テラーノベル
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「それじゃあ、宇宙船を強化する拠点をゲットしよー!」
住民とのファーストコンタクトを終え、元気いっぱいに声を上げるちんすこう。そこにその住民である黒エルフが話を始める。
「拠点を求めているのか? 宇宙怪獣がねぐらにしている拠点があるが、まだ実力が足りないようだな」
拠点入手にはボスを倒すクエストを受けなければならないが、レベルが足りなくてそのクエストを受ける事が出来ないのだ。本来こなすはずのクエストを飛ばしてきたのだから当然である。
「なぬっ!? それならまずはレベル上げだ!」
ついにレベル上げを決意するちんすこうだが、サーターアンダギーが現実を突きつける。
「ちなみにレベルが低すぎてどのクエストも受けられませんわよ」
今度こそこの自由人にほえ面をかかせる事ができると、ナビゲーターらしからぬ考えを持っていた。だが何人たりとも彼女を責める事は出来まい。
「じゃあ敵を倒して経験値稼ぎだ! この近くに狩りポイントある?」
気を取り直して尋ねるちんすこうに、少し先に見える森を指差すサーターアンダギー。
「あそこに小さな宇宙怪獣が沢山いますわ。攻撃してこないのでレベル上げには持ってこいですわね」
ニヤニヤ笑いながら言うが、ちんすこうは彼女の態度に気付いた様子もなく元気に森へ向かった。
森に入ると、何とも言えない白いフワフワが空中を漂っている。これが宇宙怪獣らしい。
「なにこれ?」
「宇宙怪獣ワタガシですわ」
何の捻りもないネーミングである。実に弱そうだ。さっそく果物ナイフを手にワタガシを攻撃する。
「お命、頂戴!」
「何ですかそのセリフ」
ちんすこうがワタガシを斬り付けると、『1』という数字が空中に浮かんだ。ダメージ数値である。
「おお、ダメージが出た!」
「ちなみにワタガシのHPは一万ですわ。頑張って一万回攻撃しましょう」
一万と聞いたちんすこうは、その場で考え込む。サーターアンダギーはついに彼女の快進撃を止める事が出来ると喜んでいたが、ちんすこうはすぐに踵を返して宇宙船へと向かった。
「ミッドガルドに戻るんですの? 憲兵が襲ってきますわよ?」
質問しつつもそれが妥当だろうと思うサーターアンダギーだった。
コクピットに座り、操縦桿を握るちんすこう。宇宙船はゆっくりと空に浮かび、森へと近づいていく。
「まさか……」
「見つけた! ビーム発射!」
白いフワフワを見つけるとロックオン、流れるような動作でトリガーを引く宇宙海賊。宇宙船から放たれた強力なビームがワタガシを溶かし、倒した。
ちんすこうのレベルが上がった!
「まだまだいくぞー!」
次のワタガシを求めて操縦桿を倒すちんすこう。気が済むまでワタガシを倒し尽くすつもりである。
「……これはこれで有りですわね」
思い通りにはいかなかったが、サーターアンダギーはちんすこうの切り替えの早さに感心するのだった。
◇◆◇
一方その頃、スヴァルトアールヴヘイムのとある町でメカニックとしてのスキルを磨くプレイヤーがいた。その名は愛玉子。MMOではこのように非戦闘系のプレイを楽しむプレイヤーも少なくない。そして大抵、そういうスキルは重宝されるものであった。
「よしよし、改造スキルも上がってきたしそろそろ改造拠点を探そうかね」
黒髪の両側に付けた団子ヘアを揺らし、満足気に笑う少女であった。
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