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遥 ℎ𝑎𝑟𝑢𝑘𝑎
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第四十六章 今日のラッキーアイテム
傘に打ちつける雨音が激しさを増し、行き交う人の傘の波が色とりどりに染まって綺麗だった。足元に跳ね返る雨だけが煩わしく感じた。
大介🩷「もっとこっち寄りな。濡れるだろっ」
翔太💙「僕は大丈夫です。佐久間さんこそ、風邪引いたら大変ですから」
俺の肩を引き寄せた佐久間さんの手は力強くて、腰骨が当たるほど密着した身体は少し熱を帯びていた。思わず、慌てて距離を取る。
大介🩷「雪うさぎ濡れちゃってもいいの?」
翔太💙「……えっ、だめっ」
慌てて佐久間さんの腰を掴むと、抱き付くように密着した。
それに応じるように肩を抱かれて、ドキドキ鳴る心音を聞かれちゃったらどうしよう。
そう思えば思うほど、胸は高鳴って頬が熱くなる。
熱くなった頬へ、雨に濡れた指先を当てる。
ひんやりして気持ちよかった。
後方を歩く長身の二人組。
そのうちの一人が大きく舌打ちすると、もう一人が慌てたように脇腹を小突いていた。
翔太💙「なんだか後ろの二人、お似合いですね」
大介🩷「あ?確かにな……付き合ってんじゃねえの。俺らもあんな風に見えなくもないだろ」
蓮🖤「……チッ」
――ミシッ。
亮平💚「あ」
蓮🖤「……は?」
黒い傘の骨が、ゆっくり嫌な音を立てて歪む。
亮平💚「いやいやいや待って」
――バキッ。
蓮🖤「…………」
亮平💚「壊した」
風に煽られた黒い布が、無惨に裏返る。
通行人がぎょっとして振り返った。
「えっ今折れた!?」
「こわ……」
蓮は無言のまま、壊れた傘を見下ろしている。
亮平💚「何その顔。可哀想に……傘に謝りなさい」
蓮🖤「うるせぇ」
雨粒が容赦なく肩を濡らしていく。
その時。
亮平💚「……ほら」
透明傘が、静かに傾いた。
亮平💚「入れば?」
蓮🖤「…………」
亮平💚「ラッキーアイテム……でしょ?」
蓮🖤「……チッ」
亮平💚「舌打ちしてる奴が幸運来るわけないじゃん」
渋々、透明傘へ身体を入れる蓮。
けれど長身の男二人が入るには狭すぎて、肩と肩が不自然にぶつかる。
亮平💚「近……」
蓮🖤「お前が寄ってんだろ」
亮平💚「は??」
数メートル先。
翔太💙「やっぱ付き合ってますよね、あの二人」
大介🩷「確定だな」
雨脚はさらに強くなっていた。
アスファルトへ落ちた雨粒が、街灯の光を滲ませながら細かく跳ねる。
閉店間際のカフェ。
ネオンを滲ませる水溜まり。
傘同士がぶつかるたび、夜の街が窮屈そうに揺れて見えた。
翔太💙「わっ」
足元で跳ねた雨水に小さく肩を竦める翔太。
その瞬間、佐久間が当たり前みたいにまた肩を抱き寄せた。
大介🩷「だからちゃんと入れって」
翔太💙「だって狭いですもん」
大介🩷「オレは役得」
翔太💙「もう……」
困ったように笑う声。
その笑顔を見た瞬間。
後方。
――ミシッ。
亮平💚「待ってまた鳴った」
蓮🖤「うるせぇ」
亮平💚「いや今の完全に骨いった音。買ったばっかなんだから壊さないでよね。俺が持つから……あっ」
重なる二人の手と手。
蓮 🖤「――あっじゃねぇんだよ。変な空気にするなよ」
亮平💚「やだぁ昔思い出しちゃった」
蓮 🖤「やめろ」
透明傘の下で肩を押し合う男二人。
翔太は楽しそうに夜道を見上げた。
翔太💙「雨の街って、なんか綺麗ですね」
大介🩷「ロマンチスト?」
翔太💙「違いますよ」
くすくす笑う。
濡れた睫毛。
街灯に照らされた横顔。
白い吐息。
それを隣で見つめながら、
佐久間は小さく目を細めた。
大介🩷「……誘って正解だった」
翔太💙「え?」
大介🩷「なんでもない」
数メートル後ろ。
蓮🖤「…………」
亮平💚「顔怖」
蓮🖤「うるせぇ」
亮平💚「いやもう佐久間さん刺しそう」
しばらく歩いた先。
雨に濡れた石畳の奥へ、背の高いマンションが見えてきた。
エントランスのガラスへ映る自分達の姿に、翔太は小さく目を丸くする。
同じ傘の下。
肩を抱かれるように並ぶ距離は、どう見ても恋人みたいだった。
翔太💙「……わ」
大介🩷「ん?」
翔太💙「いや、なんでもないです」
慌てて視線を逸らす。
