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「いえいえ! コロナリータさんのおかげで涼むことができています!」
ダイキリが完璧な愛想笑いで応じた。
……普段なら胡散臭いと思うかもしれないが、今は心強い味方に見えた。
「本当ですか? 嬉しいなぁ! それで、今日は何を知りたいんです? 私に答えられることなら何でも!」
テーブルに置かれた安っぽいティーカップから漂う紅茶の香りが鼻をつく。
しかし私の意識は、アルベルトのポケットの中にある紙切れの内容に囚われていた。
001から010までの数字。
そこに並ぶ名前。
意味不明なフレーズ。
それら全てが、今まで感じていた漠然とした不安感を具体的な恐怖へと変えていくようだった。
「そうね……この前、知らない男になにかをされたって言ってたけど、その男の特徴については覚えていないかしら?」
私は気持ちを切り替え、本題に入ろうと努めて冷静な声を作る。
紙切れの謎解きも重要だが、まずは今すべきことを優先しなければならない。
「特徴……ですか」
コロナリータは首をかしげて考え込んだ。
アルベルトが隣で小さく息を飲むのが分かった。
あの紙切れの情報を彼も見ている。
おそらく私と同じように困惑しているはずだ。
「うーん……正直、あんまりよく覚えてなくて…怖くて必死だったから……でも」
「でも?」
「なんだか……こう、独特の匂いがした気がします。甘くて、少しだけ刺激的な……煙草みたいな……」
煙草。
その言葉に、ダイキリと同時に目配せした。
私たちの「父」はヘビースモーカーだった。
「なるほど……ちなみにそのとき、3人組の男だったのよね?他の男の特徴は覚えてる?」
私の質問に、コロナリータは少し考え込んでから答えた。
「他には……えぇと…髪の長い人がいました。白衣みたいに白い服を着てて、博士?みたいな人です、その人が私の父と母を殺したのをこの目で、目の前で見ましたから」
予想外の証言に、私は思わず息を飲む。隣でアルベルトがピクリと僅かに反応した。
「もう1人は分かりません…」
「……」
重苦しい沈黙が室内に満ちる。
その沈黙を破ったのは、コロナリータのどこか寂しげな声だった。
「でも、一番印象に残ってるのは、タバコの匂いがした男が言ったことなんです」
彼女は俯き加減になりながら続けた。
「その人は…私に向かって笑いながら言ったんです。『お前の人生はこれから劇的に変わる』って……」
その言葉が何を意味するのか。そしてあの紙切れとの関連は?
疑問は尽きないが、一つだけ確信できたことがある。
私たちが追っている「真実」は、想像以上に歪んでいて、底なし沼のように深く入り組んでいるということだった。