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水瀬菜音
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#岩本照
絶対辰哉
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#BL
うさみみ
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「ただ今戻りました。」
夕暮れ時、鍵を開けて静かな部屋へと足を踏み入れる。 朝からずっと、照さんの体調が優れなさそうだったのが気にかかっていた。仕事に出る僕を無理して見送ってくれたけれど、どうしても心配で今日は用事を早めに切り上げて帰ってきたのだ。
いつもなら《おかえり》と玄関まで迎えに来てくれる筈の彼の姿が、今日はどこにもない。静まり返った空気の中、照さんの寝室の奥から低く息を荒らげるような音が微かに聞こえてきた。彼は僕が留守の間、ずっとベッドから起き上がれずにいたみたいだ。
心配になって、僕は少しだけ寝室の扉を開ける。薄暗い部屋の奥。照さんは苦しそうに息を弾ませてベッドに横たわっていた。いつもあんなに頼もしい背中が、小さく丸まっているように見えて、胸が痛む。
「照さん…?具合、如何ですか?」
「…さくま…、」
僕の声に反応して、照さんの喉の奥からグルル、と獣そのものの低い唸り声が漏れた。それはどこか、自身の弱みを隠そうとするような響きだった。彼は僕の方を見ようともせず、ひらひらと退室を促すように大きな手を振る。
「今はダメだ、近付くな…。」
「そんなに悪いのですか?!少し熱を──」
どうしても放っておけなくて、僕がベッドの傍らに歩み寄り、彼の額に手を伸ばしたその瞬間だった。
強い力で手首を掴まれたかと思うと、視界がぐるりと激しく反転した。気付いた時には、僕はベッドの上に仰向けに転がされていた。
目の前には、照さんが僕に覆い被さるようにしている。その顔は赤く火照り、人の姿なのにその目は幻獣の姿の時さながら黄金色にゆらゆらと煌めていて。眉をきつく寄せて、何か物凄い痛みにでも耐えているかのようだった。
「あ…照、さん?」
「佐久間…っ、」
照さんは絞り出すように僕の名前を呼ぶと、そのまま耐えきれなくなったように、僕の首元へと頭を深く埋めてきた。すぅっ、と衣服越しに肌の匂いを深く嗅がれる。彼から吐き出された息が鎖骨の辺りに吹きかかり、ゾクゾクとした甘い痺れが全身を走った。その呼吸は微かに震えていて、尋常じゃなく熱い。
「悪い、もう少しこのままで居させてくれ…。」
「は、はい…、」
余裕の欠片もない掠れた声と、僕を圧迫する彼の身体の熱さに、僕は爪の先まで完全に硬直してしまった。トクントクンと、照さんの速い鼓動が肌を通じて直接伝ってくる。
どうしてしまったんだろう。こんなに熱を出して、まるで理性を失いかけているような──。
その時、僕の脳裏にいつか蓮さんから聞いた言葉がふと蘇った。照さんが森から姿を消していた、あの日。
《照は今──発情期が来てる。生物的な本能で、定期的に来るらしくて。今照が居ないのは、多分その所為。》
(まさか、今のこれが…照さんの、その、)
心臓が跳ね上がる。これまで教会で修道士として育ち、ずっと純潔を保ってきた僕にとって、それはあまりにも刺激が強過ぎる現実だった。状況を理解した瞬間、顔が一気に紅潮していく。
「あっ、あのっ…、!」
「ん…?」
「か、風邪 じゃ、ないのですか…?」
上擦った声で何とかそれだけを口にすると、僕の首元に顔を埋めていた照さんの身体が、ピクリと強張った。少しの沈黙の後、彼はゆっくりと顔を上げながらも逸らされてしまった。
「、…あぁ。急に悪かった。もう、大丈夫だ。」
僕に無理をさせていると思ったのだろう。照さんはそっと圧し掛かっていた身体を僕から引き離そうと、身を引いていく。
その時、僕の右手は思考よりも先に動いていた。遠ざかろうとする照さんの服の裾を咄嗟にぎゅっと掴む。
掴んだものの、自分の内側から湧き上がった強い動揺と戸惑いに次の言葉がどうしても出てこない。何を言えばいいのか、何をすべきなのか、頭の中が真っ白になっていく。
「佐久間…、?」
名前を呼ばれて、僕は彼を見つめた。今も尚、眉間の皺を深めながら照さんは肩で呼吸している。抗えない本能。その苦しみの原因が、僕への想いそのものなのだとしたら。
楽に、してあげたい。でも…僕のような人間に、一体何ができるのか分からない。