けれどエレベーターの鏡へ映る距離まで近くて、余計に心臓がうるさくなった。
静かな上昇音。
雨音だけが遠ざかっていく。
濡れた服。
熱を持った肩。
ふわりと香る香水。
狭い箱の中、佐久間と二人きりという状況が妙に落ち着かない。
大介🩷「緊張してる?」
翔太💙「してませんっ」
即答した瞬間、ふっと笑われた。
大介🩷「顔真っ赤」
翔太💙「うそっ!?」
思わず頬を押さえる。
その反応すら面白そうに見つめながら、佐久間は静かに目を細めた。
一方その頃。
マンション前。
亮平💚「……で?」
蓮🖤「…………」
自動ドアを見上げる二人。
オートロック。
無慈悲だった。
亮平💚「終わったじゃん」
蓮🖤「壊すか」
亮平💚「犯罪者思考やめて?」
蓮🖤「あいつ今、二人きりだぞ」
亮平💚「知ってる」
蓮🖤「クソ」
再び舌打ち。
透明傘へ叩きつける雨音だけが虚しく響く。
数階上。
灯りの点いた一室を見上げながら、亮平は小さく息を吐いた。
数秒の沈黙。
その時。
亮平💚「……あ」
コンビニ袋から、ぐしゃりと曲がった雑誌を取り出す。
蓮🖤「なんだそれ」
亮平💚「あんたが壊したやつ」
背表紙が不自然に折れた雑誌を、人差し指で軽く弾く。
ペラッ。
開いた最後のページ。
亮平💚「ほら蓮、ここ見て見て」
蓮🖤「……?」
5月の占いコーナー。
亮平💚「俺のラッキーアイテム、使えると思わない?」
蓮🖤「は?」
亮平は意味深に笑っただけだった。
カーテンの隙間から外を眺めた。高層マンションの窓に打ちつける雨は線を帯びて窓を流れ、数メートル先の視界は白く霧で覆われて景色は見えなかった。
なんだか無性に寂しくなって、ギュッと握りしめた雪うさぎのぬいぐるみが悲鳴を上げた。
大介🩷「痛いよぉ〜もっと優しく抱いてよ〜」
翔太💙「わっごめんねうさちゃん……って佐久間さん!」
大介🩷「きっとそう言ってるぞ!頭拭いて、適当にその辺に座れ」
くしゃくしゃっと頭を乱暴に撫でた佐久間は、ふかふかのタオルを翔太に差し出すと、ソファにどかっと座った。よく見ると佐久間の方が頭から下までずぶ濡れで、翔太は慌てて駆け寄った。
翔太💙「今すぐ服脱いでください。風邪引いたら大変。お風呂沸かしてきますから」
大介🩷「……真面目だなぁ」
翔太💙「当たり前です」
洗面所へ向かおうとした瞬間。
ぐいっ。
翔太💙「わっ」
腕を掴まれ、そのままソファへ引き戻される。
大介🩷「それより先に、オレのこと見ろよ看護師さん」
翔太💙「……え」
濡れた前髪。
近すぎる距離。
ソファへ沈み込んだ身体の横へ、佐久間の腕が落ちる。
うっとりと愛おしそうに翔太を見つめる。雨に濡れた翔太の頰を撫でると首元に顔を埋め、唇を押し当てた。
翔太💙「ンンンッ……さっ……さくまさんっ!」
〝にゃぁ〜にゃぁ〜〟
大介🩷「あっ」
翔太💙「えっ///」
〝にゃぁ〜にゃぁ〜〟
大介🩷「あはっ」
翔太💙「えへっ///」
大介🩷「……お前タイミング良すぎだろ」
〝にゃ〜ん〟
キャリーケースの隙間から三毛猫がのそのそ顔を出す。
翔太💙「かわいい……」
大介🩷「オレ今いいとこだったんだけど?」
翔太💙「し、知りませんっ」
キャリーケースから二匹を出すと、嬉しそうに佐久間さんの足に纏わりついて離れなかった。
翔太💙「家族……なんですね」
大介🩷「おう、当たり前だ」
自然と雪うさぎを握りしめる手に力が入った。〝また苦しそうだぞ〟と佐久間さんに言われるまで気付かなかった。
翔太💙「ごめんねウサちゃん」
大介🩷「違げぇよ……苦しいのはお前の方……ほらこっちこいよ。頭拭いてやるから」
ソファに座る佐久間さんの前に、ちょこんと膝を抱えて座ると、柔軟剤の匂いがふわりと香って、優しく頬を撫でた。なんだか張り詰めていたものがふっと解けるようで、押し寄せた睡魔に思わず佐久間さんの股の間に頭をもたげて目を閉じた。
大介🩷「オマエ……無防備すぎるんだよ」
翔太💙「ん?……さくまさん?」
おでこに柔らかい唇が押し当てられて、次に逆さまの顔のまま佐久間さんの唇が近付いてきた。
逃げ道が、ない。
大介🩷「今日ずっと可愛すぎて、結構我慢してんだけど」
翔太💙「さ、佐久間さん……?」
心臓が跳ねる。
怖いわけじゃない。
でも、知らない熱が身体の奥をじわじわ溶かしていくみたいで、息がうまく吸えなかった。
大介🩷「お前こそびしょびしょじゃねぇか……服脱げよ」
