『久しぶりに飲まね?』
メンバーとDiscord越しに会話をしながら編集作業を行っていた時に個人チャットでいるまから来た連絡だった。
「え、?」
思わず気の抜けた声が漏れてしまった。
「すち?どうしたー」
すちの声に反応して声をかけてくれるメンバー達。そこにはもちろんいるまの声もあった。
「いや、なんでもないよ~」
そう答えれば気にしない様子でまた違う話題にと会話が盛り上がり始めた。
連絡先を間違えたのだろうか、間違えだったらお互い気まずいな、なんて思いながらも返答をする。
『いるまちゃんおつかれ』
『連絡先俺であってる?』
すぐに既読がついた。
『あってる笑』
『今日の夜とかいける?』
宛先はすちで間違いはなかったようだ。その事に安堵する。
『大丈夫だよ』
『おっけ、じゃあ9時に○○で』
『はーい』
ここにメンバーがいるのにも関わらずわざわざ個人で声をかけられたことに変な気持ちになりながらも改めてやる気をだして編集作業を続けていった。
約束の時間になり指定の居酒屋についた。そこにいるまの姿はない。珍しく遅刻かな、なんて思っていると連絡が入る。
『すまん、ちょっと遅れる』
『先入ってて』
言われた通りに先に居酒屋に入る。後で一人来ることを伝えるとテーブル席に案内された。
賑やかな喧騒を聞きながらメニュー表とにらめっこをする。どれも美味しそうだな、なんて悩んでいると聞き馴染んだ声がはっきりと入っていた。
「おつかれ、わりぃ待たせた」
「大丈夫、お疲れ様〜」
走ってきたのだろうか、息を切らしている。
「ゆっくりでよかったのに、これ飲みな」
「サンキュ、」
グラスに入った冷たい水を渡すと勢いよく飲み干した。
「あ”ー、生き返る…」
「で、なんか頼んだ?腹減ったー」
「う”〜、まだ……」
「なに、悩んでの」
「んー……いるまちゃん選んで」
「俺でいいわけ?じゃあテキトーに選ぶな」
いるまが店員を呼ぶと何品かつまみを注文する。
「のみもんどーする?」
「んー…じゃあビール」
「おっけ、あと生2つで」
店員が厨房に戻るといるまがチラリとスマホを確認した。
少し勇気を出して気になっていたことに触れる。
「……今日どうしたの、」
「ん、なにが?」
「いや、急だったから」
「あー、それはわりぃ」
「嫌とかじゃないよ、ただ珍しいなって」
「……会いたかったから?」
「い、」
周りの空気の熱気のせいか、また別の理由からか顔を赤らめてふいっと顔を逸らされた。
いるまの名前を呼びたかったのに。タイミングが悪く店員が飲み物を持ってやってきた。
「じゃ、乾杯しとく?」
飲み物を受け取り、カチンとジョッキを合わせる。
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他愛もない会話を肴にお酒が進んだ。ふわふわと気持ちよくなっている。
「はぁ、やっぱ久しぶりに飲むの楽しいわ」
「ねー、ちょっと飲みすぎたかも」
「な〜、そろそろ解散すっか」
「いるまちゃん終電大丈夫?」
「ん、今からなら平気」
「じゃあお会計しよっか」
会計を済ませて、外を出る。冷たい風が頬を撫でて心地よい。
「うわ、さむ」
「ね、でもちょっと気持ちいいかも」
「ふーん、」
「……なぁ、すち」
「甘いモン食いたくね?」
「えー、いきなり。終電ギリギリなんでしょ」
「いいじゃん。コンビニでスイーツ買ってさ、すちの部屋で食おーぜ」
「ん~~……今回だけだよ?」
部屋に上げることに悩んだが酔ってテンションが変になっているかもしれない。そんな人を一人で帰すのも気が引ける、かもしれない。
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「お邪魔しまーす」
「どーぞ」
コンビニの袋をテーブルに置いて、買ったものを並べていく。
