TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「どういうことよ、祥子!」


祥子の突然の告白に、教室内の部員たちは一斉にざわついた。

なぜここでそんなことを言い出すのか。

そもそも、彼女はなぜこの旅行に参加したのか?


祥子は涙をこぼしながら、震える声で訴えた。


「……他の友達とオーストラリア行く予定だったの! そっちだけにすればよかった! 山梨なんて来なければ……!」


彼女の言葉に、学生たちは戸惑いの表情を浮かべた。


確かに、祥子は比較的早く地元のケーブルテレビの内定をもらっていた。

滋賀から名古屋に出て一人暮らしをしていたが、実家は地主で、山をいくつも所有するほどの裕福な家柄。

本人は自慢しているつもりはないのだろうが、日常会話の端々に育ちの良さがにじみ出ていた。


その交友関係の広さも、裕福さゆえのものだろう。

オーストラリアへ行く予定の友人たちも、サークル外の上流層の知人たちだったのかもしれない。


そして、サークルに入ったのもアナウンサー志望だったからだが、実際は親のコネで内定を得たことを、ほとんどの部員は知っていた。


だからこそ、今回の彼女の発言に対しても、驚きというより、呆れに近い感情を抱く者が多かった。

「また始まった」と、冷めた視線を送る者もいた。


祥子は、それに気づかないまま、さらに愚痴をこぼし続ける。


「しかも格安旅行……! おんぼろで狭いバスで腰も痛いし……!

今夜泊まる宿もボロボロで……!」


その言葉に、数人の女子が互いに顔を見合わせる。


――ああ、やっぱり。


普段から彼女のお嬢様気質に疑問を持っていた女子たちは、表面上は仲良くしていたものの、心の中では快く思っていなかった。

サークル活動中に、祥子の実家からの高級スイーツをもらったりすることもあったが、どこかで「見下されている」と感じることがあったのだ。


そんな祥子の言葉に、ついに権野源喜《ごんのげんき》がニヤリと笑いながら呟いた。


「いや、今回の宿とったのハルキだろ」


その瞬間、教室の視線が一斉にハルキへと向けられた。


ハルキは全員の視線を集め、困惑した表情を浮かべる。

ぎこちなく後ずさりしながら、震える声で口を開いた。


「……ごめんなさい……でも、みんながそれでいいって言ったから……

それに、急に決まって、条件に合う宿なんて、あそこくらいしか……」


事実だった。


幹事を押し付けられたハルキは、内定も決まらず焦りながら手配を進めていた。


旅行のプランを決めるとき、メンバーたちから無茶な条件を出されていた。


「安いこと。」

「美味しいご飯。」

「カラオケもある。」

「温泉がある。」


そのすべてを満たす宿泊先など、限られていた。

必死に探した末に見つけたのが、安いツアーパッケージと、古びた温泉宿だった。


「そんな言い訳、通用するか!!」


突然、源喜が怒鳴った。


彼は勢いよくハルキの胸ぐらを掴む。


「祥子がああ言ってんだからよ、お前が責任取れよ。こんなふうになったのもお前のせいだ!!」


教室は静まり返る。


その間も、祥子はヒステリックに泣き叫び続けていた。


そして――


ダンッ!!!


大きな音が教室に響いた。


全員がその音の方へ視線を向ける。


そこにいたのは――スダだった。


彼の足元には、先ほど持っていた台帳が床に落ちている。

どうやら、彼はそれを投げつけたようだった。


そして、低い声で静かに言った。


「うるさい。まだこっちが説明してるところでしょうが」


その声は、まるで凍てついた刃のように鋭かった。


スダはゆっくりと顔を上げた。


「……ほう?」


台帳を拾い上げながら、視線を祥子へと向ける。


「名津祥子さん……ですね」


祥子の顔が、強張る。


スダは指先で台帳をなぞりながら、静かに呟いた。


「じゃあ、あなたが最初の見本になりましょうか」


その言葉が響いた、次の瞬間――。


ザシュッ!!!


何かが飛んだ。


そして、それが祥子の額に突き刺さった。


「きゃああああ!!!」


耳をつんざくような悲鳴が教室に響く。


ナイフだった。

それも、刃渡りが包丁よりも大きい、異様な形をしたナイフ。


祥子の体が、力なく床へと崩れ落ちた。


血が、どくどくと流れ出す。

教室の床を真っ赤に染めながら。


源喜は驚きのあまり、ハルキの胸ぐらを掴んでいた手をぱっと離した。


教室の空気が、完全に凍りつく。


誰もが言葉を失い、震える手で口を塞ぐ。


祥子の体は、ぴくりとも動かない。

彼女の額に深く刺さったナイフが、まだそこにある。


そして――。


壁際の兵士たちが動いた。


彼らは無言のまま、黒い布を広げると、それを祥子の体に被せた。


――まるで、死体処理に慣れているかのように。


黒い布の下に、祥子の体が完全に隠れる。

そして、兵士たちは何事もなかったかのように、元の位置へと戻った。


スダは、静かに微笑んだ。


「もう、ゲームは始まっているんですよ」


そして、教室の壁に埋め込まれていたデジタル時計が、カウントダウンを始める。


残り時間:11時間00分00秒


――すでに、1時間が過ぎていた。


死のカウントダウンは、もう止まらない。


「急がず慌てず。まだまだありますよ」


スダは天井を仰ぎ、薄く笑った。


「さあ、残り時間を有意義に使ってください。ね?」


恐怖の幕が、ゆっくりと降り始めていた。



loading

この作品はいかがでしたか?

48

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