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外に出ると、既に野次馬が出来ていた。その間をぬって通ろうとは思わなかったけれど、領主が変わるだけで、これだけの野次馬ができるという事は、相当その領主……ラオシュー子爵がヤバい奴なんだろうなって思った。だって、周りは完全に歓迎気分ではないから。




「いいのかい、ステラ」

「え、うん。大丈夫です。モアンさん。私、こう見えても辛いので」

「やっぱり、家の中に居た方がいいんじゃないかい?」

「……大丈夫ですよ」




私は、そうやって押し切ろうとした。実際、まあ手を出されれば、魔法でズドンとやればいいから。周りに人がいないのを確認してから。けれど、手を出したら終わりだということは十分に理解している。だから、手は出さないでいるつもりだけど。




(それにしても、ストーリー外でこんなことが起こっていたなんて知らなかった)




グランツはこのことを知っていたのだろうか。それとも、知っていて、さらに闇魔法の人間が許せなくなったのか。

モアンさんとシラソルさんは、闇魔法の貴族を嫌っているようだった。貴族に対しての偏見は、前の光魔法の領主への態度というかいい人だったのに、といっているところを見ると、持っていないようだし。やっぱり、闇魔法の人間は、と思っているのだろう。本当は、違うんだって、そういう人ばかりじゃないんだよと声を大にしていいたかったけれど、完全にその時を逃してしまった。まあ、確かに、悪いコとする人が目立ってしまっているのは事実なんだけど。




(私は、闇魔法の貴族だけど、優しくて強い人を知っているからだけど……)




ちらつく紅蓮は、最近ずっと私に背を向けている。彼の好感度はどうなのかとか、また会えるのかとか気になってしまう。まあ、ラオシュー子爵と違って、アルベドは、公爵家の公子だし、ラオシュー子爵なんて頭が上がらないだろうけど。

そんな風に考えていると、一台の馬車が村にやってくる。人がいるのに、その間を割って入るように、馬が地面を蹴り、な埃を立てながら止る。皆、それに咳き込み、子供は泣き始めた。なんて登場の仕方だ、ともの凄く格好悪い、ジャラジャラとした馬車が私達の前に止った。




「辛気臭い村だなあ。まあ男爵家が治めていたというだけの土地か」




出てきたのは、黄金色の髪をした男。これまた、大層な如何にも貴族といった服装で、態度のでかそうな男、いや、態度のでかい男が降りてきたと思った。

私は、村人の隙間から彼の様子を眺めていた。確かに、貴族の男ではあるし、魔力も少なからずある。といっても微量といったところか。




(というか、私、魔法の鑑定が出来る?)




見ただけで、相手の魔力を察知できるようになっていた。無意識のうちに、魔力を感知できるようになっていたらしい。多分、周りを警戒しすぎたせいで、それが身に染みてしまったのだろうと。ありがたいことだとは思ったし、あのラオシュー子爵が取るに足りない相手だということが分かって少しだけ安心した。




「やあやあ、諸君。これからこの領地を治めることになったラオシュー子爵家の、グリス・ラオシューだ。頭が高いぞ、愚民共。頭を垂れよ」




ハンッと鼻を鳴らし、ラオシュー子爵は村人に頭を下げるよういった。しかし、それを受け入れなかった村人は、彼から一歩離れる。目をそらすものもいれば、家に入ろうと帰るものもいた。その態度にカチンときたのか、ラオシュー子爵は大きく舌打ちを鳴らした。




「平民が、貴族の命令に従わないのか。本当にどうしようもないやつらが集まった村だな。不作が続いていて、全く作物もとれないそうじゃないか」




ラオシュー子爵は、何か面白いことでも思いついたかのように、三日月型に口を開く。私も嫌な予感しかしなくて、眉間に皺を寄せれば、わざとらしく、彼は大きく手を広げた。




「そうだ、いいことを思いついたぞ。私が、この村の領主になった記念に、税金を三倍にしてやろう。不作続きだが、無礼な村だからな、これは罰だと思え」




ぐははは、なんて、悪役でも聞かないような笑い声で、ラオシュー子爵は宣言する。それを聞いて、ようやく、自分たちが、ラオシュー子爵の機嫌を損ねたのだと理解したらしい村人たちはざわめき出す。

それだけは簡便だと、三倍なんて、せめて二倍に、など不満と悲しみの声で一気に溢れかえる。それをみて、ラオシュー子爵は下品に笑うばかりだった。




「これは決定事項だ。ふむ、だが、寛大な私の心が、村人の悲痛な叫びを聞いていたんでいるのは事実だな」




(何処がよ)




口に出そうになったところを飲み込んで、本当にわざとらしい演技をするラオシュー子爵を一発殴りたくなった。その下品な笑みを浮べる顔にストレートパンチを撃ち込んだら、さぞ、気持ちがいいだろうなと思った。それができないのが辛いところだけど。

