寵愛狼男

ロシア軍の猛攻の中、EU軍は次第に劣勢に追い込まれていった。戦車砲が施設を次々と粉砕し、戦闘機の空爆が敵兵士たちの士気を削ぎ落とす。

ソフィアは戦況を見て、部下たちに厳しい指示を出し続けていた。

「持ち場を捨てるな！ここで踏ん張らなければ、この地でのすべてが終わる！」

だが、彼女の言葉も空しく、部隊の損失は増える一方だった。

ロシア軍の指揮官、アレクセイ将軍は冷静に戦況を見つめ、勝利が確実になった時、無線を通じて部下に命令を下した。

「包囲網を縮めろ。逃すな。」

EU軍はもはや崩壊寸前だった。ソフィアは撤退を命じることをためらったが、生き残った部下たちの疲弊した顔を見て、ついに決断を下す。

「撤退する！全員、南へ向かえ！」

部隊は混乱の中で退却を始めたが、ロシア軍の追撃を受け、脱出できたのはほんの一部だった。

亮太と拓真は、EU軍の敗走を目の当たりにしていた。亮太は怒りを隠せず、拳を握り締めた。

「こんなところで終わるのかよ……俺たちはまだ何もできていない！」

「焦るな、亮太。」拓真が冷静に言う。「俺たちにはまだやるべきことがある。この状況を利用するんだ。」

「利用？」亮太は訝しげに拓真を見つめた。

「ロシア軍がEU軍を壊滅させたことで、次に動くのはアメリカと中国だ。」拓真は戦況を読みながら続けた。「やつらの出方を待ちつつ、俺たちはライカントロピー計画の真相に迫るんだ。」

ソフィアは辛うじて生き延びた部下たちを引き連れ、撤退先で最後の作戦会議を開いていた。

「私たちは負けた。でも、ここで終わらせるつもりはない。」

「将軍、どうするんです？」部下の一人が尋ねる。

「ロシア軍の隙を突いて、ライカントロピー計画のデータを奪取する。それが私たちの最後の使命だ。」

その言葉に、部下たちは驚きつつも決意を新たにした。