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桜空

816
桜🌸
1,191
・ω・ 🐌
223
141
初ノベル✨️
いくぜ☆
お前だけには、敵わない』
岩泉一 × 及川徹
放課後の体育館。
「いーわちゃん♡ 帰ろ!」
「うるせえ。先に帰れ」
「ひどっ!? 幼馴染を置いて帰るなんて、人としてどうなの!?」
「お前が練習終わってからずっと俺に絡んでくるからだろ」
「えー? 俺、岩ちゃんと一緒に帰りたいだけなんだけど?」
いつもの調子で笑う及川に、岩泉は小さくため息をついた。
昔からそうだ。
及川は誰にでも笑顔を向ける。
誰にでも優しくて、誰にでも気軽に話しかける。
だからこそ。
自分に向けられる笑顔が、特別なものなのかなんて、わからなかった。
「……勝手にしろ」
「やったぁ!」
嬉しそうに笑う及川を見て、岩泉は思わず目を逸らした。
——ほんと、調子狂う。
*
帰り道。
「ねえ、岩ちゃん」
「なんだよ」
「岩ちゃんってさ、好きな人いる?」
不意に投げられた質問。
岩泉の足が、一瞬だけ止まった。
「……は?」
「だから、好きな人!」
及川はいつもの笑顔だった。
けれど、岩泉には気づいてしまった。
その指先が、制服の袖をぎゅっと握っていることに。
「……いたらどうすんだよ」
「えっ」
今度は及川が立ち止まった。
「い、いるの!?」
「質問に質問で返すな」
「だ、だって……!」
珍しく言葉に詰まる及川を見て、岩泉は眉をひそめた。
「なんだよ。お前が聞いてきたんだろ」
「……そ、そうだけど」
及川はうつむいた。
いつもなら、すぐに冗談を言って誤魔化すはずなのに。
今日は、何も言わない。
その沈黙が気になって、岩泉は及川の顔を覗き込んだ。
「……おい、及川?」
「……岩ちゃんの、ばか」
小さな声だった。
「は?」
「なんでもない!」
及川は歩き出した。
その耳が、赤くなっていることに。
岩泉はまだ、気づいていなかった。
*
翌日。
及川は、いつもより岩泉を避けていた。
目が合えば逸らす。
話しかければ、いつもの調子で返すくせに、すぐに離れていく。
それが、どうしようもなく気に入らなかった。
「……おい、及川」
部活が終わったあと。
岩泉は、帰ろうとする及川の手首を掴んだ。
「な、なに?」
「最近、なんなんだよ」
「べ、別になんでもないけど?」
「嘘つけ」
「嘘じゃないってば!」
「じゃあ、こっち見ろ」
及川が黙った。
ゆっくりと顔を上げる。
その瞳が、いつもよりずっと不安そうに揺れていた。
「……岩ちゃんはさ」
「ん?」
「好きな人がいるんでしょ」
「……ああ」
及川の表情が、ほんの少しだけ歪んだ。
「そっか」
無理やり笑おうとする。
「……よかったね」
「何がだよ」
「好きな人がいて、いいなって」
声が震えていた。
その瞬間、岩泉はようやく気づいた。
ああ。
こいつ、もしかして。
「……及川」
「なに?」
「お前、俺の好きなやつが誰か、気になるのか?」
「っ、別に!」
「じゃあ、なんで泣きそうな顔してんだよ」
「泣いてない!」
及川は顔を背けた。
けれど、岩泉の手を振り払おうとはしなかった。
岩泉はしばらく黙ったあと、ゆっくり口を開いた。
「……俺の好きなやつ、お前だよ」
「…………え?」
体育館の外から、運動部の掛け声が聞こえる。
なのに、及川には何も聞こえなかった。
「……は?」
「何回言わせんだよ」
「え、えっ!? ちょ、待って!? 岩ちゃん、今なんて!?」
「だから、好きだっつってんだろ」
「お、俺を!?」
「他に誰がいんだよ!」
及川の顔が、一気に真っ赤になる。
「……うそ」
「嘘ついてどうすんだ」
「だって、岩ちゃん……俺のこと、いつもバカって言うし……」
「バカなのは事実だろ」
「ひどい!!」
いつもの調子で叫んだあと。
及川は、ぎゅっと岩泉の制服を掴んだ。
「……ほんとに?」
その声は、ひどく小さかった。
岩泉は少しだけ目を見開き、それから及川の頭に手を置いた。
「……ああ。本当だ」
「……そっか」
及川は、くしゃっと顔を歪めた。
泣きそうで、嬉しそうで。
どうしようもなく幸せそうな顔だった。
「……俺も」
「ん?」
「……俺も、岩ちゃんが好き」
岩泉は一瞬固まった。
「……は?」
「だから! 俺も好きなの!! 何回言わせるの!?」
「いや、お前……」
「なに!? 今さら嫌になった!?」
「なるわけねえだろ、バカ!」
岩泉は及川の手を握った。
大きな手が、及川の指を包み込む。
「……これからは、ちゃんと言えよ」
「……なにを?」
「寂しいとか、嫉妬したとか」
「……っ、してないし!」
「嘘つけ」
「してない!!」
「じゃあ、なんで顔赤いんだよ」
「岩ちゃんのせいでしょ!!」
岩泉は笑った。
及川が、自分にだけ見せる顔。
それが嬉しくて、どうしようもなかった。
「……及川」
「なに?」
「好きだ」
「…………っ!」
及川は、とうとう顔を両手で覆った。
「……岩ちゃん、ほんとずるい」
「何がだよ」
「……そんなの、好きになるに決まってるじゃん」
その言葉に、岩泉は今度こそ真っ赤になった。
「……うるせえ」
「ふふっ、岩ちゃん照れてる!」
「黙れ!」
「やだ♡」
いつもの二人。
だけど、繋いだ手だけは、もう離れなかった。
——幼馴染だった二人が、恋人になった日。
及川徹は、生まれて初めて思った。
この人には、一生敵わない。
そして岩泉一もまた、思っていた。
こいつの笑顔には、一生敵わない。
コメント
1件
めっちゃ良かった…!!😭💕 及川さんの「岩ちゃんのばか」のところ、声が震えてて切なすぎたし、最後の「この人には一生敵わない」で完全に持ってかれた〜!! 岩ちゃんが好きって言い切るところも最高にロックで、初ノベルとは思えないクオリティ…!次も絶対読みたいです!!✨