呪鬼 if リクエスト1部捏造の設定があります
※過去作 「もう忘れないでね(1)」の続きになります。
未読の方は先にそちらを見ることをおすすめします。
rd
俺には昔の記憶が無い。
ずっとどこかを彷徨っていた記憶はあるが、どこかは分からない。
目が覚めた時には廃校の校庭内にある神社にいた。
そこで俺は天乃絵斗という人物に出会った。
彼の話が正しければ記憶が無くなる以前の俺は彼と仲が良かったらしい。
そしていつも俺に優しく暖かくそんな話をしてくれる。
だから俺が彼に恋心を抱くのも自然なことだった。
絵斗と結ばれたい。絵斗が好きだ。
そしてこの感情はきっと今に始まったことでは無い。
記憶が無くなる前から彼の事が好きだったんだと思う。これだけは断言出来る。
… まぁ、決定打となる根拠はないのだけれど。
rd「俺、絵斗の事が好き」
pn「ほんとに言ってる?」
rd「うん」
rd「絵斗は … 俺の事嫌い?」
pn「好きだよ … 大好きだよ」
rd「じゃあ、俺と結ばれてほしい」
pn「… ほんとに俺でいいの?」
rd「俺は絵斗がいい」
pn「じゃあ、よろしくお願いします」
rd「 … !! 」
rd「ありがとう、絶対幸せにする」
そう言って彼を力強く抱きしめた時、その時彼は初めて柔らかい表情をしていた。
いつも俺のせいで硬い顔ばかりさせてしまっていた。
俺が彼のことを好きだったように、彼も昔から俺の事が好きだったらしい。
だからこそ、俺が記憶を失ったのが悲しくて、辛くて、思い出が自分だけのものになってしまったのが苦しかったのだと。
でも、この瞬間、初めて記憶が無い俺に対して安心感を感じたらしい。
俺は嬉しかった。
rd「ねぇねぇ、絵斗」
pn「ん?」
rd「俺、廃校行ってみたい」
pn「…え、」
rd「だって、俺らが通ってたとこでもあるんでしょ?」
pn「うん …」
rd「だから、行ってみたい」
pn「…まぁ、バレなきゃいっか」
rd「うん」
そう言って彼と来た廃校。時刻は夕方頃。
オレンジ色の光に包まれた校舎は古びていて、独特の雰囲気を醸し出していた。
pn「ここが職員室 … ここが放送室」
rd「…」
pn「… ここが理科室、 ッ ここは保健室 、」
rd「…?」
pn「ッッここが 、 俺たちの教室で、らだぁが担当してたクラス ッ … ぐすヾ」
6年1組。
この教室は俺が担当していたクラスでもあり、幼少期の俺らが過ごしていたクラスでもあるそう。
教室には薄く跡が残った血痕がいくつもあった。
机と椅子はバラバラだったし黒板も昔の日付で止まっている。
彼は涙を浮かべながら席に座った。
俺は教卓の後ろに立って、教室全体を視界に入れる。
… あぁ、俺、この教室で授業してたんだな。
陽の光がよく入るこの教室で、生徒と話して、ふざけて、笑って、時には怒って …
pn
pn「…ぁ、らだぁ、」
rd「…ん?」
pn「1つ、来て欲しいところがあるんだ」
rd「うん、わかった」
音楽室。
ここは俺達が放課後を過ごしていた場所。
そこには古びたボロボロのグランドピアノがあった。
よくここに座ってピアノ弾いてたなぁ、まだ弾けるかな…
rd「音楽室 … なんか弾いてよ」
pn「うん、 」
〜♪
俺たちが歌っていた曲。あの夏の放課後に …
???
pn「〜〜♪ ヾ」
rd「I don’t wanna be the owner of you fantasy .. ♪」
pn「〜♪ ヾ」
rd「I just wanna be a part of your family …♪」
pn「歌上手だね」
rd「そう?絵斗のピアノが上手いからじゃない?」
pn「ふふ、そう? 笑ヾ」
pn「… 俺、この時間好きだなぁ …」
rd「ん?」
pn「こうやって、らだ男とのんびりここにいるの」
pn「時間がゆっくり流れてるみたい、」
rd「俺も好き」
rd「なんか、嫌なこともどうでもよくなる」
pn「…それはよかった 笑ヾ」
rd
pn「〜♪ ヾ」
rd「…」
pn「〜〜♪ ヾ」
rd「…、」
pn「〜♪ ヾ」
rd「… I don’t wanna be the owner of you fantasy ..」
pn「 !! …. ヾ」
rd「I just wanna be a part of your family … 」
rd「And I don’t wanna talk about anything」
pn「ッ う゛ぅ ッ ヾ」
rd「ッ 絵斗 …? 大丈夫?」
pn「なんで知って …. ッ ぐすヾ」
rd「俺も分かんない …. なんか勝手に 、」
rd「なんか急に懐かしい感じがして 、」
rd「前話した昔の記憶なのかな、」
pn「…それね、俺との記憶だよ」
rd「そうなの、?」
pn「毎日一緒に練習して、何時間も話して、」
pn「楽しかったし幸せだったなぁ … 、」
pn「ッ らだぁ ッ … ヾ」
rd「…」
彼が今呼んだ名前は確かに俺。でも本当に心から求めている、呼んでいるのは俺では無いことくらい分かっていた。
pn「会いたい ッ らだぁに会いたいよ ッ 泣ヾ」
やっぱり。いつもいつも絵斗は昔の俺に会いたがっていたんだ。
でも俺が何も思い出せないから。思い出したくても思い出せなくてずっとずっと彼を苦しめている。
rd「っ ぐす ヾ」
rd「思い出せなくてごめん ッッ ぐすヾ」
彼の泣いた顔は嫌い。どうしても苦しくなる。
助けられないのに。俺はいつも見ているだけ。誰の事も救えない。救えた試しがない。
pn「らぁ ッ なんで置いてったの …」
pn「1人にしないでよ ッッ !! 泣ヾ」
そう言って泣く彼を見て俺は分かった。
全て理解した。
俺が今ここにいるからいけないんだ。
中身は何も無いのに彼の目の前に形としているせいで彼を傷つけている。
思い出せないのだからもう本来の猿山らだ男として、行方不明のまま亡くなったことにしてしまえば全て終わるのだから。
そしたら絵斗もきっと … 俺の墓の前で手合わせしてくれるんだよ。
rd「…絵斗、」
pn「ぐす ッ ヾ … なに、 ?」
rd「あのさ …」
pn
ut「おいお前、花は? 」
zm「ちゃんとあるで?」
ut「ほんまや、すまん」
pn「ちゃんとみんな並んでね」
花を置いて、果物を置いて、水をかける。
今年も俺が最初。
誰よりも先に両手を合わせて瞼を閉じる。
らだ男、元気にしていますか。
あの夜、あんなこと言うなんて思わなかった。
でも、俺の事考えてくれてたんだよね。知ってるよ。
俺は今でも毎晩辛くて泣いちゃうし、きっと立ち直れなんかしないと思う。
でも、またいつか会えると思って、その日をたのしみにしてます。
大好きだよ。らだ男。また来年くるね。
遅くなってすみません、リクエストありがとうございました。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡1000 💬1
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