「______しにがみくんのこと、突き放してたんだよ。」
「…へっ? 」
突然の告白に、空いた口が塞がらない。だってそうだろう?あんな優しくしてくれた人が、本当は僕のことを突き放していたなんて考えられないのだから。
口の塞がらない僕を見てクロノアさんは話し始める。
「…今まで、人に優しくしてもみんな構ってくれないから”みんなが求めてる自分”を必死に繕ったんだ。」
僕は、ただクロノアさんの話に頷くことも忘れくらいに真剣に話を聞いていた。
「…じゃないと、永遠に1人だと思ったから。でも、トラゾーとぺいんとにはちゃんと素の自分を見てくれたからあれだけど…。
自分を偽ることで、人を突き放すようになっちゃって。」
「……じゃあ、僕にも偽善を?」
そう問うと、クロノアさんは「…わかんない。」と答えた。
けれど、答えが出ない時点でクロノアさんは僕のことを突き放していると思って、絡まない方がどっちもの最善なんだと考えたんだと。
苦笑いで話すクロノアさんに、僕も話しかける。
「……僕、クロノアさんのこと嫌いだって言ったの…覚えてます?」
「うん…でも、それがどうしたの?」
まだ何もわからないようなクロノアさんに、僕は目を伏せて話す。
「………本当は、僕に関わらせたくなかったんです。」
そう言うと、クロノアさんは「えっ」と声に出して驚いていた。
「僕の声が変だから…僕と絡む人、全員嫌な目で見られちゃうから…。だから、突き放さなきゃいけないって思ったんです。」
事実を口にすると、クロノアさんは急に謝り始めた。何回もだ。
何回も何回も、僕に謝った。
混乱した僕は流石にそこまで謝らなくていいですよと言うと、クロノアさんは泣いた顔をあげて、僕にこう言った。
「俺の善意が…全部ダメだったんだね…。」
大粒の涙を流すクロノアさんに、僕は大声で「違います!!!」と言った。
突然の大声でびっくりしたのか、クロノアさんは肩をびくっと震わせた。
僕はクロノアさんの目をまっすぐ見て、口を開けた。
「多分、どっちもダメだったと思いますよ。」
少し微笑んでそう言うと、クロノアさんも次の瞬間には微笑んでくれた。
「……クロノアさん。」
「…何?」
2人で向き合って、姿勢を正してから僕はクロノアさんに声をかける。クロノアさんは穏やかな顔をして僕の言葉を待っている。
「…こんな僕と、友達になってくれますか?」
「ふはっ。…こんな俺でいいなら。」
斜陽が刺す教室に、靡くカーテンで僕たちは笑顔になりながらも、たくさんの話をした。
胸がポカポカした。
胸が、ポカポカしたのに。
何だか、友達って感じじゃない。
いや、クロノアさんとはちゃんとした友達だと思っているが…ぺいんとさんとは、友達になれた感じがしないのだ。
………だってあの人、クロノアさんみたいに悩みなんて何も話さなかったから。
それに、お弁当を持ってない理由も何か…。そう思うと、僕の胸はザワザワと騒いでいるように感じた。
「…………クロノアさん、ぺいんとさんの事情は何か知ってますか?」
急な問いかけに、クロノアさんはキョトンとしていたが次の瞬間には「いいや、普通に前向きな人だな…ってくらい。」とだけ。
だから、僕はクロノアさんに言った。
「ぺいんとさんの悩み、吐かせてやりましょうよ。」
…………………………
「はっ、はっ…うえっ!…っはぁ!はぁっ…!!」
俺_____ぺいんとは保健室までずーっと走って向かっていた。ぐにゃぐにゃと曲がる視界、上がる息、吐き気…色々なものを、我慢しながら。
ちょっとして保健室の目の前にくると、俺は少し息を整えてからノックを3回して入室した。
「ぺいんとです。先生、トラゾーは……」
焦った顔や体調不良をなるべく隠していたつもりだったけど、保健室の先生には全てがお見通しらしい。
「……ぺいんとくんも、休んだら?先生には言っておくから。」
それじゃ、ダメなんだ。
腹立ちも込み上げてきたけど、何より焦りの感情が込み上げてきた。
そんなのじゃダメだ。それじゃダメだ。すぐ追い越されちゃう。まだ足りないから、って。
だから、俺は先生にそのことを伝えようとする。
「…………っ、でも……それじゃあ_____!」
「休憩も………必要なんだぞ………。」
「!!」
ふと聞こえた声の方向に振り向くと、喋っていたのはトラゾーだった。荒い息遣いをして、汗びっしょり。苦しそうな顔も、見ていられない。
そんな彼に俺はすぐさま駆け寄る。
「トラゾー!もしかして…」
「うん……まぁ、でも大丈夫だよ!それよりぺいんとも俺とサボるか?w」
「っ……」
彼の虚しい笑顔に、何だか心がズキズキと痛む。そんな俺の心情を察したのか、トラゾーは「もしかして俺と寝たいとか…?!」と言って笑わせてくる。
いや、まぁ笑ったけど。
だから、ふいに返してしまった。
「んなわけねーだろ!まぁサボるけどな!!」
って。
コメント
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初コメ&フォロー失礼します!神作品すぎます…!続きめちゃくちゃ楽しみです!
♡が1111だから♡押すか迷った!!
気になるお話で 一気読みしてしまいました…! 次の投稿楽しみです!✨