テラーノベル
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拓海くんが帰省してきたことと、少し前に大阪に帰ってしまったことはレイに伝えていた。
だけどレイはこのところ以前にも増して忙しいらしく、やりとりは続かない。
いろんな試験がずっと続いていること。
バイトも始めたこと。
あとお父さんと揉めていることを、少しだけ聞いていた。
お父さんのことは一番心配だった。
何度「大丈夫?」と聞いても、レイは多くを話さない。
「大丈夫、落ち着いたら連絡する」と言われたきり、その連絡はまだなかった。
私は私で、1月中にけい子さんが紹介してくれた、英会話教室の就職試験があった。
その理事をしている山口さんから、内定の連絡をもらったのが2月。
同じ頃、杏と佐藤くんも無事志望大学に合格していた。
もう学校は自由登校で、杏と久々に会った時、卒業旅行の話が持ち上がった。
「ねぇ澪。
澪は卒業旅行どうするー?」
「あぁ、あのね。
私……ロサンゼルスに行こうと思うの」
ハンバーガーショップで打ち明けた私に、杏は一瞬目を開いて、それから大きく頷いてくれた。
「……そうだったんだ! ……うん、それがいいよ!!
実は澪とどこか行きたいと思ってたけど、レイさんに会いに行くんだったら応援するよ!
頑張れ澪!!」
杏はそれから旅行会社に私を連れて行ってくれた。
パンフレットをもらって、自分のことみたいに、どこが安いか比較してくれる。
本当、杏には感謝しても感謝しきれない。
ふたりでさんざん比べた結果、一番旅費を安くあげても、わたしの貯金が底をつくことが判明した。
(これは……バイトもしなきゃいけないなぁ)
そう思ったけど、ロサンゼルスのパンフレットをいくつも見ていると、レイに近付ける実感がして嬉しい。
その夜、久々にレイからメールが届いた。
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澪へ。
最近連絡できてなかったけど、元気にしてる?
俺はようやく少し落ち着いて、父親とも話がついたよ。
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(レイ……!)
私はメールを見た瞬間、勢いよくベッドに転がった。
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元気だよ。
お父さんのこと、よかった!
私もちょうどレイに連絡しようと思ってたんだ。
3月にL・Aに行こうと思ってるの。
今日旅行会社でパンフレットもらってきたんだ。
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今なら話せるかと、急いで返信した。
だけど、待ってもそれから連絡はこない。
ずっとそわそわしていたけど、待ちくたびれてうとうとしていた明け方、メールが入った。
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それって、俺に会いに?
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私はメールに気付いて飛び起きた。
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もちろんだよ!
早くL・Aに行って、レイに会いたい。
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スマホを握ったまま返事を待っていると、メールが届いた。
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ごめん。
3月は予定が立て込んでて、澪に会えるかどうかわからないんだ。
だから……。
いろいろと落ち着いたら、俺から会いに行くよ。
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飛びついたのに、思いがけない返事だった。
嬉しいよ、とか。
待ってるよ、とか。
勝手だけど、そう言ってくれるんだと思っていた。
本当に勝手だけど、ロサンゼルスのパンフレットを見たせいで、ビーチをレイと歩く想像だってしていた。
なのに―――。
私に「わかった」と言ってほしいんだろう。
レイは会いに行くと言ってくれてるんだし、彼には彼の生活があることもわかっている。
だけど―――。
会いに来てくれるとして、それっていつになるの?
現実になるかもわからない、先の約束なんてほしくなかった。
私は今すぐにでもレイに会いたい。
だから自分から会い行こうとしてるのに。
ショックで返事ができなかった。
放心しているところに、レイからメールが届く。
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だから、それまで待ってて。
澪、好きだよ。
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それを読んで、私の中でなにかが切れた。
わかってない。
レイは私の気持ち、全然わかってない。
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待ってるのが辛いから、会いに行くって言ってるんだよ。
もういい。レイなんて知らない!
勝手に会いに行くから!!
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