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あの日から、少しだけ世界の色は変わった。
大和の名前が通知欄に出る度、
胸の奥がぎゅっと縮む。
嬉しいのに、落ち着かない。
安心したいのに、期待してしまう。
夜の配信は毎日のことなのに、
大和は配信に来なくなった。
「今何してる?」なんてもちろん送れる訳がなくて。
重いかな。
うざいかな。
嫌われないかな。
そんなことを思うばかり。
大和は変わらず優しかった。
雑な冗談も、たまにくる褒め言葉も
全部心に残った。
そんなある日、友達から連絡があった。
「大和別れたんだって」と。
泣きスタンプと一緒に送られてきていた。
あ、って思った。
思ってしまった。
いけないってわかってた。
でも、正直に言えば、
嬉しかった。
もう、大和は誰かのものじゃない。
そう思った瞬間に、
自分の中の希望が静かに顔を出した。
もしかして。もしかしたら。
わたしのこと、少しは見てくれるんじゃないかって。
その時は最低なことに別れたことが嬉しくて、
別れた理由を聞かなかった。
だから、知らなかった。
それから少しづつ、
大和と距離は近づいた。
言葉は前より柔らかくて、
配信に来てくれる頻度も増えた。
なのに、安心はできなかった。
むしろ、不安になった。
なぜなら、大和の元カノさんが
直接私に言いに来たからだ。
「大和は女たらしだよ」
「何かあったらすぐ言って」と。
でも私は、その言葉を無視した。
無視したというよりかは、
大和を信じたかったに近かったと思う。
大和が女たらしだったとしても、
“私ならきっと本気にしてくれる”
そう、信じたかった。
“大和なら変わってくれる”
この頃の私はそうとばかり願ってた。
「彼女と別れた」
その言葉を、
都合よく希望に変えて、
都合よく信じようとした。
この頃からだろう。
“会いたい”より先に、
“嫌われたくない”が来るようになった。
そして、大和の距離が近いことに、
スキンシップが多いことに、
私は怖くなり、学校へ行く回数が減っていた。
手を握ってきたり、
こしょこしょをしてきたり、
スキンシップは様々だったけど
私はとにかく、怖かった。
好きなのに。好きなはずなのに。
時間は過ぎ、7月30日。
カレンダーが変わっただけなのに、
気持ちは前より重くなっていた。
夏が近づくなる度、逃げ場がなかった。
大和は相変わらず近くて、遠かった。
夜にだけ続くやり取り。
でも、名前のない関係のまま、
時間だけが過ぎていった。
ただの”片想い”で済ますには重すぎた。
期待だけが膨らんで、
どこにも行き場がなくなる感覚。
だから、言うことにした。
「実はね、うちの好きな人って大和なんだよ 」
画面を見つめながら、心臓の音がうるさくて
指先が少し震えていた。
返信はすぐに来た。
「ふぇ?」
相変わらずの返信。
それに続き、一言。
「ごめん友達としては好きだよ」
それだけで、全部わかった。
理由も、言い訳も、
たくさん並べられていたけど、
頭には入ってこなかった。
“好きだけど付き合えない”
優しい言葉ほど、残酷だと思った。
これで終わり、そう思うのは
誰もが思ったと思う。
でも、終わりじゃなかった。
大和からの連絡は続いた。
むしろ、スキンシップが増えた。
恋は終わったはずなのに、
関係は終わらなかった。