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「さあ! いよいよ二回戦の開幕です! 皆さま! どうぞお楽しみください!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
観客たちは、先ほどの試合が終わった時から興奮仕切っていたため、この時をとても楽しみにしていた。そんな歓声を浴びながら、四人は闘技場の中心部へと向かった。
ナオトとブラストは残りの二人のことが気になっていた。
一人は黒い鎧《よろい》を纏《まと》った正義の味方っぽい黒髪と黒目の若者。
もう一人は白い鎧《よろい》を纏《まと》った悪役っぽい逆立った赤髪と金色の瞳《ひとみ》が特徴的な若者。
二人はそれぞれ『血液が流れているかのような模様が施《ほどこ》されている黒い剣』と『白い|大槌《ハンマー》』を所持していた。
この二人が何者なのかを知りたかったナオトは後ろ歩きをしながら、二人に話しかけた。
「なぁ、兄ちゃんたち、名前を教えてくれないか?」
「別に名乗るほどの者ではないよ」
「まあ、そう言うなよ、ブレイズ。これから四人で戦うんだから、自己紹介くらいしとこうぜ?」
「ブレイク様……。しかし、身分が分からない者たちに名乗るわけには……」
「はぁ……お前のそういうところがなければ、完璧なのにな……まあ、いいか。それで? そう言うお前は何者なんだ?」
「ん? 俺か? 俺は『本田《ほんだ》 直人《なおと》』。旅人さ。んで、こっちのでかいのが」
「ブラスト・アークランド。同じく旅人だ。よろしく頼む」
ブラストは二人の方をちらりと見ながら、そう言った。すると、赤髪の兄ちゃんが。
「そっか、そっか。んじゃあ、今度は俺たちの番だな。俺は『ブレイク・デストロイ』。通りすがりの冒険者だ。ほら、ブレイズ。次はお前の番だぞ?」
「……はぁ……分かりました。ブレイク様のご命令には従いましょう。コホン、私の名前は『ブレイズ・デスフレイム』。ブレイク様をお守りする騎士《きし》だ。よろしく頼む」
「……ブレイク・デストロイにブレイズ・デスフレイムか。なんか名前が似てるな。まあ、いいや。そんじゃあ、みんなで頑張ろうな!」
ナオトがニシッ! と笑うと、ブラストが。
「ナオト、今回はお前を戦わせるわけにはいかない。だから、今回は俺にやらせてくれ」
ブラストの言葉を聞いたナオトの表情は一瞬で真顔になり正面を向いて歩き始めた。
「……ブラスト。悪いが、それはダメだ」
「お前は無茶をしすぎている。今度、またあのようなことがあったら、お前の体はさらに化け物じみたものへとなってしまうのかもしれないのだぞ? それを理解した上で言っているのか?」
「……そんなの俺が一番よく分かってるよ。でもな、俺が戦わなかったせいで他の誰かが傷つくのを俺は見たくないんだ。だから……」
「ダメだ」
「ブラスト、頼むから戦わせてくれ」
「ダメだ」
「……ブラスト」
「一人で戦うのは、ダメだ」
「……え?」
「お前ばかりが戦う必要はない。微力ではあるが、俺はお前と共に戦うぞ」
「……そっか。それじゃあ、よろしく頼むぞ」
「ああ、了解した」
「話はまとまったみたいだな」
「ん? 今の聞いてたのか? ブレイク」
「貴様! ブレイク様を愚弄《ぐろう》するつもりか! ちゃんと『様』をつけろ!」
「いいんだよ、ブレイズ。俺たちがここに立っていられるのは、この二人のおかげなんだから」
「私は納得できません!」
「そうか。けど、今度こいつらにそんなことを言ったら、さすがの俺も怒るぞ?」
「わ、分かりました。以後、気をつけます」
俺たちは闘技場の中心部に着くと、大きな白い布で隠されているものを見つけた。
それは実況の『トワイライト・アクセル』さんの風魔法で吹き飛んだ。
大きな白い布の中に隠されていたのは……。
「な、なんだよ……これ」
俺を含めて、そこにいる全員が一瞬、目を疑った。オレンジ色の長髪が特徴的な幼女(白いワンピースを着ている)が鎖で四肢(しし)を縛られた状態で十字架に磔《はりつけ》られていたのだから。(これが【アレ】の正体。彼女は目を閉じている)
「それでは……『ケンカ戦国チャンピオンシップ』二回戦! スタートです!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
観客たちの歓声はさらに大きくなり、実況の『トワイライト・アクセル』さんのテンションもそれに便乗するかのように上がっていた。
すると、目の前の幼女は目を覚ますなり、ピンク色の瞳《ひとみ》からピンク色の光線を放った。
俺たちはとっさに回避したため、当たらなかった。(この闘技場の内側は結界で守られている)
「今のはやばいな……」
ナオト。
「ああ、直撃していたら、確実に死んでいた……」
ブラスト。
「おー、あっぶねえ……」
ブレイク(赤髪の冒険者)。
「今のはいったい……」
ブレイズ(黒髪の剣士)。
四人が口々にそんなことを言っている間に、その幼女は鎖と十字架を破壊した。
「ニンゲンハ……コロス!!」
彼女はそう言うと、背中から四枚の翼を生やすと同時に尾骨《びこつ》から先端が尖《とが》った『シッポ』を出した。
彼女は四枚の翼を羽ばたかせて、宙に浮くと『シッポ』の先端をドリルに変形させた。
「ワタシハ、天使型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 四の『ハル』。ナガキネムリカラ、メザメシモノダ。ワタシハ、ニンゲンヲコロスタメニ、ウミダサレタ。コレヨリ、オマエタチヲ、マッサツスル。カクゴシロ!!」
「天使型」
ナオト。
「モンスター」
ブラスト。
「チルドレン」
ブレイク。
「だと!」
ブレイズ。
彼女がそう言った直後、会場は静まり返った。
モンスターチルドレンを相手にするということは先ほどの合体して一つになった『五帝龍』と同等……もしくはそれ以上の相手と戦うということになるからだ。
「ブラスト、俺が前に出るから援護を頼む」
「それは構わないが、まさか死ぬつもりではないだろうな?」
「しつこいなー、俺はまだ死ぬわけにはいかないって、さっきも言っただろ?」
「そう、だったな。よし、ならばそうしよう」
「お前、そんな小さな体で、しかも、さっきの試合の疲れも残っている状態で戦うつもりなのか?」
「ああ、そうだよ、ブレイク。俺がやらなくちゃ、あいつを倒せない」
「貴様! それはあまりにも無謀なことだと分かっているのか!」
「ブレイズ、俺は死ぬ気なんてこれっぽっちもねえよ。けどな、こういう時は少しでも可能性が高い方を選ぶしかないんだよ」
「そうか。それはたしかにそうかもしれないな」
「ああ、だから、できる範囲で援護してくれ」
「分かった。しかし、私の『魔剣デュランダル』でどこまでやれるか」
「ブレイズのその剣って魔剣だったんだな。でも、無傷のモンスターチルドレンを魔剣で倒すのは多分、無理だ」
「そうか……なら、お前に任せる」
「分かった。それじゃあ、援護よろしくな」
『了解した』
三人が同時にそう言った直後、ナオトは彼女がいる方に向かって、ゆっくりと歩き始めた……。