怒りに震える拳を押さえながら、私はラオシュー子爵を影に潜みながら睨み付けていた。

ラオシュー子爵は周りをふらふらと歩き回り、それから、また面白いことを考えたと、手を叩く。




「女だ。この村で一番美しい女をよこせ。そうすれば、税金を二倍で許してやろう」




ほら、いわんこっちゃない。と、私は、あまりにもゲスなことを言い出すラオシュー子爵にあきれを通り越して、怒りと殺意が湧いてきた。今すぐにその顔にストレートパンチを決めたい。




「ステラ、やっぱり逃げた方がいいよ。ほら、私のスカーフを貸してやるからね。それを被って家の奥に逃げるんだよ」

「そんなこと……」




村人たちは、周りにラオシュー子爵が気に入るような女性はいないかと探していた。災厄のせいか、それとも人間の生存本能か。誰かを犠牲にして助かろうとしている。まあ、一人の犠牲で、税金云々が解決するならその一人を差し出すだろう。一人の犠牲で、村が助かるのなら……けれど、このラオシュー子爵がそんなことを果たして約束してくれるのだろうか。私は、絶対にしてくれないと思う。こんなの、一時的な解決で、結局彼の気まぐれで、税金は巻き上げられ、彼の至福の肥やしとなるだろう。




(最低ね……)




母親らしき女性は、子供を庇うように抱きしめ、若い男性同士で、お前の恋人はどうなんだと話し合えば、胸倉を掴んで討論になる。そんな風に不の感情が連鎖し始め、皆が皆、相手を犠牲にしようと騒ぐ。それを見て、高みの見物をするラオシュー子爵。けれど、気が短いのか、ラオシュー子爵は、それまで、馬車にもたれ掛っていたが、自ら歩き始め、いい女はいないのか、なんて物色し始める。すると、一人で震えていた黒髪の少女を見つけ、彼女に歩み寄っていく。少女は、十六か、七ぐらいで、ラオシュー子爵に見つかった時、この世の終わりみたいな顔をしていた。モーセのように周りの人はラオシュー子爵が通る道を空ける。少女は誰も助けてくれないのかと、周りをキョロキョロと見渡していた。けれど、誰も彼女を助けようとしない。安心したように、ほっと誰かが胸をなで下ろす。





「貴様がいいな。まだ、初々しくて、私好みだ。だが、田舎臭さの抜けない顔をしている……まあ、それも良いだろう。それに、怯えた顔も中々いい」




ラオシュー子爵は少女の顎を掴み、彼女の顔を無理矢理上に向かせる。少女は恐怖と絶望に染まった顔でラオシュー子爵を見ていた。




「や……」




やめろなんて言葉は誰も発しなかったけれど、あの子にだって家族はいるはずだ。なのに、誰も助けないのは何故だろうか。




(どういうことよ)




自分の娘が、これから酷いことをされるんだって分かっているはずなのに、親は助けに入らない。多数派の意見に賛同しているのか、それとも、娘が嫌いなのか。どっちでもよかった。けれど、そんなことが許されるはずがない。親はこうあるべきだとはいわないけれど、それでも――




「待ちなさい」

「は?」




私は、少女の手を掴むラオシュー子爵の腕を掴んでいた。後ろから、モアンさんの声が聞えた気がしたが、私は気にしなかった。隠れてやり過ごすことだって出来た。でも何も変わらないって知っている。声を上げなければ現状は変わらない。革命が起きるときはいつだって、民衆が君主に対して声を上げるから。

それが出来ないのなら、私が声を上げると。

腕を捕まれたラオシュー子爵は一瞬、眉と顔を引きつらせたが、私を舐めるように上から下へ見ると、少女の手をパッと離した。少女はその場に尻餅をつき、地面を這いつくばるようにして人の波の中に消えていく。完全に私へラオシュー子爵の興味はうつったと安心した。だが、問題はこれからなのだ。




「す、ステラ、戻るんだよ」

「ダメだ。ばあさん、ダメだ」

「……」




モアンさんを必死に引き止めるシラソルさんの声が聞える。自分でも馬鹿なことをしている自覚はあるけれど、これでよかったと。




(いや、殴っちゃダメよね。殴っちゃ)




殴ることだって今なら出来た。記憶消せばいいじゃないと思ったけれど、それはエトワール・ヴィアラッテアと同じだからやりたくない。

ラオシュー子爵の舐めるような視線が体中にまとわりつく。気持ち悪い。自分がそう言う対象で見られているんだって吐きけがした。けれど、自ら前に出た以上ここでひくわけにはいかないのだ。




「貴様は、先ほどの娘の何倍も美しいな。まさか、私に見惚れて出てきたのではないか」

「バカなこと言わないで」

「ふむ、口の利き方がなっていないようだな。これは、躾が必要なようだ」




そういってラオシュー子爵は私に手を伸ばしてきた。


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