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雨後雨

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雨後雨

1 - 【第一章】

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5

2023年01月01日

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夢を見た。

それはまるで、幾人もの人生のような、一人の人生のような。

誰かの生暖かい悪夢。


目が覚めた。一番に視界に飛び込んできたのは青白く光る天井と、眠る前よりも随分と歳をとった専門医であろう男の姿。全身に染み付いた薬の匂いが酷く鼻にささる。

「おはよう。体調はどうだい。」

「最悪。今は何年何月何日?」

「今は西暦2130年の9月28日。最後にお前が寝てから8年と9ヶ月と6日だな。」

「へぇ……。あの…、悪いんだけど…、」

「ん?」

「おじさん誰だっけ?」

「…「おじさん」て…。今回は随分と酷えなぁ。」

「……へ?ごめん、俺もしかしてまたなんか忘れてる?」

「…ああ、いろいろとな…。」

呆れたような落ち込んだような声で彼はそう言った。」


先程の男は、俺にある程度説明し終わると、「疲れたから今日は寝る。絶対安静だからそこから出ないように。」とだけ言い残して出ていってしまった。

多重記憶混濁障害。

俺が生まれた時から持っていた障害だ。この障害は複数人の過去の人々の記憶が混ざり合い一時的に混乱に陥るというものだ。

俺が生まれた当時はそれが障害だとは言われていなかった。妄想癖や、夢と現実の区別がつかないだけだと言われていた。それに、この障害は今のところ、俺しか実例がいないのである。それなのに障害として呼称しているのは理由がある。

しかし、大学を卒業した頃、俺の高校からの友人で、研究医であったあの男が、なんとなくの興味で俺の記憶を映像に起こし、調べた友人により、その記憶に映っていた場所は実在した場所だと言うことが判明した。しかも、俺はその場所と縁のある家と遠い親戚だったのだ。

これは偶然と考えるには奇妙過ぎるということで、研究機関で立場の高い人と仲が良かった友人が新手の障害だと銘打って、研究する許可を得て研究をしているらしい。

そして、この研究にはあまりにも時間がかかるうえ、脳をいじるモノなので、途中で目を覚ましてしまうと非常にまずいらしく、コールドスリープを使って実験をしている。しかし、脳をいじる実験なのでそれなりのリスクはある。

記憶が消える。実験をする度に…。

しかし、混ざってしまった記憶が消えることはない。

消えるのは、今俺が生きている人生の記憶だ。

混ざってしまった記憶は消えるどころか、段々と色濃く、鮮明になっていく。

それでも何故か、『自分』が自分であるということを、忘れることは無かった。


暇だ。

暇過ぎる。

実験室も兼ねたこの病室は信じられない程に殺風景だ。

絶対安静とは言われたが……まぁいいか。絶対安静の病人の部屋を殺風景にする方が悪い。

俺は病室の隅に置いてある、ロッカーから、実験前に着ていた自分の服を取り出して着替え、荷物を持ってバレないように窓から病室を出た。


出る際に少し服が汚れてしまったので、できる限り汚れを落としてから顔をあげると、そこには随分と変わってしまった町があった。

かつて畑があった場所にはものすごく高いビルやマンションが立ち並び、ここから一望できた海や住宅の姿はどこにもなかった。

「変わっちまったなぁ。」

そう呟くと、俺は何となく興味本位で繁華街に向かった。


繁華街に着くと、俺は建物の高さに驚き、その場に立ち尽くしていた。すると、何故か自分が周囲の視線を集めていることに気がついた。

何かおかしなことでもしただろうか?

そんなことを考えていると、自分と同じくらいの男がかなり至近距離まで来て、俺のことを上から下まで凝視し始めた。

「……なんですか?」

驚いてそう言うと、彼は「お兄さんちょっと来て。」と言って俺の手を引っ張った。


その後、まず美容院に連れて行かれ髪を整えられると、今度はどこか分からない場所に連れてこられた。連れてきた当の本人は、たくさんの服を熱心に見ている。

しかし服屋でも無さそうだ。

「…あの、ここは……。」

「僕の家だよ。」

家!?にしては服が多くないか?

「えっと…何をしているんですか?」

「ん?お兄さんの服選んでる。」

彼はそう言うと、「お、これなんか良さそう。」と言って俺に服をあて始めた。

「あと、敬語使わなくていいよ。どうせ同い年くらいでしょ。」

「あ、はい………うん。あの…、何でこんなことを?」

「お兄さんの顔いいのにめちゃくちゃダサかったからっていうのもあるけど…、」

………ダサいのか。俺が眠る前は最先端だったのだが。

「何となく懐かしい気がしたから。」

そう言い終わると、「よしできた。」と言って、僕に服を渡すと更衣室へと促した。


更衣室で着替えている間にいろいろなことを話した。彼についていろいろなことを知った。

彼はデザイナーの仕事をしていること。俺と同じ高校に通っていたこと。彼の両親は彼の幼いころに他界し、両親との記憶がないこと。

彼は不思議な感じがするが、俺と少し似ているような気がした。


着替え終わり更衣室を出ると、彼に明日の予定を聞かれた。

おそらくあの様子だと、俺の担当医師は明日も俺のところには来ないだろう。

明日が空いていることを伝えると、二人で俺の洋服を見に行くことになった。

それから俺たちはお互い空いている時によく会うようになった。

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