翔太💙「ちょっ……佐久間さんこそ脱いでください!こらっ ちょっとやめてください自分で脱げますから」
広いリビングに上裸の男が二人。
異様な光景だった。
その瞬間。
――ピンポーン。
部屋中へ響く、インターホン。
大介🩷「……ん?」
翔太💙「?」
間の悪すぎる来客に、佐久間が盛大に顔をしかめながら、インターホンを覗き込んだ。
大介🩷「おっUber来たぞ、早えぇなぁ」
大介🩷「どーぞ」
ガチャ。
黒いキャップを深く被った男が、無言でピザを差し出した。
「…………」
大介🩷「?」
妙にデカい。
というか圧がすごい。
後ろには、透明傘を持ったもう一人の男。
配達員💚「ご注文のピザでーす」
配達員🖤「…………」
大介🩷「いやいや、これはさすがにストー……」
配達員💚「はぁ?見るからにUberだろっ早く受け取れこの変態。あの子に手出したらただじゃ済まないから……あと服着ろ!へんたい」
翔太💙「ねぇ、ピザの他にもパスタ頼んでいい?」
リビングの柱からひょこっと顔を出した翔太の可愛らしい姿に一瞬、蓮と亮平の表情が華やぐ。しかし、次の瞬間には顔がくぐもり怪訝な顔になった。
配達員🖤「服を着ろ……バカモノ」
翔太💙「ん?なぁに佐久間さんなんか言った?」
腹を抱えて笑う佐久間を他所に殺気立つ二人の男。
ミシミシと悲鳴をあげる透明傘。
大介🩷「好きな物頼みな。今夜は長くなりそうだから」
――バキッ
配達員💚「あんたなにすんのさ……買ったばかりなのに」
配達員🖤「あっ……戻るぞパスタの注文入ったぞ」
配達員💚「は?」
配達員🖤「追加注文だろ」
翔太💙「あ、はい!カルボナーラ食べたいです!」
配達員💚「……はぁ?」
大介🩷「頼んどけ頼んどけ。お前腹減るとうるせぇし」
翔太💙「えへへ///」
配達員🖤「…………」
無言のまま、ぐしゃりとピザ箱の端が凹む。
配達員💚「ちょっ、力!!力加減!!」
大介🩷「低評価つけんぞ」
配達員💚「うるさい客だなほんと」
翔太💙「すみません〜」
ぺこっと頭を下げる翔太に、二人の配達員は一瞬だけ押し黙った。
配達員💚「……じゃ、また二十分後くらいに」
大介🩷「来なくていい」
配達員🖤「…………」
低い声。
配達員🖤「ちゃんと見てるからな」
大介🩷「……は?」
一瞬だけ、空気が凍った。
黒いキャップの奥。
鋭く細められた目だけが、真っ直ぐ佐久間を射抜いている。
配達員💚「あーはいはい!お客様〜!またのご利用お願いしまーす!」
バタンッ。
勢いよく扉が閉まる。
数秒の沈黙。
翔太💙「……今の人、なんか怖かったですね?」
大介🩷「……だろ?」
翔太💙「?」
佐久間だけが、静かに笑っていた。
翔太💙「ふふっ……負けませんからね」
大介🩷「は?何が」
翔太💙「UNOですよ。今夜は長くなりそうって言ってたじゃないですか〜新人ナースの名にかけて、必ず佐久間さんを早く寝かしつけて見せます!」
小さな拳でドンと胸を叩いた翔太。
頭を抱えた佐久間を〝頭痛いですか?横になります?〟と言ってソファに促した。
大介🩷「お前には敵わないよ……少し疲れたな」
翔太💙「頭よしよししましょうか?」
大介🩷「――はぁ、勘弁してよ」
――ピンポーン。
けたたましくなるインターホン。
降り続いた雨は漸く止み、玄関扉の前に出来た水溜りが二つ。乾き切る前に現れた、長身の男二人に、再び大きなため息をついた佐久間。
配達員🖤「早く服を着ろと言っている」
配達員💚「カルボナーラのお届けで〜す」
翔太💙「わーい」
――ぽっ。
ガチャリと閉まった扉。
廊下の向こう。
「……だから言ったじゃん。今日のラッキーアイテム」
「うるせぇ」
二人の声が、閉まった扉の向こうへ消えていった。
亮平💚「……ちなみに」
コンコン。
指先で、占い雑誌のページを軽く叩く。
蓮🖤「……?」
亮平💚「今日のラッキーアイテム、ちゃんと効いてるっぽいね」
蓮🖤「うるせぇ」
玄関扉の前に立て掛けられた、雑誌。
5月の占いコーナー。
いて座のあなた、過去の恋人と急接近。
片思いの人は、素直になることを心掛けて。
【今日のラッキーアイテム:ピザ】
コメント
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えー!🖤と💚が??😳最&高‼️ そして💙がずーーーーーーっと可愛い💕