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「いらっしゃ~い。お待ちしてましたー」


ギター担当のシュウが声を上げ、こちらへ手をこまねいた。


「待ってました、お疲れさまです」


ドラムのユウが、にっこりと笑顔を作る。


「さっきは、どうもでした」


ベースのジンが持っていたグラスを軽く掲げ、愛想を振りまくように片目を閉じて見せる。


3人のバンドメンバーの他には、マネージャーやスタッフなどの関係者数人が集まっていて、堀りごたつ式の長卓が埋まっていた。


「ここ、どうぞ?」


と、促されて、「ありがとうございます」と、空いているシュウの隣の席へ座った。


腰を下ろしてみて、改めて並ぶ顔を見渡すも、そこにはヴォーカルの彼の顔は見当たらなかった。


「ヴォーカルのカイさんは、来られていないんですか?」


シュウに何気なく問いかけると、


「ああ、あいつはこういう大勢の集まりとかは、嫌いなんで」


そう素っ気ない答えが返った。


「全然、出ないんですか?」


「ああ。仕事絡みで参加しないとマズい時ぐらいしか、カイは出ない」


「そうなんですか……」


(飲み会の場にもあんまり顔を出さないなんて、よっぽど人付き合いがイヤだったりするのかな…)


そうぼんやりと思いつつ、つがれたビールを一口飲んで、渇いた喉を潤した。


……お酒が進んで、メンバーらともだいぶ打ち解けてきて、


「だけど、ヴォーカルのカイさんて、なんだかみなさんとちょっとタイプが違いますよね…?」


ずっと気にかかっていたことを、隣にいるシュウに酔った勢いで振ってみた。


「タイプが違うって? もしかしてあいつのことが、気になる感じなんですか?」


シュウに興味しんしんといった風で、つぶさに顔を覗き込まれる。


「……気になるっていうか、」


思いつくままを言ってはみたけれど、いざそう聞き返されるとなんだか気まずいような感じもして、残っていたグラスのビールをゴクリと流し込むと、


「……いえなんだか変わった人にも思えるから、興味がわくような……そんな感じですかね」


あまり上手くは言い表せないことを、口先でボソボソと喋った。


「ああー確かに、変わり者ですよね、あいつは」


シュウの返事に、横にいたジンが頷く。


「変わってますよね、ホントに。食事とかも、あいつは全然付き合ったりもしないし。僕なんて、カイの連絡先だけ知らないくらいだから」


「俺も、」「プライベートじゃ、誰も知らないんじゃないか?」


ジンに続いて、シュウとヒロがそう口にする。


メンバーでも、連絡先も知らないんだ……と、漠然と思う。


番組で歌っていた、見る人を魅了するような彼のあだっぽい眼差しが思い浮かぶと、興味は少なくともあるのに、彼のことだけはいつまでたってもちっとも見えてはこないことが、ただ歯がゆくも感じられた──。

クール系アイドルと、ヒミツの恋の予感?

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