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#ざまあ
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「おい、聞いてるのか?」
翌朝
朝食のトーストを口に運んでいた直樹が、事も無げに言った。
私は、昨夜見た『残高200万円の消失』の衝撃を必死に押し殺し、冷めたコーヒーを啜る。
「……何?」
「来月から、生活費を2万円にする。1万は貯金に回せ」
耳を疑った。
中学生の陽太は育ち盛りだ。今でさえ私の食事を削ってやりくりしているのに、あと1万円減らす?
「いやいや、何言ってんの?無理よ。陽太の塾の夏期講習だってあるし、これ以上は……!」
「は?お前のやりくりが下手なだけだろ。嫌ならパートでも何でも始めればいい。まあ、社会経験ゼロの主婦を雇う物好きがいればの話だけどな?」
直樹は下卑た笑い声を上げ、高級なネクタイを締め直す。
その指に光る結婚指輪さえ、私の金で買ったものかもしれないと思うと、吐き気がした。
「じゃあ、行ってくる。レシートのチェック、夜までに完璧にしておけよ。1円でも合わなかったら分かってるな?」
玄関の扉が閉まる音が、まるで監獄の門が閉まる音のように聞こえた。
私は震える手で、空になった通帳を開き直す。
何度見ても、200万円は消えている。
そして昨夜、直樹のジャケットから落ちたあの15万円の領収書。
「……徹底的に調べてやる」
私は陽太を学校へ送り出すと、這いずるようにPCに向かった。
直樹は私がネットサーフィンくらいしかできないと思っているが
私は結婚前、WEB制作会社でデザインとコーディングを叩き込まれていたんだから。
まずは、直樹のスマホの同期設定を確認する。
パスワードは、直樹が「一生忘れない」と豪語していた、初めて買った高級車のナンバー。
案の定、筒抜けだった。
クラウド上に保存された写真フォルダを開くと、そこには地獄が広がっていた。
高級ホテルのスイートルーム。
シャンパングラスを傾けて笑う、直樹と、若い女。
女の首元には、私が欲しくても手が出せなかったティファニーのネックレス。
『直樹さん、昨日のプレゼント最高! 200万もする限定品をサラッと買えちゃうなんて、やっぱりエリートは違うね♡』
女のメッセージに、直樹が返信している。
『これくらい、お安い御用さ。家には「将来の備え」って言えば、バカな嫁が必死に節約して補填してくれるからな』
「……っ!」
喉の奥で、獣のような声が漏れた。
バカな嫁。
そう、私はバカだった。
奴の暴言に耐え、爪に火を灯すようにして貯めたお金が、この女の首を飾る宝石に変わっていたなんて。
私は写真を一枚残らず自分の隠しフォルダに転送した。
そして、そのまま別のブラウザを開く。
『フリーランス WEBデザイン 案件』
かつての仕事仲間や、クラウドソーシングサイトに片っ端からアクセスする。
ブランクはある。
でも、今の私には「怒り」というガソリンがある。
(2万円で生活しろって言ったわよね、直樹)
だったら、私はその倍、いや十倍を自分の力で稼いでやる。
そして、あなたが使い込んだ200万円を、社会的地位もろとも、倍返しで毟り取ってあげる。
私は陽太の学習机の引き出しから、新しいノートを一冊取り出した。
表紙に大きく、こう記す。
『モラハラ夫・社会的抹殺計画書』
これはもう、ただの家計簿じゃない。
あなたの「死」を刻む、デスノートよ。
【残り99日】