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「う……火端さんの頭……酷い焼けたような音がしたのは、火傷を負ったところは、ここだと思うんですが……えい!」
俺は驚いた。
あの優し過ぎる音星が、地獄の罪人たちの悲惨さに耐えられず。今まで閉じていた目をパッと開けてしまった。
「う! お、音星?!」
「大丈夫です。なるべく辺りを気にしないようにしています。さあ……このタオルで……う!」
辺りは相変わらず凄まじい悲鳴と灼熱地獄が広がっている。
音星は俺の後ろ頭をタオルで押さえると同時に、罪人の魂の凄惨な姿が目に入ったのだろう。身体がぐらりと崩れそうになった。
「もう、大丈夫だからな! さあ、目をゆっくり瞑って……」
「すみません……」
俺が身体を支えてやると、音星は再び目を瞑むってくれた。
ふぅーーー。
後ろ頭の火傷よりも、俺は音星の方が気掛かりだよ。
うん? それにしても、辺りにいる半透明な人型の多さに今になって驚いた。
ここにも、これだけの罪人がいるんだなあ。
罪人は死んでも苦しむんだ。
でも、確か地獄へ落ちた魂には唯一の救いがあるんだったな……。
それは……。
そうか、転生だ!
でも、今度はどうやって、弥生を転生させられるんだろうな?
確か、輪廻転生というのがある。その中に五戒というのがあって、それを守らないと人間は死んだら再び人間には生まれ変われないんだそうだ。
「あの。火端さん? 凄い汗ですが……一旦、八天街へ戻りましょう。それに現世では、もう夜のはずですし」
「兄貴? 一体、何を考えてるんだ?」
「ニャー……」
音星と弥生とシロの声が聞こえたが……。
うー、そうだなあ。
五戒って、不殺生《ふせっしょう》。不偸盗《ふちゅうとう》。不邪淫《ふじゃいん》。不妄語《ふもうご》 。不飲酒《ふおんじゅ》というお坊さんが守らないといけない5つの戒めのことだったっけ?
俺の妹の弥生はお坊さんや尼さんではないにしろ。
実際に地獄へ落ちているから、この際は参考になるかもな。
それと、それぞれの行いによって、殺生は等活地獄。偸盗は黒縄地獄。邪淫は衆合地獄。妄語は叫喚地獄。飲酒は大叫喚地獄へ行くことになっているみたいだ。
「火端さん……こんなに汗をお掻きになって……」
「ごめん。巫女さん。兄貴は少し考えるのが苦手なんだ。少しじっとしていようよ」
輪廻転生でも六道輪廻というのがあって……。確か輪廻を絶つ方法を解脱することって本で読んだ時があったっけ?
うーん……と。
六道輪廻の六道とは、魂は不滅だから、生前の善悪で地獄界。餓鬼界。畜生界。修羅界。人間界。天上界と、これらの世界へと輪廻することだったはず。
あ、でも。
解脱って……確か……。
極楽浄土へ行くことだったはず。
地獄から解脱して、極楽浄土へ?
そんなことって?
……。
うん……。とりあえずは、妹の罪を全部知ってからにしてみようか。
「音星。これから閻魔丁へ行こうよ」
「はい。浄玻璃の鏡ですね」
「ああ……。でも、少し違うかもな……」
「はい?」
「?」
「ニャ―?」
俺は妹の弥生の顔をまじまじと見つめた。
すると、弥生が首を傾げた。