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物語の作り方が天才すぎます‼️💖一話一話の終わり方も続きが気になるような終わり方で、ついつい気になって寝れなくなってしまいます😇💖
「いい加減、辞めさせてください」
掠れた声が、静まり返った部屋に響く。
薄暗い、いつもの場所
いつものように、感情の欠片も見せない男が俺の目の前に座っている
この部屋に来て、この男に頭を下げて、この言葉を口にするのは、これで何度目だったか。
五回か、十回か。もう数える気にもなれない。
「どうしてお前はそんなにスパイを辞めたいんだ」
その問いかけも、聞き飽きた定型句だ。
何度「もう疲れたんです」「人の命を弄ぶことに耐えられない」「普通の生活が送りたい」と心の中で叫んだだろう。
だが、それをこの男に直接ぶつけたところで
何かが変わるわけではない。
この男にとって、俺たちは駒であり
道具でしかないのだから。
感情など、必要ない。
辞めたい理由なんて、山ほどある。
いつ死ぬかも分からない日々。
心を殺して標的に近づき、利用し、そして消す。その繰り返し。
夜中に目が覚めれば、ターゲットだった奴らの顔が浮かぶ。
良心の呵轢なんてものは、とうの昔に置いてきたはずだった。
なのに、体は、心は、確実に悲鳴を上げていた。
このままでは、人間でなくなってしまう。
いや、もうとっくになっているのかもしれない。
「……もう、限界なんです」
絞り出すように、最低限の言葉だけを返す。
これ以上饒舌に語ることは、この男の前では弱さを見せることに他ならない。
上司は何も言わず、ただ俺を観察するようにじっと見つめていた。
その瞳の奥には、何も映っていないように見える。
だが、その静けさこそが、この男の持つ底知れない冷酷さと権力を物語っていた。
辞めたいという俺の願いなど、この男にとっては取るに足らない、些末な問題なのだろう。
どうすればこの「駒」を最後まで効率よく使い潰せるか、それだけを考えているのだ。
やがて、長い沈黙の後
上司はフッと鼻で笑ったように見えた。
それは嘲りとも、憐憫ともつかない
無機質な反応だった。
「いいだろう」
思いがけない言葉に、俺は一瞬、息を止めた。本当に? まさか、こんなにあっさり──。
「ただし、最後に一つ、簡単な仕事を片付けてもらう」
やはり、そう来たか。安堵など、一瞬たりとも許されない。
この男の言う「簡単」が何を意味するか、俺はよく知っている。
テーブルの上に、一枚の写真が滑らされた。
朱鷺原 碧。人の良さそうな笑顔。
それが、俺の最後の標的。
上司は、まるで天気でも話すかのように淡々と告げた。
「足を洗いたきゃ、最期にこいつを殺してこい」
それが、自由への条件。
写真の男に、俺の未来がかかっている。
「奴は口が上手い。油断するな」
口が上手い、か。
つまり、懐に入り込むのは難しいかもしれないが、一度入ってしまえば、逆に利用される危険もある、ということだろうか。
警戒しろ、という指示だ。
次の瞬間、上司の冷たい目が、俺の目を射抜いた。
「万が一にも、殺し損ねて帰ってきてみろ、その時は……お前を、裏切り者として処分するからな」
その言葉が、鉛のように俺の心に突き刺さった。
裏切り者としての処分。
失敗すれば、待っているのは死よりも残酷な末路だ。
後戻りはできない。
成功して自由を手に入れるか、失敗して全てを失うか。
選べる道は、ただ一つ。
朱鷺原 碧を殺し、生きて帰る。
「……承知いたしました」
感情のこもらない声で、俺は応じた。
167
狐&鈴空
39
#巫女
とりぴぃ〜
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他に言葉はなかった。
反論も、怯えを見せることも許されない。
上司は満足そうに、あるいは無関心に、わずかに顎を引いた。
下がっていい、という合図だ。
俺は一礼し、踵を返した。
部屋を出て、重い扉が閉まる音を聞きながら、薄暗い廊下を歩き出す。
体は冷たいが、内側では静かな炎が燃え始めていた。
これが最後の任務
この仕事さえ片付ければ、俺は自由だ。
長年夢見てきた、血と硝煙とは無縁の
普通の人生が手に入る。
その思いだけが、俺を突き動かしていた。
朱鷺原 碧。お前は俺の自由への鍵だ。
ターゲットの情報は最小限だった。
口が上手い、という漠然とした特徴と、いくつかの個人情報。
だが、スパイとして培った技術と経験があれば
懐に潜り込むのは不可能ではない
そう自分に言い聞かせた。
数日後
俺は朱鷺原 碧の住むマンションに新たな隣人として潜入していた。
接触は計画通りに進んだ。
偶然を装って声をかけ
山内健という偽名を使って挨拶を交わし
すぐに俺たちは「お隣さん」として親しくなった。
碧は写真で見た通りの
いや、写真以上に穏やかで優しい雰囲気を持つ男だった。
笑顔は人懐こく、話術に長けているというのは確かだったが
警戒すべき「口の上手さ」というよりは、自然と人を惹きつける魅力といった方が近かった。
一緒に飯を食う機会が増え、世間話をし
時にはくだらない冗談で笑い合った。
ターゲットとの距離は順調に縮まっていった。
飯友、と呼べるほどに。
組織への報告も、順調に進んでいると伝えていた。
潜入は成功。
あとは、頃合いを見計らって──。
その時が来た、と思ったのは
隣人になってから数週間が経った頃だった。
ある日の晩
いつものように、俺は碧の部屋で夕食を共にしていた。