「あー、いるまちゃん。さっきのお金いくらだった?」
「えー?別にこれくらい良いって。部屋貸してもらってるし」
コンビニではすちがトイレに行っている間にいるまが会計を済ませてしまっていた。
「そんなわけにもいかな、……いるまちゃん?」
「ん~~??」
「これ、なに?」
デカデカと『0.1』という数字が書かれた箱。それを知らない程すちは純情なんかではない。
「え〜?知らねぇの、コンドーム♡」
「知ってるよ!知ってるけどさぁ……」
「ほんと変なノリになってる……」
「へ〜、知ってんだぁ。使ったことは?」
知っているくせにニヤニヤと笑いゆっくりと近づいてくる。ゆったりとした動作で箱を奪い取ると、箱で頭を叩かれる。
「も、黙秘権です!」
「じゃ、一緒に使っちまう?♡」
「え、!ちょ、ほんとに酔い過ぎだって」
「酔ってねぇよ♡♡」
「初めから持ち帰る気マンマンだっつの、♡」
「え、えぇ!?」
「好き、♡な、気持ちよくしてやるから」
「横になっとけ♡」
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ぱちゅぱちゅと湿った音が鳴り響く。すちに跨りいるまが腰を振る。所謂、騎乗位という体勢だった。
「は、♡♡やば、♡ちょっと、デカ過ぎね…♡♡」
「いる、まちゃ、やめよ、おかしい、って…」
「ふッ♡♡、そんな事いって♡ガチガチ、じゃん♡♡」
「は〜、気持ち♡♡好き、すち…♡♡」
クチクチと腰をグラインドさせながらすちのモノに感じ入る。
「な、♡キス、♡キスしよ♡♡」
「……いるまちゃん!!」
「へ、なに…?」
余裕そうに好き勝手動いていたいるまだったが、怒りを孕んだようなすちの声にビクリと肩を揺らす。動きが止まった隙に起き上がりゆっくりとナカからモノを抜く。
「ね、やめよ?今日の事はお互い忘れてさ……」
「……なんで、」
「なんで、って俺たちそんな関係じゃないでしょ」
「……良いじゃん。セフレでも、何でも……」
いるまの瞳からポロリと涙が流れた。まさかの事に慌てて涙を拭う。
「い、いるまちゃん!?な、泣かないで…?」
「え、あ、ほんとだ……いや、大丈夫」
「今優しくされたほうがツライ、かも」
「でも、」
「良いって、わりぃチョーシ乗りすぎた」
「良くないよ、ちゃんと話そ?」
いるまを逃さないようにしっかりと手を抑える。
「ね、なんでこんな事したの?」
「……なんだって良いだろ」
「良くないから話したいの」
「……鈍感」
「え、」
「鈍感すぎんだろ!」
「俺が何回…その、好きって……」
「え、え??」
「いるまちゃんって俺のこと好きだったの……?」
「……俺が誰にでもこんな事するって思ってるわけ、」
「そ、そんなことは」
「言ったから、もう、良いだろ」
「離して、痛い」
「……それに、勘違いする。そんな顔されたら」
「え、」
予想もしていなかったいるまからの告白、いるまへのソワソワと落ち着かない自分の気持ち。
今さらながらそれが『恋』という気持ちだったのだと気がついた。赤くなった顔を抑える。
「いるまちゃん、ごめん……」
「別にいいよ、コッチが暴走しただけだし」
「違う、俺も好き……いるまちゃんのこと」
「……は、いや、?はっ?」
「俺も、いるまちゃんが好き」
「気づかなくてごめん」
「いや、同情とかいらな、」
「本気だから、信じられないと思うけど」
「俺に、チャンスちょうだい」
「……ばかじゃん」
「ばーか!!」
「うぇ、そんなに言わなくても良いじゃん…」
「うるせーよ、」
「……なぁすち?」
「改めてもっかいする?」
「いや、ちゃんとリベンジさせてください…」
「なに、ムードとか気にするタイプ」
「当たり前でしょ〜!」
コメント
2件
初コメ失礼します!!🍵📢少ないので見れて嬉しいです…!✨️ストーリーも好きすぎます🫶