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「…そんな……っ!」
「このリストの筆者が貴方の父、あるいはその極めて近い協力者であることは明白です」
ダイキリが、祈るようにぎゅっと胸元を押さえた。
「じゃあ……私の名前もお酒の名前なのは、全部、全部偶然じゃなかった……? 私は、お母さんみたいに、いつか壊されるための『玩具』として名付けられただけなんですか……っ?」
その瞳に浮かぶのは、底知れない悲しみと、出口のない虚脱感。
私は咄嗟に彼女の肩に手を置こうとして──
その指先を止めた。
安っぽい同情や慰めは、今の彼女にとっては劇薬でしかない。
絶望の深淵にいる人間に、「大丈夫」なんて言葉は刃と同じよ。
「……まだ、そうと決まったわけじゃないわ」
私は自分に言い聞かせるように、紙切れの続きに目を走らせた。
【Remade Toy】の項目に並ぶ、番号付きの呪われた名前たち。
007-CORONARITA
005-BRONX
010-REDEYE
「……直訳すれば、作り直された玩具…または【改造された玩具】…ですね」
「嫌な言葉ね……だけど、これも全部お酒の名前みたいよね?」
「しかも全てビアカクテルの種類ですよ!」
「この名前の順番や番号にも意味がありそうよね」
アルベルトは顎に手を当てて考える。
「単純に誕生順……あるいは製造順? いずれにせよ、丁寧かつ楽しんでいるでしょう、書き手は」
アルベルトの冷徹な指摘。
「じゃあ……コロナリータさんも、誰かに【改造された玩具】…人間じゃない何かにされちゃったっていうことですか?」
ダイキリの言い方は冷静だったが、声はわずかに震えていた。
母親の秘密が暴かれた衝撃。それを彼女なりに受け止めようとしている。
「その可能性は極めて高いわね。彼女の『昔の記憶がない』という証言、そしてあの異常なほど整った生活習慣。何より、「なにかをされた」という発言もそうだけど……」
「あの子の赤い瞳がたまに青く光るところを見たの。あれは、後天的に植え付けられた『識別票』のようなものかもしれないわ」
(なら……あの妙な明るさも演技なのか、それとも…洗脳でもされているのかしら…)
私がそう推測すると、ダイキリはさらに血の気を引かせた。
「……そうだ、それならコロナリータさんがさっき、タバコの匂いがしたって言ってたのも、私たちの父っぽいですよね……?」
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