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本橋家に戻ってきた、恵菜と純。
彼が駐車スペースに止めてある、ロイヤルブルーのSUV車にエンジンを掛けると、物音に気付いたのか、玄関から豪と奈美が出てきた。
「あれ? 純と相沢さん、まだ帰ってなかったのか?」
「いや、それがさ……」
彼は、恵菜の自宅に到着する直前、元夫の勇人が彼女の自宅前に車で乗り付け、待ち伏せしていた事を話した。
「…………とんでもないゲス野郎だな……。俺まで頭に来たわ……」
豪が怒りの色を孕ませながら、掠れた声音で言い放った。
以前、奈美の夫は、元恋人にストーカー行為をされた経験があり、散々な目に遭ったらしく、後に元カノは逮捕されたらしい。
「早瀬くん…………自分が不倫して離婚を突き付けられたのに、まだ恵菜を追い回して……最低……」
アーモンドアイを、キッと吊り上げる奈美。
「ストーカーなんてやるヤツは、野郎でも女でも、一生収監されてろ」
当時の事を思い出したのか、豪は、汚いものを吐き出すように言い捨てた。
「恵菜。早瀬くんが、実家にまた来る可能性は高いよ。何かあったら、うちに来なよ?」
虚ろげな面差しの恵菜に気付いた奈美が、小さな肩にポンッと手を添えながら励ます。
「ああ。近所だし、奈美の親友だし、うちはいつ来ても大丈夫だから」
豪も恵菜を後押しすると、彼女は二人に『ありがとうございます』と呟き、頭を下げた。
恵菜と純は彼の愛車に乗り込み、シートベルトを装着させると、運転席の窓を開ける。
「じゃあ俺、相沢さんを送って帰るわ。またな」
「おうっ。二人とも気を付けてな」
「谷岡さん、恵菜、気を付けて」
「奈美、旦那さん、ありがとうございました」
ひと通り挨拶を交わし、純がゆっくりと車を発進させると、恵菜も本橋夫妻にペコリと頭を下げた。
「まだ相沢さんの自宅にヤツがいるかもしれないし、ひとまず、コンビニに寄ろうか」
ステアリングを握りながら、前方を見やる純に声を掛けられる。
「はい」
車は府中街道を南下していき、広い駐車場のコンビニエンスストアへ立ち寄った。