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猫塚ルイ

(ナオミさんが……私のために、我慢してる……? こんなに辛そうな顔をして、それでも私を傷つけないように……)
こんなに情熱的に求めてくれているのに、それでも最後の一線を越えなかったのは、全て私のためだった。その事実が、激しい嵐のように穂乃果の胸の中に怒涛のごとく流れ込んでくる。溢れ出す幸福感と愛おしさで、穂乃果の胸がきゅうと切なく締め付けられた。
「だから……だからって、今ここで止めなくても……っ!」
「だめよ!」
ナオミがもう一度強く、遮るように声を荒げた。
その声は、抑えきれなくなった欲望を振り払うように苛立たしげで、同時に大切な宝物を守り抜こうとする、切迫した響きを帯びていた。
「アタシはね、穂乃果。アンタとの関係を、遊びで済ませたくないの。アンタの未来を、台無しにしたくないのよ。分かって頂戴」
言葉の一つ一つが、余裕のないナオミの焦燥を雄弁に物語っている。
「……嫌です」
「は? アンタ、アタシの話聞いてた?」
「聞いてました。ナオミさんが万が一のことを考えてくれるのは嬉しいけど……。私は貴方としたい。……だめ、ですか?」
上目遣いに、震える声を振り絞って紡がれたその一言は、ナオミの中に残されていた最後の理性を完全に焼き切るには十分すぎる威力だった。
「……っ、本当に、アンタって子は……!」
ナオミの喉の奥から、獣のような低い呻きが漏れる。
もはや躊躇うような素振りは一切消え失せていた。それまでソファの縁に押し当てられていたナオミの大きな手が、弾かれたように穂乃果の手首をがっちりと掴み、そのままソファの上へと激しく押し倒した。
「あ……っ!」
視界が反転し、背中にソファの柔らかな感触が伝わる。
次の瞬間には、ナオミの大きな身体が、逃げ道を塞ぐように上から覆い被さってきた。完璧に整えられていたはずの髪が乱れ、その隙間から覗く『織田健司』としての剥き出しの瞳が、狂おしいほどの熱を帯びて穂乃果を射すくめている。
「もう…後悔してもしらないわよ」
低く掠れた、いつもよりずっと低い大人の男の地声。
「しませんよ。……絶対に」
だって、こんなにも自分はこの人が愛しくて堪らないんだから。
上手く伝えられない言葉の代わりに、穂乃果がその広い背中へそっと腕を伸ばして抱きつくと、ナオミの身体がびくりと熱く強張った。
その毅然とした、けれど熱を孕んだ誓いと、背中に回された小さな手の体温を受け止めた瞬間、ナオミの瞳の奥で、何かが完全に弾け飛ぶのが見えた。
コメント
1件
あああもう! ついに来たかー!! 😭💕 ナオミさん、ずっと我慢してたんだね…「アンタとの関係を遊びで済ませたくない」って言葉、重すぎて刺さったわ。穂乃果が上目遣いで「だめですか?」って言うシーン、完全に理性ブッ飛ばしに行ったな…。背中に手を回す穂乃果の優しさと、最後の「何かが弾け飛ぶ」描写、最高の決着の予感! 続きが待ちきれない🔥