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ちんすこうはワタガシを大量に消し去ってレベルを上げた。宇宙海賊というよりデストロイヤーである。
「それではクエストも発生しましたので拠点のボスを倒しに行きましょう」
サーターアンダギーが告げると、宇宙船は宇宙怪獣がねぐらにしている拠点へと向かう。
「言っておきますが、宇宙船で攻撃したら拠点も壊れますわよ」
「なんですとー!?」
ナビゲーターの冷静なツッコミに驚愕するデストロイヤー。そこは驚くところではない。
「くっ、仕方ない」
渋々近くに着陸すると、拠点の様子をうかがう。するとちんすこうの背後から声をかけてくる者がいた。
「おー、あんたも拠点をとりに来たのかい?」
振り返ると、そこにいたのは『愛玉子』という名前を浮かべたプレイヤーだった。
「……あい……たまご?」
「オーギョーチーだよ! まあ、そんなに有名でもないからね」
気を悪くする様子もなく、ウンウンとうなずく愛玉子をちんすこうはジロジロとなめ回すように観察する。
「?」
その視線は、身体のある一点で止まった。そこにあるのは、お世辞にも大きいとは言えないなだらかな二つの膨らみ。何かに満足したように大きくうなずくと、ガシッと握手をするちんすこうだった。
「そこで仲間判定すんな!」
鋭いツッコミである。だが愛玉子はそれでも笑顔を見せた。
「面白い奴だなぁ。どうだい? これも何かの縁だ、一緒にパーティーを組まないか?」
メカニックである彼女は、戦闘系の仲間を必要としていた。ちんすこうも宇宙船を強化するためにメカニックを必要とするため、これはお互い渡りに船というやつだ。
「ちょうどいいですわね。でもちんすこうさんはおたずね者でしてよ?」
悪党である。愛玉子はもちろん悪事を働いた事などない。
「おたずね者? あはは、あんたも変わったプレイが好きなタイプか。いいぜ、一緒に悪の道を極めよう。どうせ仮想空間なんだ、現実じゃ出来ない事をしないとね」
「よろしくね、愛玉子!」
(また夢で見た子だ。やっぱり、これは絶対何か秘密がある!)
ちんすこうは意外にちゃんと考えていた。
「さて、それじゃさっさと拠点を奪おうか」
愛玉子はニヤリと笑うと、懐から何かを取り出した。
「何それ?」
(嫌な予感がしますわ)
サーターアンダギーの不安をよそに、アイテムの説明を始める。
「こいつはM24型柄付手榴弾。通称ポテトマッシャーだ。この紐を引くと3秒後に爆発するぞ」
「おおー!!」
愛玉子の説明に目を輝かせるデストロイヤー。
「拠点が壊れますわよ?」
サーターアンダギーの言葉にメカニックは不敵な笑みを返した。
「大丈夫さ、多少壊れてもアタシがスキルで直すからね」
単に修理スキルを使いたいだけである。
(ああ、似た者同士が出会ってしまったのですわね)
「「行くぞー!」」
二人は声を合わせ、芋ならぬ宇宙怪獣を潰しにかかるのだった。
「グギャアアア!?(名前も出ないうちにやられた!?)」
「いえーい、勝利!」
「やったな! 早速宇宙船を見せろ、さあ見せろ!」
名前も出ずにやられた哀れな宇宙怪獣が消え去るのも見届けないではしゃぐ二人。どうやら出会ってはいけない二人が出会ってしまったようだ。
宇宙の未来が危ない!