EUと謎の武装集団が交戦状態に入る中、遠くから響く轟音が場の空気を再び変える。誰もが振り返ると、地平線上に見えたのは数十台の戦車と、それを護衛する多数の歩兵部隊。さらにその後方には、空中を覆うように編隊を組んだ戦闘機が迫っていた。
「ロシア軍だ。」拓真が険しい表情で呟く。
「まさか……」亮太が身構える。「このタイミングで来るなんて。」
EU軍の指揮官ソフィアも、ロシア軍の規模に驚きを隠せない。「やはり、彼らは最初から本命だったのね。」
ロシア軍を指揮しているのは、アレクセイ・ザイツェフ将軍。冷酷無比で知られる軍人であり、ライカントロピー計画の黒幕の一人とも噂されている。
彼の目的は明確だった。
「薬もデータも、すべてロシアに渡す。」
アレクセイは、国の力を強化するために狼男の力を利用し、軍事的優位性を確立しようとしていた。そのためには、他国の勢力を排除し、計画を完全に掌握する必要があった。
ロシア軍が進軍を開始すると、EU軍と謎の武装集団もそれぞれの立場で応戦を始める。
「亮太、俺たちも動くぞ。」拓真は亮太に指示を出しながら、自分たちがどこに立つべきかを模索していた。
「でも、俺たちが何を守るんだ?」亮太が戸惑うように問いかける。「薬を奪わせないのか、それとも……」
「それを決めるのは俺たちだ。」拓真は冷静に答える。「どの勢力も信じられないなら、俺たちがこの薬をどうするかを決めるしかない。
ロシア軍の火力は圧倒的だった。戦車砲が次々と発射され、施設の残骸や周囲の部隊を粉砕していく。その一方で、戦闘機の空爆が敵の進軍を阻む。
ソフィアは部下に指示を飛ばしながら、なんとかロシア軍に抵抗する。
「撤退はしない!この場を死守するわ!」
しかし、ロシア軍の勢いは止まらない。次第にEU軍は追い詰められていく。
その時、亮太が声を上げた。
「俺が突っ込む!この力を使えば、あの戦車隊くらいなら……!」
「待て!」拓真が亮太を制止する。「無闇に動けば、やつらの思うつぼだ。」
しかし亮太は振り返らず、覚醒した力を解放してロシア軍の戦車部隊に突進していく。その姿はもはや人間のものではなく、まさに「狼男」そのものだった。
「亮太!」拓真が叫ぶが、彼の声は戦場の喧騒にかき消される。
亮太が戦車を破壊していく中、ロシア軍は彼の存在に気付き、集中攻撃を始める。その時、アレクセイ・ザイツェフ将軍が無線で命令を出した。
「彼を捕らえろ。生きたまま持ち帰るんだ。」
それを聞いた拓真は決意を固める。
「亮太を守る。それが今の俺たちの役目だ。」
拓真はソフィアと一時的に手を組み、亮太を救出するための作戦を練り始める。しかし、謎の武装集団もロシア軍の背後に潜んでおり、状況はさらに混迷を深めていく。