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「待ってくださいよ」
朝陽の大声が霊視の間に響く。
霊貴は振り返り、営業用の笑みを浮かべる。
「申し訳ありませんが、本日はまだ私の
霊視を待っていらっしゃる方々がおりますので」
しかし、その口調は次第に冷たさを帯びていく。
「これ以上、迷惑行為をされますと──」
その瞬間だった。
部屋の片隅で、小さな少女が黙ったまま立っていた。
誰にも気付かれず、ただじっと霊貴を見つめている。
「・・・・」
その少女の存在を認識した瞬間、霊貴の言葉が止まる。
「!!!!!!」
思わず目を見開いた。
(何・・・あの子供・・・)
少女は何も言わない。
ただ静かに、その場に立っているだけだった。
(あんなところに子供なんて居たかしら)
視線を逸らした、その一瞬。
少女の姿が霧が風に溶けるようにふっと消えた。
スッ──
霊貴の全身に鳥肌が立つ。
「!!!!!!」
(え? き、消えた?な、なんで!?)
恐る恐る周囲を見渡す。次の瞬間。
今度は霊視の間の反対側に、少女が何事もなかったかのように立っていた。
(今度は反対側に!?何よ!一体どうなってんのよ!)
霊貴は自分が霊視中で、大勢の信者たちに囲まれていることさえ忘れていた。
目の前に現れては消え、また別の場所に姿を現す少女。
その異様な光景に、背筋を冷たいものが這い上がる。
やがて霊視の間の空気がざわつき始めた。
異変を感じ取った信者たちが、不安げに辺りを見回している。
茜は思わず口元を緩めた。
「いい感じに信者が慌て出してるね」
さくらは静かに頷く。
「信者にも佳苗は視えてる筈だからね」
信愛は苦笑しながら小さく呟いた。
「佳苗にはこんな悪霊役
やらせちゃって申し訳ないけどね」
焔垂は肩をすくめる。
「そうか?意外とノリノリみたいだぞ?佳苗ちゃん」
その言葉通りだった。
佳苗は信愛に協力できることが嬉しいのか、ときおり無邪気な笑顔を浮かべながら、あの世とこの世を軽やかに行き来している。
だが、その笑顔こそが霊貴には得体の知れないものに映っていた。
その場に立ち尽くし、額には冷や汗が滲む。
(何なんだよ!このガキ!)
そこへ朝陽が一歩前へ出る。
「お祓いしたらどうですか?」
霊貴は怪訝そうに眉をひそめた。
「は?」
朝陽は淡々と言葉を重ねる。
「冥府の王の力で祓ったらどうですか?」
さらに畳み掛ける。
「力を授かった導師様なら除霊なんて余裕ですよね?」
霊貴は言葉を失う。
「何を・・・」
「皆さん?そうですよね?」
朝陽は信者たちの方へ向き直る。
「霊貴冥孤先生なら我々を救ってくださる
そう信じてますよね?」
朝陽は信者たちに言葉を投げかける。
その一言に信者たちが一斉に反応した。
「そうです!導師様!」
「お願いします!」
「祓ってください!」
「我々をお救いくださいませ!」
信者たちの期待と声援が飛ぶ。
(クソ・・・コイツ余計なことを・・)
霊貴は唇を噛み締める。
(とりあえずここら逃げるしかない)
そう判断すると、裏口へ向かって駆け出そうとした。
しかし、その進路を遮るように佳苗が音もなく立ちはだかる。
「どこに行くの?」
「きゃあぁあぁあぁあぁあ!」
霊貴は悲鳴を上げ、その場に尻もちをついた。
突然目の前へ現れた佳苗への恐怖に、全身を震わせている。
信愛はその様子を見届け、小さく微笑んだ。
「そろそろ行こっか」
「そうだね!」
茜が元気よく頷く。
さくらも柔らかな笑みを浮かべた。
「仕上げといきましょう♬」
4人はゆっくりと、怯えきった霊貴のもとへ歩みを進めた。
「霊貴冥孤さん?」
信愛は、床に倒れ込んだ霊貴を見下ろしながら静かに口を開いた。
