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そこから5日、俺はまともに動けなかった。
あのクレイジーなライオンは俺の全身の骨にヒビを入れていた。魔道具で、魔力で強化しておいてこれだ。もしアテが外れていたなら死んでいただろう。そう問い詰めても
「だから死ねと言っただろう?」
悪いとも何とも思ってないってことだ。結果として出来上がったからいいものなのか、そうでなければ確実に死んでいた。
それでも魔力が巡り出したのならば、このくらいは寝ていれば治ると言われ、事実5日かかったとはいえ治ってしまった。
「魔力はこの世界に満ちているものと、自らの中に取り込み蓄えているものがある。後者については余り語られることないがな。魔道具なんかは通常外から取り込むが、肉体を活性化させ機能を高めるのには体内に蓄えたものを血のように巡らせておこなわれる。それには蓄えられる容量と上手い下手があってな、魔力を扱う者たちの強さの違いとなる。あと、蓄えた魔力を外に出す技術もあるが、使い切ればそのあとは人間ほどの水準にまで能力が落ちるから余りおすすめはしない」
見舞いに来たレオが言うには、体内の魔力は巡らせて強化するだけなら減りはしない、使いこなせればレオのような理不尽な暴力も可能となるとのことだった。
立ち上がった俺は、姿見に映る身体を見て思わず息を呑む。
まだ赤黒く変色したままの痛々しい所が多いが、それよりも大きすぎた身体は引き締まり、筋肉の密度が上がったようなそんな締まりを思わせる肉体と、明らかに身長が伸びていた。測れば215cm。
職場で気づかれないわけない、困ったな……いや、別に種族が変わってもおかしくはないのか。巨人族というのは珍しいが大丈夫だろう。
予想とは裏腹に数日ぶりに職場復帰した俺に、誰もその事には触れてこなかった。どうでも良いのだ、今そんなことは。
この事務所はその性質上ギルドに併設される施設のひとつである。そのため割とホットな話題が入って来ることが多い。
朝からやけにざわついているなと思うと、どうやら周辺警備の任についていた冒険者たちが魔獣を見つけたらしい。
猿のようだが、身体は比較にならないほどデカく、発達した両腕を支えにするように歩く姿が報告された。
この街にはいま魔獣とやりあえる冒険者は居ない。すんごいエルフの弓矢でさえ魔獣には弾かれてしまうという。ならあの爆散していたという熊の魔獣は何だったのかいよいよ謎である。
どのみち魔獣に対するにはそれに見合った武器を持つ強者の力がいるとされている。
書類仕事に意識を戻す。眼鏡はかけていない。どうやら今回の恩恵は視力にも現れたようだ。