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「やっべェ。俺、朝から殺人予告うけちった」
「……ッチ」
ケタケタと笑う朔蒔。阿呆みたいに椅子が揺れる物だから、そのまま引っ繰り返って頭を打てば良いのに。そして、記憶全てぶっ飛べば良いのにと俺は朔蒔を見ながら思った。
確かに、おはよう。と言ってくれたクラスメイトに死ねよ。は無かったかも知れない。でも、それぐらい嫌いだった。嫌いというか、俺の中に入り込んできた此奴を拒絶するための言葉だったんだろう。さすがに、死ねとは思っていない。俺の中にはいってきた分は死んで欲しい。何て言うんだろうか、体内に入ったばい菌とでも言うのだろうか。いいや、まあ朔蒔のことは別にばい菌だの何だの思っていないが、少なくとも、俺の大半を占めてしまった琥珀朔蒔という存在は出て行って欲しかった。目の前にいる此奴はいいとしても。
「ンで。朝から、熱烈な挨拶どーも。てか、何で驚いてんの?」
「何で、お前が学校にいるんだ」
「いや、来るでしょ。学校って勉強するとこだし? 停学も晴れて終わったことなんで」
と、ひらひらと手を振りながら朔蒔は答えた。
確かにそうだ。学校には、理由が無い限り来るのが普通だろう。じゃなきゃ、何のためにはいったんだという話になる。義務教育でもあるまいし。
だが、此奴が素直にお勉強をするタイプじゃないことぐらい誰でも分かる。現に、朔蒔の様子を伺って、皆警戒態勢をとっているのだ。此奴にとって、俺以外のクラスメイトはただのモブに見ているのかも知れない。自分と俺の世界には行ってこれない人間だと、そういう風に見ているのだろう。じゃなきゃ、肩がぶつかったぐらいで殴るなんて言う発想は出てこない。
未だに、琥珀朔蒔という人間を理解しきれていないのだ。
完全に理解したくもないが。
「星埜、おはよ」
「………………はよ」
どうしても、挨拶を返して欲しいらしい朔蒔に俺は数マイクロメートルほどの良心で挨拶を返し、席に着く。まだ、楓音は来ていないらしく、俺の癒やしがいない事に落ち込む。楓音がいれば、どうにか中和されて、嫌な人間とでもどうにか、本当にどうにかやっていけるかも知れないのに。
「ハッ、すげえ、不満げな顔。でも、可愛いぜ。昨日みたいな顔して、俺好みっつゥか」
「お前、それを大声で言うな!」
思わず、胸倉を掴んでしまい、行動した後ハッと我に返ったわけだが朔蒔はニタニタと笑うばかりで、その笑顔が「昨日のこと忘れたとは言わせねえよ?」といっているようにも思えて、最悪だった。
「もしかして、バレたくない感じ?」
「当たり前だろ。強姦野郎が」
「星埜だって言ってんじゃん。つか、最後は合意だっただろう」
何て、朔蒔は相変わらずの口を利いてはいはい、わかりました。と言わんばかりに両手を挙げた。
最悪だ。むかつく。
俺は、勢いよく朔蒔から手を離した。
「ま、俺は別にばれても気にしねーけど。星埜はウブだからねえ、あ、むっつり? まァ、どっちでも良いけど、むしろ、俺達の関係を知ってくれる人が増えるのはよくね? その方が好都合じゃん。俺のもんだってまわりに」
「俺は、お前のものじゃない!」
「すっごい目」
嫌いじゃないぜ? とニタニタするので、本当に殺意を覚えた。初めての殺意だ。こんなの。
「俺に関わるなっていったら、お前は他の生徒を殴るのか?」
「まあ、時と場合、後は星埜の理由によるかなあ」
「ッチ……分かった。それは、しない。だが、俺と一緒にいたいなら、こういうの人の前で言うな」
「こういうのって?」
いや、絶対分かってるだろ、と心の中で突っ込みを入れつつ、「だから、俺達の関係とかだよ」と言えば、ああ、と朔蒔は笑う。
「ほんと、星埜って純情? あーもう、処女じゃないから純潔も何もねえか」
「……」
「そういうの、まわりにバラされたくない。タイプね。あー分かった分かった。俺も、星埜とこれからも一緒にいたいから、しゃーねェし、その話聞き入れてやるよ」
と、何で上から言われなければならないのかと思ったが、此奴の機嫌を取ることが最優先だと、俺は黙ってそういうことだ、という意味を込めて頷いた。
意外と律儀な奴で、そういう発言はしてくる物の、俺達がそういうことをした、とはまわりにバラさなかったらしい。まあ、影で星埜が狙われている何て言葉が聞えてきたので、こいつが口を外さない限りは、俺は自分で言うのも屈辱だが朔蒔に処女を狙われている男、として認知為れるだろう。暫くのうちは、だ。