神様への祈りも、聖水も、今の彼を救う術にはならない。だから僕はただ、考えをそのまま言葉にするしかなかった。
「僕は、どうしたら今の照さんを救えますか?」
ぎゅっ、と服を握る指先に力を込める。僕の真っ直ぐな言葉と視線を受け止めた照さんは、驚いたようにその目を大きく見開いた。一瞬、部屋の空気が止まったかと思う程に静まり返る。
「………いや、その…佐久間、あの な?」
彼は、まるで言い訳を探すように困惑した声を漏らす。その優しさが、今は少しだけもどかしかった。
「照さんを、助けたいんです。」
僕はシーツに身を沈めたまま、視線を逃がさずに彼を見つめ続けた。どんなことが起きたって、僕はもうこの人自身を拒んだりしない。
僕の覚悟が伝わったのだろうか。徐々にフーッ、と荒い呼吸を始めると、照さんの双眸がじわじわとはっきりとした金色に、獣のような鋭い光が質量を増していくのが見えた。
「…もう、止めらんねぇからな、」
返事をするよりも早かった。視界が照さんの影で満たされたかと思うと、『待て』から開放された動物のように喰らいつく激しい口付けが僕の唇を塞いだ。
「ッん!?、は、ンぅ、っんん!」
「っは、佐久間…ッ、…!」
あまりの勢いと口内に滑り込んできた熱い舌に、僕は驚いて声を漏らす。
けれど、不思議と怖くはなかった。
この人の腕の中なら大丈夫だと、心のどこかで信じ切っていた。
掴んでいた彼の服を更に強く握り締めながら、僕は照さんの熱い本能の渦の中へと身を投げた。
清廉潔白な佐久間に、性行為は刺激的過ぎる。そう思ってこの強い発情期を見越し、最初から寝室を別にしていた筈だった。だが、
「はァ、…ンっ、照 さ…ッ!」
今や俺は飢えた獣さながらに何度も佐久間の唇へと襲いかかっていた。優しく触れるような余裕はどこにもない。噛み付くように荒々しく、貪るように熱い舌を滑り込ませて口付ける。
「んむ、ぅ…っ、ふ、ぁ…、」
息もつかせない程の強引な口付けに佐久間が必死になっている中、俺は手を彼の服へと滑らせ、性急に布地を肌から剥ぎ取っていく。
「ひ、照さん、…はずかしい、です…っ!」
「俺しか見てねぇだろ、」
遮るものなくその素肌を晒すこと。性的なことを何も知らない佐久間は、ただそれだけのことに恥じらい、身を縮めて隠そうとした。
だが、今はそんな彼に気遣いなんてできない。俺は露わになった白い肌へと顔を埋めた。
「ッあ、ぁ…んん、っ!」
熱い舌で佐久間の繊細な鎖骨から胸元、尖った乳首、そして滑らかな腹へと執拗に身体中を愛撫していけば、佐久間はただシーツを掴んで身悶えするしかなかった。
「やッ、あ…ひか るさん…!」
羞恥に耐えかねて、佐久間が涙を薄く浮かべながら必死に腰を捩って逃げようとする。俺はその動きを許さず、彼のまだ誰にも触れられたことのない未成熟な部分を根元からそっと包み込んだ。
「あッ、!?どこ、触って…!」
「そうか…お前、『これ』もしたことねぇのか。」
その瞬間、狂おしい程の独占欲が跳ね上がった。彼の初めてを、俺が暴き、乱し、快楽で塗り潰す。
自慰すら知らずに育ってきた佐久間に、手取り足取り教え込むように。俺は掌でゆっくりと、快感を覚えさせるようにソコを扱き上げていった。
「あッ、やぁアぁ…っ!、照さっ、ひか る、さん…!」
可憐な声で俺の名を呼びながら、佐久間は縋るように俺の首元へ腕を回してしがみついてくる。
「っぼく、変です、っあ ンあ、ぁ!」
その身体は小さく震え、俺の手の中で熱さと硬さを増しながら脈打っていた。初めての強烈な快感に頭が追い付かないのか、溢れる涙で瞳を濡らし、切なく腰を揺らしている。
その姿が、俺の獣としての本能を更に強く煽り立てた。
「…それでいい。これからもっと気持ちいいこと、全部俺が教えてやる。」
耳元で囁きながら、掌の圧と指の腹を使って佐久間のモノをじっくりと根元から先端まで擦り上げていく。
一回、また一回とストロークを早める度に彼の身体はびくっと跳ね、喉の奥から甘い嬌声が零れ落ちた。
「ッあ、んンぅ、!…や、照さんッ!ダメ、でちゃう、ふぁ あアッ!なん か、出ちゃいます…っ!」
下腹部を襲う得体の知れない波に怯えるように、佐久間が脚を閉じようと足掻く。俺は空いた方の手で彼の片膝を軽く割り、更に逃げ場を失わせた。
「いいから出せ、我慢すんな。…俺に全部寄越せ。」
「あァっ、はッ、ひか、あッ──っ、ん、あぁぁァ…っ!!」
何度も扱き上げた指先で、最後に佐久間の先端をぐっと強く擦り上げたその瞬間、彼は生まれて初めて経験する激しい絶頂に全身を弓なりに大きく反らせ、俺の手の中へと白濁を吐き出した。