コメント
4件
投稿ありがとうございます✨ 次の投稿も頑張ってください!
お疲れ様です!最高です…✨
「ちょっ……ちょっと、待ってください!!」
ふと聞こえた声に振り返れば、保健室のドア付近にはしにがみくんとクロノアさんが立っていた。
しにがみくんに心配している目を向けているクロノアさんは、どこかオドオドしていた。
「………ぺいんとさん、僕、貴方のことを…知りたいんです。 」
「…は?」
突然の告白に、俺は咄嗟に口の悪い返事をしてしまった。けれど彼は何も気にしていない様子だ。
しにがみくんは少し俯いて話し始める。
「…僕、この声がすごく嫌いなんです。…地声じゃない、この声が。」
「…へっ??」
ふと初めて知ったことに、俺はびっくりする。何てったって、地声が元々高い声だから恥ずかしいからだと思っていたのに、高い声を使っている自分の喉に嫌気がさしていたらしい。
「……だって、この声はみんなと仲良くなるためのものだけど…でもそれは、みんなに嘘をついてるってことだから…!!!」
「………」
確かに。
みんなだけではなく、自分にも嘘をついていることになる。そう思うと、そうだし。
でも…
「友達なんて、浅はかな関係なんでしょ?」
俺がそういうと、しにがみくんは固まった様子でいた。
「……俺、友達をつくろうと頑張ったけどすぐに関係なんて終わっちゃってさ。だから、みんなに嘘を吐かなきゃ…この世は生きていけないんだよ。」
そんなふうにいうと、しにがみくんは言い返せない様子だった。
ほら、やっぱり。しにがみくんも同じなんだ。やっぱり友達なんて、作るんじゃ______
「違うよ。」
「!!」
ふと聞こえたクロノアさんの声に、俺は目を見開く。でも、クロノアさんはこちらをまっすぐ見つめていた。
「本当の友達っていうのは、嘘をつかなくても一緒にいられる関係。じゃなきゃ、そんなの友達じゃないよ。」
俺は、何も言い返せなかった。
だって、こんなに説得力のある言葉を真に受けてどう言い返せばいいっていうんだ。
…でも、やっぱり納得はできなくて。
説得力もあるし、意味も理解できるけど、納得はできない。
「っ…どうせ、それも嘘のくせに!!!」
俺が叫んだ瞬間、みんなは固まった。空気が凍りつくように。
それでも俺は叫び続ける。
「俺が嘘つかないとみんなが嘘ついちゃうんだよ!!なのに…何で俺、嘘ついちゃダメなの…?」
涙が、ポタポタと地面に零れ落ちる。そんな俺を見て、みんなは少しばかり慌てていた。
でも、別にどうでも良かった。どうせ慌てることしかできないんなら、友達になんて_______
「でも、嘘つくのも疲れたんでしょ?」
「っ!! 」
後ろから聞こえた声、それはトラゾーで。トラゾーも、俺と同じ境遇にいるような人で、よく分かり合える親友だ。
「……ぺいんとからしたら、俺はただのクラスメイトかもだけどさ…俺は正直、しにがみさんとクロノアさんと友達になりたいって思ってるよ。」
みんなからの言葉で、涙が溢れる。
確かに説得力もある、理解もした、納得もした。でも…でもそれじゃダメなんだよ!!
「何でお前らはそんなにすぐ”友達”がつくれるんだよ…」
沈黙が続こうとしていた場を、俺はすぐさま走り出し保健室から出た。後ろから声は聞こえなかった。いや、聞こえないようにした。
俺はただ走って__________。
(何だよ…何だよ何だよ…!!俺だけ置いてけぼりじゃんか…!!!)
泣きたかったけど、涙は出なかった。いや、出るほどのものでもないのだ。
(自分がうぜぇ…!!)
…………………………
保健室から出ていくぺいんとさんを呼び止めようと手を伸ばしたけど、届かなかった。
数秒でも反応が遅れていなければ_____
(_____この手は、届いたのに。)
自分の手を見て、僕は力を抜いた。周りに目をうつせば、クロノアさんとトラゾー…さんは話し合っているようだった。そういえばお互い顔を知ってるんだったと思い出し、僕もその輪に入る。
「その……」
「あぁ、しにがみさんね!俺トラゾー!よろしく。」
相手はぺいんとさんが出て行ったにも関わらず、声は明るく、軽々しかった。でも、その性格もどこかしらぺいんとさんと似てるところがあるからこそぺいんとさんとトラゾーさんは友達になれてるんだろうな、なんて思った。
「……ねぇ、しにがみくん。」
ふと、クロノアさんから声をかけられる。僕は、それに「?」とキョトンとしていると、クロノアさんはもう一度口を開けた。
「______俺とトラゾーの話をしようか。」