テラーノベル
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#不倫
#離婚
#ヒトコワ
#復讐
黒田の獄中からの「遺言」に近い告白
それによって、すべての因縁がルーツ・ガーデンの中心にある
あの一際大きなクスノキの根元に集約された。
私が幼い頃、父と一緒に
「いつかこの木が、みんなを守る傘になるんだよ」
と笑いながら植えた、あの場所。
「……ママ、あったよ。これ……」
陽太が泥だらけの手で掘り出したのは、錆びついた小さな金属製のタイムカプセルだった。
蓋を開けると、そこには二つのものが入っていた。
一つは、父が遺した「一円玉」。しかしそれは、100年以上前に発行された
発行枚数が極めて少ない、歴史的価値という点では測定不能な「最初の一円」だった。
そしてもう一つは、直樹が結婚式の日、私に隠れてこっそりそこへ埋めたと思われる、一枚のメモ。
『詩織。
もし君がこれを読んでいるなら、俺はもう君の隣にはいないだろう。
俺が君の父を追い詰め、この家を奪おうとした時、俺はこの場所で父さんの「最初の一円」を見つけた。
その時、俺の計算機は初めて壊れたんだ。
この一円には、君が生まれた日に
父さんが「君の未来の幸せ」を願って積み立てた、世界で一番純度の高い愛が詰まっていたから。
俺は、この愛に勝てる数字を、一生かけても見つけられなかった。』
直樹は、最初から知っていたのだ。
自分がどれだけ数字で私を支配しようとしても
父が植えた「一円の愛」という資本には、逆立ちしても勝てないことを。
彼はその敗北を認められず、私を傷つけることで
その圧倒的な愛の存在を否定しようとしていたに過ぎなかった。
「……ずるいわ」
私は楠を見上げ、涙を流した。
復讐のために流した涙ではない。
10年間、私のそばで常に敗北感を抱えながら
それでも私という「愛の象徴」を、自らの闇で塗り潰そうと足掻き続けた、愚かな男への憐れみ。
私は、父の万年筆をそのタイムカプセルの隣に置いた。
「お父さん。……あなたの言った通り、一円の誠実さは、すべての虚像を打ち砕いたわ」
【残り6日】
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