テラーノベル
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「……いつも、すぐに結果を求めるなと言っているだろ?」
尊さんの言葉は、真冬の陽だまりのように優しく
それでいて俺の甘えや焦りを射抜くような鋭さがあった。
「結果……」
「どうしてそんなに自信がないのか、俺には不思議なくらいだ。まずお前も俺も、そんな変わらないだろ」
「え……?」
何を言っているのか分からず、きょとんとしてしまう。
「お前にトラウマの元凶である彼氏がいるように、俺にも薫という名のトラウマのケーキがいる。忘れたか?」
「……っ」
「お前は、俺を薫から何度も守ってくれてるだろ」
「そんな、俺はなにも……ただ、傍にいただけです」
「花火大会のことで、お前は自分のせいじゃないのに責任を感じていた。それなのに、俺を励まそうと旅行まで計画してくれた。会社の前で薫と遭遇した時もそうだ。お前は震えながらも、俺を守るように前に出ただろう」
「そ、それは……体が勝手にというか、守らなきゃって思っただけで……!」
「この前だってそうだ。薫を見つけて、無茶をせずにちゃんと俺に報告してくれた。そのおかげで、俺はアイツと鉢合わずに済んだんだ。それがどれほど俺を救ったか、わかっているのか?」
「でも……!そんなの、俺にできる最低限のことをしただけで。亮太さんを前にした時みたいの尊さんのように、完璧に守れてるわけじゃ……っ」
「完璧じゃなくていいんだよ」
尊さんの声が、さらに一段優しさを増す。
「完璧に誰かを守りきれる人間なんて、この世にいない。もし俺が完璧なら、お前に怪我なんてさせていないはずだ」
「尊さん……」
「俺だって、自分の背丈を超えるような敵に、力だけで勝てる技量があるわけじゃない。たとえば、お前を力ずくで攫おうとする奴がいたら、俺が勝てるかどうかは正直微妙なところだ」
尊さんがそんな弱音を口にするなんて思わなくて、言葉を失う。
「だからこそ、俺に合った武器や防具を用意し、備える必要がある。それと同じだ、恋」
「それと……同じ……?」
「そうだ。お前には、お前だけの武器がある。守り方なんて、何でもいいんだ。影で支えるだけでもいい。危険をいち早く回避できるように相談し合うだけでもいい。真正面から敵を潰しに行くことだけが『守る』ことじゃない」
尊さんの言葉が、一滴の雫となって、乾ききった俺の胸に波紋を広げていく。
「……俺でも、尊さんのこと、支えられてるって……思ってもいいんですか……?」
「ああ。なにより、俺はそう思ってる」
ずっと自分を覆っていた暗い雲が、尊さんの言葉という風に吹き流されていく。
手元のココアに映る自分の顔は、まだ少し情けないけれど、さっきよりずっと柔らかい表情をしていた。
「だから、自分を情けないなんて思うな。お前は充分すぎるくらい、俺を守ってくれてる」
胸の奥が熱くなり、鼻の奥がツンとする。
コメント
1件
お互いのこと、守りあってるんだよな、、 最高なふたりだ(*´꒫`*)