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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「だけどこれからは本気にさせ合うんだから、ちゃんと名前で呼ぶ練習しないと。早瀬くんじゃ色気なさすぎでしょ」

「じゃあ、ちゃんと仕事以外では呼ぶようにする!」


なのでもう放してください。


「ダーメ。絶対呼ばないじゃん。二人の時は会社でもちゃんと呼んで、プライベートでも呼べるように、ちゃんと慣れていってもらわないと♪」


うー悪魔。


「こんなことで恥ずかしいとか可愛すぎて、それ以上にここで恥ずかしいことしちゃってもいいんだけど?」

「はっ!?何考えてんの!わかった!わかったから!ちゃんと呼ぶようにする・・・」


このやり取り前もやったよな・・・。


「じゃあ。あの時みたいに”放して、樹”って色っぽく言ってくれたら放してあげる」


いやいや。

余計ハードルあげられてるんですけど。

でも何度も今までもこのやり取り繰り返してるから、もうなんとなくわかる。

コイツは自分が納得するまで絶対やめない。

で、結局こうやって上手く乗せられちゃうんだよな。

でも仕方ない・・・。


「・・・ハナシテ。イツキ」


結局また自分が折れて望むように言うしかない。

どうだ。この棒読み。


「何その棒読み。え、今ここでチューしてほしい?」

「いや!いい!!ごめん!ちゃんと言います!」


くそー。この手効かないか。


「ちゃんと色っぽくね♪」


くそー。またこの悪魔の微笑み。

どんどんこの悪魔っぷりがパワーアップしていきそうでなんかコワイんですけど。


「放して? 樹・・」


どうだ。ちゃんと色っぽく言ってやったんだから、早く放せ。


「・・・ねぇ、やっぱチューしていい?」

「はっ!?ちゃんと言ったじゃん!」


なんでそうなる!


「え~だってさっきよりもっと可愛くてチューしたくなった」

「バ、バカじゃないの!ほら!早く放す!」


この人は私を照れさせる天才かもしれない。

会社でもこんなドキドキさせられると寿命が足りなくなる。


「じゃあ続きは帰ってからね♪」


そう言いながらようやく解放される手。

やっぱりこの子、女慣れしすぎ。

だけど、そんな手にまんまとドキドキしてしまってる私も私だ。


「じゃ、じゃあ、打ち合わせこれで終わって大丈夫?」

「いいよ~」

「じゃ、じゃあ、また」


もうこれ以上一緒にいたらまた振り回されそうな気がするから早く本来の仕事に戻ろ。


その場から立って会議室のドアまで向かう。


「あっ、そうだ」

「今度は何?」


ドアまで向かっているとまた何か言いたそうに呟かれたので、とりあえず背中越しに振り向かず返事だけする。


「昨日はありがとう」

「え?」


今度は急に真面目な声でまた昨日聞いたような優しい声をかけられる。

つい反応して後ろを振り返る。


「昨日ホント、ウマかった」


今度はさっきと違う優しい微笑み。

そのギャップ・・ずるい。


「何・・今更」

「ごめん。言うの後になって」


そんなことで謝らなくていいのに。

やっぱりこの人、根は真面目なんだ。


「そんなの別にいいのに・・」

「でも、オレの為に初めて手料理作ってもらえてホント嬉しかったから」


この人はこうやって照れるようなことも嬉しくなることも抵抗なく自然に素直に伝えてくれる。

なのに、私はいつも照れたり戸惑ったりで、こんな風に素直に伝えられていないような気がする。


「またいつでも食べに来て」


だから、せめていつもよりかは笑顔で。

少しずつ素直になっていかなきゃな。



「・・・今日は?早い?残業?」

「あ~。今日はちょっと遅めかも」

「そっか。じゃあ今日は諦めるか」


私の今日は帰りが遅くなるという言葉を聞いて残念そうに呟く。


「ごめんね・・」


残念そうにしてるのを見て申し訳なく感じてつい謝ってしまう。


「なんで謝んの。オレが勝手に食べたかっただけだし。気にせず仕事頑張って」


だけど彼は笑って励ましてくれる。


「ありがと。じゃあまた」

「また」


会議室を出て一度深呼吸して気持ちを落ち着かせる。


会議室で二人だけだとはいえ、やっぱり職場だと調子狂う。

からかってきたと思えば、急に真面目になったり優しくなったり。

そんな彼の一つ一つに反応して、その度に心臓がうるさくて。


彼がどこまで遊びで楽しんで、どこから本気なのかも、やっぱりまだわからないけど。

自分の気持ちも、もう気付いているような、だけど認めたくないような。

自分で結局まだどうしたいかもわからないから。

だから、きっと自分で自分の気持ちもハッキリとわかる時が来るまで。

彼がこの関係をハッキリ言葉にして変えてくれない限りは。

きっとずっとこんな感じのままなのかもしれない。


だけど、いつまでも中途半端な自分のままで振り回されてるままではいたくないから。

こんなんじゃ結局昔の自分と変わらない。

恋愛に振り回される自分はもう卒業したんだから。

結局この関係がどうなっていくかはわからないけど。


でも、結果がどんなカタチになっても、私は私だ。

どんな結果になったとしても、その時に胸を張って好きでいれる自分でいたい。

仕事も恋愛も、どんな時も。

どんな結果になって、どんな未来が待っていても。

自分は頑張ったんだと、そんな今の自分が好きなんだと、ちゃんとそう思える人生を歩んで行きたい。






本気になってはいけない恋

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