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多分な……。
きっと……。
「クーラーバッグの中の冷たい飲み物とかは、まだ持つだろうし。だけど、下の階層。大叫喚地獄の入り口まで行ったら、また補給に一旦。八天街へ戻ろうか?」
「ええ……。でも……火端さん。その前に大叫喚地獄の入り口を見つけたら、一旦八天街の民宿で休みましょうよ。とても残念ですけど。もう、現世は夜遅いのですし、火端さんの頭の火傷がとても気になりますし……」
「……そういえば、もう八天街は夜になるんだな……」
「ええ。火端さんのリュックサックも心配ですし……」
急に、叫喚地獄全体の悲鳴が一段と激しくなった。
上空を見ると、灰色の空からまた大量の煮え湯が降り注いできそうだった。何故なら、巨大な青色の腕が手酌を振り上げていたからだ。
ああ、こうやって。
煮え湯が巻かれていたんだな。
「う、うわ!!」
「火端さん!! 弥生さん!! 早くあっちの火のついていない釜土へ!!」
「兄貴!! 走るぞ!! また頭焦がしたいか!!」
「ニャ―!!」
真っ赤な地面に手酌からの水滴が落ちてきた。水滴が落ちたところから、真っ赤な地面は大量の煙を発した。巨大な腕の手酌が目一杯振り上げられたのだ。その次は、当然。空の腕が勢いよく手酌を振り下ろしてしまった。爆発音に近い風の音共に、手酌から大量の煮え湯が地面へと注がれる。
俺は頭を両腕で守って、みんなのしんがりを大急ぎで走った。
見る見るうちに先頭を走る弥生に追いつけなくなった。
音星も呼吸を乱しながら、俺の前を走っているけど、速すぎて見失いそうになる。地面には火のついた釜土が所狭しとあった。
火のついた釜土からも間欠泉のように湯気が立ち昇る。
俺たちは煮え湯から逃げるために、また全速力で走ることになった。それも、今度は元来たところを通って、東へ向かうんだ。一度、走ったところだから、火のついた釜土の位置や、それに入っている人型の魂たちの位置までもが、俺には感覚的によくわかっていた。
きっと、音星たちもだろう。
大急ぎで駆け抜ける間中。ずっと、俺の後ろにはシロがいた。シロもさすがに猫だけあって足が速いな。
「火端さん! もっと速く!」
「ああ! わかった!」
音星って、こんなに足が速かったのか?
俺とシロの後ろ擦れ擦れには、まるで追いかけるように、空から大量の煮え湯が降り注いでいく。
俺たちが走り出した後で、ジュウ。ジュウっと、真っ赤な地面が焦げる音がしてきた。
「ハアッ、ハアッ!」
俺は思いっきり地面を蹴って走った。