テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

その日の夜、わたしたち避難民は、農家の離れのちいさな石造り小屋で、ひと晩過ごすことになった。扉は壊れていて、外からは丸見えだけど、そんなことは気にならなくて、休息できる場所を与えられたことに、みんなは喜んでいた。

石田さんからこの家の主人であり、協力者でもある王さんを紹介された。

王さんは、痩せていて背が高く、髪の毛に白髪が混ざっていたけれど、にこにことずっと笑顔でいるせいか、とても若く見えた。


「心配ない、日本人ともだち、ここにいれば問題ない、明日、全員連れて行くから安心して寝てください」


そう言うと王さんは、大人たちにお酒を振る舞ってくれたけど、お母さまと富士子さん、そして石田さんはお酒が飲めないからという理由で、丁寧に断っていた。

小屋の中は、藁のにおいや農機具の鉄のにおいがしていて、吊り下げられた電球がそれらを照らして、動き回る王さんの姿を影絵みたいに映し出している。

わたしたちの側に座った石田さんは、


「燃料も用意してくれるようです。明日港まで行きましょう。鉄道は使えないみたいですが、王さんが色々と手配してくれるそうです」


と、言いながらお髭をさすった。

富士子さんが言葉を選びながら、


「あの人、信じて大丈夫ですか?」

「なに、古くからの友人ですからね、心配いりますんよ。大丈夫ですからね。日露戦争からの友達です!」

「なら、良いのですけど…」


富士子さんは納得いかない様子だった。



ハイウエスト・ラヴァードールズ 満州国から脱出せよ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

6

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