テラーノベル
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「僕は、君の兄だ」
そのメッセージを見たまま。
俺は動けなかった。
「……兄?」
声に出しても、意味が理解できない。
俺に兄なんていない。
少なくとも、俺が知っている家族の中には。
「悠真」
美咲が俺を見る。
「どうする?」
俺はスマホを握りしめた。
「父さんに聞く」
「でも……」
「もう、聞くしかない」
俺は立ち上がった。
父さんが何かを知っている。
それだけは間違いない。
俺たちは母さんが入院している病院へ向かった。
父さんは、母さんの病室にいた。
ドアを開けた瞬間。
父さんが俺を見る。
「悠真……」
「父さん」
俺はその場から動かなかった。
「聞きたいことがある」
父さんの表情が変わる。
「何だ?」
「Rって知ってる?」
その瞬間。
父さんの顔から血の気が引いた。
やっぱり知っている。
「……どこで、その名前を聞いた」
「答えてよ」
父さんは黙っている。
「Rは誰なんだ」
「悠真」
「俺の兄なのか?」
母さんの病室に沈黙が落ちた。
父さんは俺を見ていた。
そして。
ゆっくり目を閉じた。
「……そうだ」
俺は息を止めた。
「Rは、お前の兄だ」
美咲が息をのむ。
俺は何も言えなかった。
本当に。
兄だった。
「でも」
父さんが続ける。
「お前が思っているような兄じゃない」
「どういう意味?」
「Rは――」
父さんが言葉を止める。
その時。
病室のテレビからニュースが流れた。
《本日未明、都内で男性が――》
父さんはテレビを見た。
俺も振り返る。
画面に映ったのは。
昨夜、俺たちを追ってきた黒いワゴン車。
その車が。
警察に押収されている映像だった。
「……捕まった?」
美咲が呟く。
ニュースキャスターが続ける。
《警察は、特殊詐欺グループとの関連も含めて――》
俺は画面を見つめる。
でも。
父さんの顔は青ざめていた。
「父さん?」
「……違う」
「何が?」
「これは……」
父さんが立ち上がる。
「組織がわざと捕まったんだ」
俺は意味が分からなかった。
「わざと?」
「そうだ」
父さんがテレビを見つめる。
「捕まることで、警察に情報を流す」
「組織が?」
「違う」
父さんが俺を見る。
「警察の中にいる人間へ」
背筋が凍る。
「じゃあ、この事件は……」
「全部、予定通りなんだ」
その瞬間。
父さんのスマホが鳴った。
父さんが画面を見る。
「……R」
俺は思わず近づいた。
父さんは電話に出ない。
「出てよ」
「ダメだ」
「なんで?」
「Rからの電話は、出てはいけない」
「でも、兄なんだろ?」
父さんの顔が歪む。
「だからだ」
俺は言葉を失った。
父さんはスマホの電源を切る。
「Rは、お前を守るために近づいたんじゃない」
「じゃあ何のために?」
父さんが俺を見る。
「お前を――」
その瞬間。
病室のドアが開いた。
看護師だった。
「神谷さん」
「今、少しいいですか?」
父さんが振り返る。
「何か?」
「お母様のことで」
看護師が病室に入ってくる。
そして。
俺の横を通り過ぎる瞬間。
小さな声で言った。
「204号室」
俺は振り返った。
「……え?」
でも。
看護師はもう何も言わない。
父さんの顔を見る。
明らかに動揺している。
「父さん」
「204号室って何?」
「……」
「知ってるんだろ?」
父さんは答えない。
俺は声を荒げた。
「教えてくれよ!」
「俺は何なんだよ!」
「なんで俺が狙われてるんだ!」
「Rは誰なんだ!」
父さんが黙っている。
俺はもう一度叫んだ。
「答えてよ!」
すると。
母さんが突然、目を開けた。
「……悠真」
俺たちは振り返る。
母さんが俺を見る。
「204号室には……」
かすかな声。
「行っちゃ……ダメ」
俺は固まった。
母さんの目から涙が流れる。
「そこには……」
「あなたのお兄ちゃんが……」
その瞬間。
病室の照明が消えた。
真っ暗になる。
そして。
俺のスマホが鳴った。
画面を見る。
Rからだった。
メッセージが一件。
**『204号室で待ってる』**
俺は画面を見つめた。
その下に。
もう一行。
**『父さんには、絶対に言わないで』**
(第四十五話へ続く)
#闇バイト
るしゅ
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油味噌
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翠
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コメント
1件
うわ、第44話…めっちゃ重い展開きたね。 「Rが兄」って認めた直後に、母さんが「行っちゃダメ」って言い出すし、照明落ちてRからのメッセージで締めるとか、構成が巧すぎるわ。 るしゅさんの「間」の取り方、毎回エグいほど刺さる。次の話、待ってるからな🔥