離れギデオンが出て行く。扉が閉まり、リオはようやく顔を上げる。やはり我慢できなくて、泣いてしまった。流れる涙を袖で拭きながら窓へ走り、集まり始めた騎士達を見る。
各領地から集まった騎士達のことはよく知らないけど、皆無事でいてほしい。誰一人、欠けないでほしい。今からでも遅くない。魔法が使えることを話して、一緒に行こうか。
「ひどい顔だな。心配しすぎだろ」
|悶々《もんもん》と考え込んでいると、いきなり大きな声がして驚く。窓の外にビクターがいた。
リオは、慌てて鍵を外して窓を開ける。
ビクターは、リオの顔をじっと見つめると、優しく笑った。
「おまえのそんな顔、初めて見たな。あいつのためか?案ずるな。いざとなれば、俺がギデオンを守ってやるよ」
「ビクターさん…」
「しかし泣きすぎだろ。おまえがそんな顔してたら、あいつも心配で出発できないぞ」
リオは、慌てて両手で顔を拭う。泣き止んだと思っていたのに、勝手に涙が出てくる。
ビクターの隣にアトラスも来て、「大丈夫?」と手巾を渡してくれる。
「ありがとう…大丈夫だよ」
|手巾《しゅきん》を受け取り、丁寧に顔を拭く。油断すると涙がこぼれそうになるけど、ぐっと喉の奥に力を入れて耐える。
リオは手巾をアトラスに返すと、窓から身を乗り出して二人の手を握る。
「二人とも、必ず無事で帰ってきて。危険だと思ったら、迷わず逃げてきて」
「ああ」
「わかった」
ビクターもアトラスも、リオの手を握り返して頷く。
リオも頷き、手を離す。そして皆の元へ戻る二人を見送り、ほっと息を吐き出した。