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「ええ……。日記の記述、コロナリータの証言からも、その線は濃厚だと思うわ」
「で、でも待ってください! もし【再利用の玩具】が私のことなら……私も、いつかあんな風に、記憶を消されて改造されちゃうってことなんですか……!?」
「それは、分かりませんが…貴方がたの父親がダイキリを『予備』として、あるいは『新しい素材』として泳がせている可能性は否定できません」
アルベルトの非情な肯定が、ダイキリの心を粉砕する。
そして、彼は紙切れの最後、血のような暗い色で綴られた一文に目を向けた。
“Vous n’êtes que les jouets d’un verre où vous devez vous noyer, car ce monde est ma recette.”
「んー…アルベルト、これ、なんて書いてあるかわかる?」
私が問いかけると、アルベルトは淀みなく、その呪いの呪文を翻訳した。
「はい。【あなたたちは溺れるべきグラスの中の玩具に過ぎない。なぜなら、この世界は私のレシピなのだから】と書かれているようです」
「私の、レシピ……?」
まるで神にでもなったかのような、身の毛もよだつ傲慢さ。
これを書いた人物は一体何者なのか。
彼女たちを「玩具」と呼ぶ理由は何なのか。
フランス語の詩的なフレーズ。
しかしその意味するところは、ぞっとするほど支配的で歪んだ思想を感じさせた。
まるで、人間を自身の創作物の一部として消費することを楽しんでいるような口ぶりだ。
「……随分と、悪趣味な詩だこと。反吐が出るわ」
アルベルトは淡々と、しかし軽蔑を込めて続けた。
「書き手が、常軌を逸した酔狂人であることは確かです」
「それじゃあ……私やコロナリータさんたちはそのグラスの中に沈む『玩具』のひとりってことですか…?」
「そう、考えざるを得ないわね」
私とアルベルトは互いの顔を見合わせる。
沈黙が落ちる。
「しかし…」
その沈黙を破ったのは、アルベルトだった。
「この文が示唆しているのは他にあると考えられます」
「他に?」
「はい…本来「グラスの中身」は、飲むだけでなく「見る」ためのものです」
「観賞ってこと……?」
「ええ。この世界というレシピの中で、翻弄され、溺れ、苦しむ玩具たちを、安全なカウンターの向こう側から眺めて楽しんでいる。