飲みすぎた夜は、たいてい後悔する。
でも、 後悔しながらもまた飲んでしまうのが、俺の悪いところだった。
部屋の中には、酒の匂いと、肌に染みついた汗と煙草の残り香。
そして、ベッドの上には、裸の男がひとり。
「……また、やっちゃったね」
低くかすれた声が、湿った空気を揺らす。
俺はぼんやりと、その声の主、伊織を見つめた。
寝起きの無造作な黒髪、シーツから覗く白い肌。
少し眠そうに目を細めながら、彼はタバコに火をつける。
「なあ、いい加減やめれば?」
伊織が吐き出した煙が、ゆっくりと天井へと昇っていく。
「何を?」
「こういう関係」
「……別に、よくない?」
「よくねえよ」
乾いた笑いが、喉から漏れる。
「お前さ。俺のこと、ほんとは好きじゃないだろ」
伊織の声が、妙に冷たく響いた。
俺はベッドから転がり落ちるようにして立ち上がり、乱暴に煙草を取り上げる。
「好きじゃなかったら、こんなことしてない」
そう言いながら、指先で伊織の顎を持ち上げる。
彼は嘲るように笑いながら、俺の手を払いのけた。
「それ、酒が入ってる時しか言わないよな」
言い返せなかった。
俺たちはいつも、酒を飲んで、セックスをする。
酔った勢いで抱き合って、翌朝には何事もなかったように別れる。
そういう関係が、心地よかった。
……はずなのに。
「次はシラフで抱いてくれたら、信じてやるよ」
伊織はそう言って、俺の胸を軽く押し返した。
俺は何も言えずに、黙って煙草を咥え始めた。
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だいすけ