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Hayato side
「…じんと…!じん、…と!」
走っていて上手く声が出せない
でも、仁人は俺が呼んだら気付いてくれるはずだから
「はやと…?」
ある部屋を通りすぎようとした時、小さな声が聞こえた
「仁人!」
扉を開けると青白く能面みたいな顔をした仁人がいた
感情も、体温も何も感じない
呼吸はしているらしいことはかろうじてわかった
「…仁人、俺、周りも、仁人も、自分もちゃんと見えてなかった」
少しずつ仁人に近付いていく
「…気付かなくて、…いや、気付かない振りをしてごめん」
正面から仁人を抱き締めて耳元でささやく
「…仁人、ブレーキ、踏んで」
ビクッと体が跳ねて力がこもったが、抱き締め続けると少しずつ力が抜けていく
今は、よく知っている、でもこれ以上辛いことなんてないみたいな、痛々しい表情だった
「…仕事は全部していい。それを大事にしてるのを、俺は知ってる。…でも、少し、少しでいいから…はやとの方法でいいから…」
震える声を絞り出すように、こんなに追い詰められているのに、俺を想って言葉を選んで紡ぐ仁人
「…休んで…」
最後はほとんど声になっていなかった
でも、しっかり耳に届いた
寝ているとは言いながら、連日、数時間も眠れていないこと、休んでなんかいない事はお見通しだったんだ
「…仁人がそばにいてくれる?それとも一緒に寝るか」
冗談ぽく言いながら少し体を離して顔を覗き込む
きっと、俺が眠るのを見届けて安心するはずだから
「…見とく…」
少しだけ口角が上がった仁人に笑いかける
そういう仁人だって眠れてないんでしょ
心配かけてごめん