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5 - 二人三脚〈Yellow〉

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2023年10月15日

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いつものように、6人で丸くなって笑い合っている空間。

傍から見ればこれは完全にサボってるように思えるだろう。まあ、実質サボりだからそれは正論。

リハーサル室の片隅で、他愛もない話で盛り上がる。ちょうどジェシーが有名なアーティストさんのライブに行ってものすごい興奮した、というエピソードを彼の大声で聞いたところで、振付師さんが入ってきた。

そうなるとさすがにみんなのスイッチは切り替わる。

今日は新しいシングル曲の振り入れの続きだ。珍しくけっこう踊るから、頑張らないと。

「じゃあ最初からやりまーす」と合図があり、音楽が流れはじめる。

序盤こそみんなは真剣にやっていたものの、だんだんおふざけモードになってくる。

きょもと樹が振り付けを崩しはじめたから、俺も乗ってみる。そこにジェシーと北斗も便乗してきて、オリジナルが完成した。

「ちょ…ちゃんとやってくださいよ!」

と振付師さんも半笑いで注意する。

違うダンスに見えない範囲で崩していく俺らに対し、高地はいつものようにスタンダードなスタイルで踊っている。

しばらく動いていると、ふいにその高地がよろけた。

俺はたまたま視界に入ったけど、みんなは気づいていないみたい。

「とりあえず最後まで」と言われたから続けているが、どこか右足をかばっているように見える。

それで俺はぴんときた。さっき、軽くジャンプする振りがあった。きっとそこでくじくか何かしたんだろう。

その後もちょっとふらふらして危なっかしい高地の踊りを見ていると、さっき教えられたばかりの場所を彼が間違えた。

「あっごめん、足が…」

「またでたよ」と北斗は苦笑いする。

「ちょっと休憩していいですか」

俺は見ていたから、ほんとに痛めたんだとわかる。でも4人はあまり真に受けなかった。

「もう、また足つったんでしょ。まあ俺らも疲れたしね」

樹がそう肩を叩いて、振付師さんも許可した。

椅子に座って水を飲む高地に、俺は駆け寄った。

「ちょっと足見せて」

みんなが俺を振り向いた。

「いや…大丈夫だって。ちょっとつまづいただけだし」

聞いてないふりをして、ズボンをまくった。

「おい」

高地のきつい声が頭上から降ってきたが、お構いなしだ。

靴下を履いていないその右足首は、少し赤くなっていた。

「え、これ…」

ジェシーがつぶやく。

「やっちゃったな」

顔を上げれば、ばつが悪そうにぷいっと少し顔を背けた高地。分かりやすいにも程がある、うちの最年長。

「足つったんじゃなくて? くじいたの?」

きょもが問い詰める。案外真剣な表情だ。

「……ん」

小さすぎる承認をして、うつむく。

「わかった、医務室行こう」

北斗が言った。

歩けるかな、と立たせてみるが、右足を床に着けた途端に高地の喉から音が漏れた。「っ…!」

「無理? じゃあ俺おぶってく」

渋い顔をする高地を強制的におぶり、リハーサル室を出た。



「…捻挫ですね」

と目の前の医師は言った。

「応急処置をしたので、しっかり病院で診てもらってください」

テーピングをして氷で冷やされたあと、落ち着いてから医務室を出る。

再び半強制的に背負ったからか、後ろからは小声で文句が聞こえてくるけど。

「ねえ…誰かに見られたらどうすんだよ。はずいって」

「別にいいだろ。ってかどうせ歩けないくせに」

でもときおり「いってぇ…」と苦しそうな声が漏れていて、心配は募る。

「そんな痛い? 大丈夫? 折れてたりしないよね」

「…知らねーけど、折れたらもっと痛いだろ」

リハーサル室に戻ると、やっぱり心配そうな顔をした4人が待っていた。

「捻挫だって」

俺が短く伝えると、

「マネージャーさん呼んだから。もうすぐ着くらしい」

樹が言った。「…ごめんな、さっきちゃんと聞けばよかったのに。いつもみたいにふざけてるのかと思って」

ううん、と高地は首を振った。

「迷惑かけてごめん。みんなは続けてていいから」

「置いとくわけないよ」

そうジェシーが声を掛けた。「また治ったら、みんなでやろ」

そこでやっと、高地の表情が緩んで笑顔が垣間見える。

「行こうか。俺につかまっときな」

同じ高さの肩を組んで、ゆっくり歩き出した。


続く

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