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「連華もついて来い」
言われるがままに私は愛華さんについて行きました。
「あれ?姉さんどったん?炎端おぶって」
桃色の狐面を付けて、黒色のワンピースを着ているドールが愛華さんに向かってそう言いました。「姉さん」と呼んでいることから、妹さんでしょう。
「あぁ、鈴か、ちょっとした緊急事態だ」
「ありゃー」
この二人がそう言うと、この大事態も軽く思えてしまうようなほどの軽いノリで話していました。
「鈴、後に居るのが、国際連盟のドールの連華だ。連華、此奴は鈴華。私の妹で、にゃぽん様のドールだ」
「連華ちゃんか〜。よろー」
「は、はい。よろしくお願いします」
私がそう返すと、「かったいねー」とヘラヘラと笑いながら鈴華さんはそう言いました。
「鈴、体調がマシになったのか?」
「いや?てか、ゼッテー姉さんの方がうちよりヤバいっしょ」
「なら寝ときんさい」
そんな二人の会話を聞きながら歩いていると医療室に着いたみたいです。
「取り敢えず、炎端は此処に寝かせよう」
そう言って、愛華さんは炎端さんを真っ白のベッドに寝かせました。
「連華はそこの椅子に座れ。鈴は寝ろ」
愛華さんのその言葉に、鈴華さんは「りょー」と軽いノリで返事をし、私は「はい」と緊張を隠せない声で返事をしました。
私と愛華さん、二人揃って炎端さんと鈴華さんの寝ているベッドの間にある丸椅子に座り向き合っている状態です。
「連華、どうしてこの事が起こったのか、分かる範囲で良い、言える範囲で良いから説明してくれないか?」
とても優しい声色で愛華さんは私に事の発端を話すように促しました。
「公園の噴水近くに居た時、何故か、何時もよりも周りの人々の『苦しい』とか、『悲しい』とか、そんな感情が流れ込んで来て、噴水に大きな枝垂れ桜が満開の状態でできたんです。数分して、枝垂れ桜が消えるとドッと疲れとか、苦しさが襲い掛かってきて、動けなくなっていると炎端さんが来て、私をおんぶして此処まで連れてきてくれました」
普段は私に深く関わろうとしない炎端さんがあの時、血相を変えて来たのは本当に驚きでした。
「そうか、能力の発動でこうなったんだな」
私は一言も能力と言っていないのに、愛華さんはさっきの枝垂れ桜が能力だと見抜きました。
愛華さんは美しいまでに着こなした赤色の袴と黒の着物を整え、焦げ茶色の羽織を畳んで鈴華さんの寝ているベッドの上に置きました。
「連華、お前の能力の事、知りたいか?」
愛華さんの紅色の瞳は真っ直ぐに此方を見据えていました。私の答えは勿論「YES」です。
「酷な事かもしれん、それでもか?」
私は即答しましたが、それでももう一度愛華さんは確認しました。それでも私の意思は変わりません。
「それでも、です」
「分かった」
そう言って、愛華さんはそっと目を瞑りました。