霊貴は荒い息を吐きながら睨み返す。
「は?何だよ!お前ら」
その豹変した口調に、さくらが思わず吹き出した。
「あ、もう口調変わっちゃってるし」
茜も肩をすくめる。
「焦ってる証拠じゃ〜ん♬」
霊貴は苛立ちを隠そうともせず怒鳴った。
「何だよお前ら!」
信愛は表情一つ変えず、真っ直ぐ冥孤を見据える。
「あなたは霊を甘く見てる」
霊視の間の空気が静まり返る。
「その油断が大きな歪みを生んだんです」
冥孤の眉がぴくりと動く。
「何を・・言って・・・」
信愛は一歩前へ踏み出した。
「その歪みが隙を生んで
その隙が今日、あなたを破滅させます」
霊貴の顔が怒りで歪んだ。
「ふざけんじゃねーよ!」
霊貴の怒声が霊視の間に響く。
「お前らみたいなガキに台無しにされてたまるか!」
そう叫ぶと、懐へ手を突っ込む。
次の瞬間。
銀色に鈍く光るバタフライナイフが、その手に握られていた。
「白縫さん!危ない!」
美月が悲鳴を上げる。
「信愛!」
茜も叫ぶ。
霊貴は狂気を宿した目で信愛を睨みつけた。
「殺してやる!」
信愛の表情が強張る。
しかし霊貴の体は、見えない何かに激しく弾き飛ばされた。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げながら床を転がる。
「え!?何!?」
信愛は恐る恐る背後を振り返った。
「あ!」
そこに立っていたのは、一人の少女だった。
その少女は腕を組み、呆れたような視線を信愛へ向けている。
「まったく・・今度は何に首突っ込んでる訳?」
信愛はその声に聞き覚えがあった。
霊貴を吹き飛ばした張本人、それは春日井千歳だった。
「ち、千歳!?」
信愛が驚きの声を漏らす。
美月も状況が飲み込めず戸惑う。
「え?今度は何?誰?」
茜は目を丸くする。
「千歳?千歳ってまさか・・・」
焔垂が思い出したように口を開く。
「千歳って、あの交差点の春日井千歳さん?」
茜は千歳の顔を見つめながら首を傾げた。
「私・・顔初めて見たかも」
さくらが不思議そうに尋ねる。
「てか千歳さんも佳苗と同じになってたの?」
千歳は淡々と答えた。
「詳しくは後で説明するから」
そう言うと信愛へ視線を向ける。
「とりあえず信愛は今すぐ警察に通報して
こいつの動きは私が封じとくからさ」
信愛は安堵したように頷く。
「あ、ありがとう千歳」
床に伏した霊貴が歯を食いしばった。
「させるか・・・」
しかし千歳は冷ややかな目で見下ろす。
「あんたは黙ってて」
そう言って右手を静かにかざした。
すると、目に見えない力が霊貴の全身を絡め取る。
両腕、両脚がまるで空間そのものに縫い付けられたように動かない。
「うぐぅ・・うぅ・・・」
霊貴冥孤は必死にもがくが、一歩も動けない。
「何だよこれ!」
叫び声だけが、静まり返った霊視の間に虚しく響いた。
コメント
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×××さん、最新話読みました!🎀 佳苗ちゃんの悪霊役が意外とノリノリで可愛いのに、霊貴さんには本当に恐怖になってるギャップが最高でした〜!笑 千歳さんがまさかの登場で、霊貴をバタフライナイフごと封じちゃう展開、めっちゃスカッとしました!✨ 信愛ちゃんたちのチームプレイが本当に頼もしくて、読んでてワクワクしました! 次回も楽しみにしてます!🌸
#普通
野々さくら
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ありあ
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