お母さまは、わたしの手をぎゅっと握りしめてくれた。何かを言いたそうなお口と、さやさやと風になびいている自慢の黒髪を眺めていると、わたしは急に恐ろしくなって、お母さまにしがみついた。
頭を撫でながら、お母さまは、
「どうしたの、響子?」
と、言ってくれたけれど、わたしは何も答えられなくて、ただ心の中で、
「お母さまやお父さまとずっと一緒にいたい!離れたくない!お母さま、どうかお願い、わたしの手を離さないで!神様…どうかわたしたちやみんなを助けてください、離れたくないのです。どうかみんなをお守りください、イヤです。離れ離れはイヤなんです。これからずっと良い子でいますから、神様、どうかわたしたちをお守りください…」
と、叫び続けていた。
高粱が風に揺れながら、まるでわたしたちを邪魔ものみたいに阻んでいるようで、味方のはずのお天道様は遠すぎるみたい。
だって、手が届かないから…。
このままだと、わたしは泣いてしまいそうだから、後ろの富士子さんに、
「お歌、とってもステキですね。意味はわからないのですが、ずっと聞いていたいです」
富士子さんはにっこり笑って、ありがとうと言ってくれた。
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