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#闇バイト
るしゅ
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油味噌
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翠
36
病院を出た。
父さんは何も言わなかった。
母さんも。
俺たちの間には、言葉にできない何かが残っていた。
「204号室」
俺はスマホを見る。
Rから届いたメッセージ。
『204号室で待ってる』
その下には。
『父さんには、絶対に言わないで』
「悠真」
美咲が隣を歩く。
「本当に行くの?」
「行く」
「でも、お母さんは行くなって言った」
「だからこそ行く」
俺は立ち止まった。
「母さんも父さんも、何かを隠してる」
「俺のことを知ってる」
「俺が知らない俺の過去を」
美咲は黙っている。
「俺はもう、誰かに答えを教えてもらうのを待つのは嫌なんだ」
俺はスマホを握る。
「自分で確かめる」
美咲は少し考えて。
「……分かった」
そう言った。
「私も行く」
蒼葉システム。
現在は使われていない古いビル。
建物の入口には立入禁止の札がある。
俺たちは裏口から中へ入った。
埃っぽい空気。
誰もいない。
「204号室って二階?」
美咲が聞く。
「たぶん」
俺たちは階段を上る。
一階。
二階。
廊下を進む。
部屋番号を確認する。
201。
202。
203。
そして。
204。
俺は立ち止まった。
扉には鍵がかかっている。
俺はRから渡された鍵を取り出した。
鍵穴に差し込む。
カチャ。
鍵が開いた。
扉を開ける。
中は真っ暗だった。
「……誰もいない?」
美咲が小声で言う。
俺はスマホのライトをつける。
部屋の中には机が一つ。
椅子が二つ。
古い棚。
そして。
壁一面に貼られた写真。
俺は息を止めた。
「……何だよ、これ」
写真。
写真。
写真。
そのほとんどが。
俺だった。
幼い頃の俺。
小学生の俺。
中学生の俺。
高校生の俺。
学校の帰り道。
公園。
家の近く。
全部。
誰かがずっと。
俺を見ていた。
「悠真……」
美咲の声が震える。
「これ……いつから?」
俺は写真を一枚手に取る。
裏を見る。
日付。
2009年。
俺が生まれた年。
「……嘘だろ」
俺の写真の隣。
そこには。
一人の赤ん坊の写真。
名前が書いてある。
**神谷悠真**
その下に。
別の名前。
**神谷蓮**
「……蓮?」
美咲が呟く。
「誰?」
俺は答えられない。
その時。
部屋の奥から物音がした。
ガタン。
俺と美咲が振り返る。
「誰かいる?」
返事はない。
俺はゆっくり奥へ進む。
棚の裏。
そこに小さな扉があった。
開ける。
中に古い箱が入っている。
箱の蓋には。
**神谷家**
と書かれていた。
「これ……」
俺は箱を開ける。
中には大量の書類。
そして。
一枚の写真。
若い父さん。
その隣に。
見知らぬ女性。
女性は赤ん坊を抱いている。
俺は写真を見つめる。
「この人……」
美咲が言う。
「私の母親」
俺は顔を上げる。
「……え?」
写真の裏を見る。
そこには。
日付。
2009年。
そして。
一行。
**『二人の子供を守るために』**
俺の手が震える。
「二人……」
俺は写真を見る。
赤ん坊。
俺。
そして。
もう一人。
神谷蓮。
俺には兄がいる。
それは分かった。
でも。
写真の女性。
美咲の母親。
父さん。
そして。
R。
全部がつながっている。
「待って」
美咲が何かに気づく。
「この写真……」
彼女が写真の端を指差す。
そこに。
小さく写っている男。
顔は見えない。
でも。
胸元に。
赤い「R」の文字。
「……R」
俺は息をのむ。
その瞬間。
部屋のスピーカーから音が流れた。
『来たんだね』
俺たちは振り返る。
「R?」
『正確には違う』
「何?」
『僕はRじゃない』
俺は固まった。
「じゃあ、お前は誰なんだ!」
スピーカーから声がする。
『Rは、僕一人じゃない』
「……え?」
『Rは名前じゃない』
『役割だ』
部屋の照明がつく。
壁の中央。
大きなモニターに文字が表示される。
**R = RECRUITER**
俺は画面を見つめる。
『僕は、君たちを救うためにRになった』
『でも――』
映像が切り替わる。
そこには。
若い頃の父さん。
そして。
その隣にいる。
神谷蓮。
『僕の前にも』
『Rは存在した』
俺は息を止めた。
『そして』
『君のお父さんも』
映像の中の父さんが振り返る。
胸元に。
赤い「R」。
「……父さんが?」
『そう』
『君のお父さんは』
『かつて、君たちを守る側だった』
画面が暗くなる。
最後に。
一枚の写真が表示される。
幼い俺。
その隣に。
幼い蓮。
そして。
二人を見つめる。
父さん。
その写真の下には。
こう書かれていた。
**『最初のR』**
俺は動けなかった。
Rは一人じゃない。
兄も。
父さんも。
そして。
もしかすると。
俺自身も。
いつか。
Rになる運命だったのかもしれない。
その時。
スピーカーから最後の言葉が聞こえた。
『悠真』
『君が闇バイトに応募した日』
『あの日から、すべてが始まったんじゃない』
『君が生まれた日から』
『もう始まっていたんだ』
(第四十六話へ続く)
コメント
1件
うわ、44話からの続き、一気に読んじゃいました……。この「空白の部屋」、完全に核心に迫る展開ですね。 まず、壁一面の写真の描写が静かに怖くて。悠真の人生をずっと誰かが見ていたっていう事実が、じわじわと心に刺さります。そして「Rは一人じゃない」「Rは役割だ」っていう明かし方 — るしゅさん、伏線の回収の仕方が美しすぎます。父さんが「最初のR」だったって衝撃でした。 最後の「君が生まれた日から、もう始まっていた」っていう言葉、重すぎる……。この世界観、すごく緻密に組み立てられてますね。続きが待ちきれないです!